迷子の英雄
「・・・どこって?」
清彦の質問に、ルルは不思議そうに聞き返した。
「具体的には、ここがなんて大陸で、どんな国の領土にある村なのか・・・かな」
つらつらと述べる清彦に、ルルはさらに困惑していく。
「いや、だいぶおかしな質問をしてるのは自分でも分かってる。でも教えてほしい。俺は今自分がどこにいるのか本気で分からないんだ」
ふざけているとは思えない清彦の真剣さに、ルルは頷いた。
「ここはレメール大陸にある、ブレイブ王国の田舎の村。名前はディエン。ディエン村」
いつも通りの声でルルが説明するが、彼女が挙げた地名はどれも清彦の記憶にも、彼に保存されているデータベースにも存在しなかった。
「・・・ええと」
ルルは清彦をからかっていない。それは確実だ。じゃあこれは一体どういうことなのか。
「そういう清彦はどこからきたの?」
「え・・・」
少し考えたあと、清彦は正直に言った。
「日本って国なんだけど・・・」
沈黙。
「日本?」
「うん・・・」
気まずい空気。互いに顔を曇らせ、何て言えばいいのか必死に模索している。
やがて、ルルはパンと手をうった。
「え、どした?」
清彦がいままでに見たことがないほどの晴れやかな表情。全てに納得がいき、理解したようなそんな表情。
ルルは自信満々に言った。
「記憶喪」
「違う」
ルルの答えを予想していたのか、清彦は食い気味でバッサリ切った。その瞬間ルルはとても小さな声で「へぇっ」と言っていたが、清彦は気づかない。
ここには日本という国は認知されていない。だから絶対にここは日本ではない。
では何故、日本語が通じる?
「うーん・・・」
ずっと躊躇っていたが、奥の手を使おう。清彦はそう決意した。
「うん、ありがとう。ちょっと考えてみる・・・ってルル?」
「えっあっはい」
我に返ったルルはぎこちない動きで食器を片付け、ベッドに背を向けた。
「・・・あのさ」
部屋を出ていこうとするルルを呼び止め、一言。
「ごめんねびっくりした?」
返事は無かった。
「・・・さて」
ちょっとカッコつかないが、言っている場合ではない。
あまりクリアエネルギーを消費したくなかったが、現在地がわからないのは辛い。清彦は早速取りかかった。
【使用意思を確認————選択完了】
【通信を開始————エラー】
「は?」
一瞬固まったあと、清彦は再び現在地を調べる。
【使用意思を確認————選択完了】
【通信を開始————エラー】
「ええ・・・」
清彦が今やろうとしているのは、GPSを用いた現在地の特定だ。クリアエネルギーにより擬似的にレシーバーを造り、不正に情報を受けとるというもの。
バレたらヤバイ代物だが、精度はなかなかいい。最も逆探知を恐れた清彦は、まったく使わなかった。
それがエラーを起こしている。確認したが、こちらの機能にはなんら問題は無く、通信はいっこうに繋がらない。電波が来ない。通信環境が悪い。
「・・・・・・てかここ・・・」
【エラー————ネットワークエラー】
通信技術が発達した現代において、環境が原因による通信エラー。記憶にない地名。認知されていない母国。しかし通じる日本語。
「・・・もしかしてあの世とか?」
最終決戦を終えたヒーローは、力尽き二度と起き上がることはなかった・・・。
そんなことが。
「・・・・・・」
あるわけねー、と笑うことが清彦にはできなかった。
「・・・寝よ・・・」
なんだかよくわからなくなってきた清彦は、ひとまず寝ることにした。これが現実逃避ではないことを祈りたい。
GPSについて。
たぶんですが清彦がやっているようなことは普通できないと思われます。スミマセン。




