戦闘中・・・
「おおおっ!!」
「ぎゃん!!」
清彦は小屋を破壊しつつとびだして、一番近くにいてぼんやりしていた狼の頭をかち割った。
不意打ちをくらった狼の頭がひしゃげ、血が噴き出した。
「まだまだぁ!」
ブウン!と槍を振るい右にいた狼を殴ろうとするが、
「ガルルッ!」
「っ!」
狼の動きは清彦が想像していたよりもずっと速く、振るった槍をあっさりと避けてしまう。
清彦は空振りした槍に上半身がもっていかれ、制御できない。
「くああっ!」
清彦の左腕に狼が噛み付き、清彦が倒れなかったためそのままぶら下がる。
「っ!」
このまま引っ張られて、倒されたら終わりだ。
そう思った清彦は次の手を打った。
(あんまりやりたくないんだけど・・・!)
【使用意志を確認━━━変換システム発動】
【システム対象を確認━━━完了】
【変換可能範囲を表示━━━選択完了】
【システム異常━━━無し】
【クリアエネルギーの放出・変換━━━完了】
瞬間、清彦が持っていた槍の先端が分離し短剣になる。
その短剣を躊躇せず噛みついた狼の喉へ突き刺した。
「ギ・・・!?」
狼は断末魔の叫びを上げることなく絶命した。
「・・・くぅん・・・」
最後の一匹は、清彦の気迫に怯えたのか逃げだした。
まぁ、二匹が犠牲になっているのだから賢明な判断だと言えるだろう。
「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ」
清彦は腕に噛みつきっぱなしの狼を腕から引き剥がした。
「くそ・・・いてぇな・・・」
生身で戦闘をするのは久しぶりで、それだからかなり大きな傷を負ってしまった。
「どーしよ・・・いろいろ・・・」
清彦の目の前には二匹の狼の死体とたくさんの血痕があり、これはちょっと小さい子どもには刺激が強すぎるかななんて思ってしまう。
「後始末する体力ねーよくそ・・・」
その時の清彦は、身体中ボロボロで周りの警戒ができず、立っているのが限界だった。
だから、背後から接近してくる存在に気がつかなかった。
「・・・ねぇ」
「うお!?」
反射で飛び抜こうとするが、体がついてこなくて転んでしまう。
そんな無様な清彦を、白髪の少女は感情の読めない瞳で見下ろしていた・・・。