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取り巻く環境

 清彦に名前を呼ばれたルルは、満足そうに小さな笑みを浮かべたあと、

「ありがとう。でも、やらなきゃいけないことがあるから・・・」

 と言って外へ行ってしまう。

「やらなきゃいけないこと?」

 一体なんだろう。そう思った清彦はルルのあとをついていくことにした。

 ルルは迷うことなく破壊された小屋まで歩いていき、清彦はその後ろをついていく。

 小屋は今度修理しよう。清彦はそう心に決めた。

 ルルは小屋の残骸から何かを探すように瓦礫をどけ始めた。

「あ、いいよ俺がやるよ。何を探してるの?」

 小屋の破壊に責任を感じていた清彦はルルに言うが、

「怪我にてるんだから休んでいて」

 と、にべもない。

「いや、でも・・・怪我しちゃうよ、こんな瓦礫に素手でさわったら・・・って痛っ」

 一緒に探そうとして瓦礫にてを突っ込んだ清彦は手を切ってしまう。これじゃまるで説得力が無い。

「痛いなぁ・・・ってこれは?」

 瓦礫を退かすと大きな刃物が出てきた。

 なるほど俺の手を切ったのはこれか、なんて思いながらぼんやり刃物を眺めていると、

「それ」

 とルルが言った。

「へ?」

「だからそれ。探していたのは」

 そう言って清彦に手を出してくる。

「ええっとぉ・・・何に使うの?」

 ちょっと不安になった清彦が念のためルルに訊くと、

「あれの解体」

 と、狼たちの亡骸を指差した。

「ウルフの毛皮や牙、骨とかは高値で売れる。家は貧乏だからこれを売らない手はない」

 淡々と語るルルの目には、明らかに何かの炎が燃えているように見えた。

「そ、そう・・・じゃあ俺がやるよ」

 清彦が言うが、

「ダメ。怪我してるから」

 とルルも譲らない。

「でも解体ってしんどいよ?体力使うし」

「大丈夫。解体ならやったことある」

 この家に来るとき牛や馬を飼っているのを見ていたので、仕事柄そういうこともあるのかもしれない。

 慣れているのならと、そう思った清彦は解体をルルに任せることにした。

「分かった。じゃあおやすみ」

「おやすみ」

 そうして家に入ろうとした清彦だったが、ふと後ろを振り返ると狼の亡骸を茫然と眺めるルルが見えた。

「・・・・・・」

 見かねた清彦はルルのもとへ向かう。

「・・・やりかた、分かんない?」

 清彦がルルに訊くと、ほんのわずかにうなずいた。

「・・・魔物の解体はやったことない・・・」

 消え入りそうな声で、申し訳なさそうに言うルルがかわいそうになった清彦は、黙って右手を差し出した。

「・・・それ、貸してみ?」

 無論清彦も魔物の解体はやったことがない。だが、それに似た経験はある。

 ルルから解体用のナイフを受け取った清彦は、ただ黙々と解体作業をするのだった・・・。

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