働きます
「・・・チッ」
静かな部屋に舌打ちの音が響く。
(クソ、やっぱり消費が激しかったか・・・これじゃあ治療ができない)
昨夜の戦闘でクリアエネルギーを二度も使用したため、治療するには足りなくなってしまった。
(完全に治療するには・・・あと二日くらいかかるな。なにも起きなければいいが)
清彦がそこまで考えたとき、部屋のドアがノックされた。
「ごはんだよー、起きてー!」
「あ、はーい!」
返事をして、さっさと着替える。
着替えなんて持ってきてなかったが、この家の人が貸してくれたのだ。
ホントにいい人たちである。
「おはようございます。昨日は眠れましたか?」
「はい、おかげさまで」
実際は戦闘と解体でまったく眠れていないのだが、そんなことはおくびにもださない。
寝不足にはなれているのだ。
「そういえば名前をきいていなかったのですが」
ルル同様、清彦はこの家の人の名前を知らない。しばらく一緒に暮らすのだから知らないと不便だ。
「自己紹介がまだでしたね。私はララといいます。この子はリルです」
「ララさんにリルさんですね」
忘れないように清彦はそれぞれの名前を反芻する。
「それともう一人・・・あ、起きてきました」
確かに足音が聞こえた。
「・・・おはよう」
ルルがリビングにやってきた。
「この子がルルです。って目にくまができてるよ。昨日ちゃんと寝てないの?」
「・・・大丈夫」
若干フラフラしながら俺の隣の席に座った。
「それじゃあ食べましょうか」
かくして食事が始まった。
「いただきます」
小さな声で清彦が手をあわせながら言った。
「なにそれ?」
すぐさまルルが訊いてくる。
「ああ、なんでもない」
いただきますを言う文化は無いのか・・・清彦はそう思った。
「・・・昨日のこと、話した?」
ルルがララとりルに聞こえないよう、小さな声で清彦に訊いてくる。
「話してない」
清彦も小さな声で応じる。
「話さないで」
「分かってる」
別にやましいことなど何もなかったが、わざわざ話すことでもないだろう。
そう考えていた清彦に、もとから話すつもりはなかった。
「お馬さんにもごはんあげてくるー!お姉ちゃんもきてー!」
リルが元気よくとびだしていく。
「・・・いってきます」
ルルがそのあとに続いた。
「いってらっしゃい」
ララは食器を洗う手を休めることなく返事を返した。
「あの」
「はい?」
「俺、手伝いますよ」
清彦の申し出に、ララは驚いたように目を見開く。
「居候ですし、手伝えることならやりますよ」
ただ家に居座るのは気が引ける。それが清彦の考えだった。
「・・・それじゃあ、お願いします。ルルとリルの手伝いをしてあげてください」
「はい。じゃあいってきますね」
清彦もルルのあとに続いて外へ走り出していった。