おつかい
「・・・というわけなんですけど」
夕飯にて、ルルはララに事情を説明し、ウルフやオークから剥ぎ取った皮など・・・ここでは素材というらしい・・・の売却許可を得ようとしていた。
「・・・小屋が壊れていたのは、そういうことだったんですね」
「すみません」
いくら戦闘中で仕方なかったといえど、壊してしまったのだから清彦は小屋を弁償することに決めていた。
しかしお金なんて持っているはずもなく、それができなかったのだが、今回のことでお金が手に入った。
それで弁償すると言ったら全力で断られたが、こちらも全力で押し通し・・・最終的には生活費も込みで入手した金額を支払うで落ち着いた。
(ちょっと納得できないが・・・まぁいいか)
余談はさておき・・・ララはしばらく黙考したあと、大きく頷いた。
「分かりました」
「やった」
柄にもなく喜ぶルルを見て、意外と子供なんだなと清彦は思った。
「ですが・・・清彦さんの傷が治ってからです」
「はーい・・・」
「え?」
何かがおかしい。
「いや、俺の怪我は気にしないでください」
清彦の発言に、ララは不思議そうな顔をする。
「清彦さん・・・いくらなんでもその足では長旅に耐えられませんよ?」
「え?」
長旅・・・?
「俺も行くんですか?」
聞き返す清彦に何を言うんだという顔をするララ。
「そうですよ」
「え?」
それじゃあ次に魔物が襲ってきたとき、誰が戦うのだろう。
「家畜の世話がありますから、私とリルは残ります」
「えー、お姉ちゃんばっかりずるい!」
ここでいままでずっと黙ったままだったリルが大きな声を出した。
「お母さん・・・?」
これは予想外だったのか、ルルが嬉しそうな顔のまま驚く。
(器用だな)
思わず感心する清彦。
「リルは馬に乗れないし、それだと面倒みる人が必要だから・・・って、清彦さん、馬乗れますか?」
「え、ええまぁ一応」
一度なりゆきで乗った事がある。あの時は散々だったが。
一瞬感慨に耽りそうになった自分を慌てて引き戻し、ララの話に集中する。
「と言うわけで・・・全ては清彦さん次第ですね」
これで話はまとまった。
「にしてもこんな事になるとは・・・」
年頃の男女が二人っきりで旅をする・・・。
そこに母親として何か感じるところはないのか。
「ま、いいや」
清彦はクリアエネルギーの残量を確認した。
「あんまし回復してないな・・・」
あの後はちゃんと安静にしていたのだが・・・。
(ひょっとしてどこか故障しているのか?だとしたら修理しなくちゃならないが・・・)
修理にもクリアエネルギーを消費するし、そもそもどこが故障しているのか調べるのにもクリアエネルギーが必要になる。
(あー、なんかさっさと回復できる手段はないかなー)
それはいままでも調べてきた。しかしいっぺんにMAXになるうまい話があるはずもなく・・・。
分かったのは睡眠と食事バランスがいいと回復が若干早くなるってことくらい。
(じゃ、寝ようかな・・・)
そう思ったとき、ドアが静かにノックされた。
「はい?」
「・・・ルルだけど」
それを聞いて清彦は凍り付いた。
こんな夜中に?女の子が?部屋にくるって?
『母親として何か感じるところはないのか』
先程の考えが頭をよぎる。
「・・・起きてる?」
狸寝入りをしてやろうかとも思ったが、ルルの声がさっきよりも低くなっていることに気が付き、真面目な話をしにきたんだと思うことにした。
「待ってて」
ドアを開けると、そこにはパジャマ姿のルルが立っていた。
「・・・ええと、何か?」
ここで話そうと思った清彦だったが、
「部屋に入れて」
とルルが頼んできたため話は部屋ですることにした。
(大丈夫、だよな?)
内心心配しながら、清彦はルルの話を聞くのだった・・・。