似た者同士・・・
「・・・・・・」
謝らなければ、清彦はそう強く思った。
ルルを、勘違いしていた。
だから・・・。
「行ってあげて下さい」
「!?」
ララは清彦をじっと見ていた。
「・・・はい」
清彦は走り出した。
バタンとドアを閉めて、ベッドに倒れこむ。
「・・・ぅう・・・」
ルルは喉から漏れる嗚咽を必死にこらえる。
なぜ自分がこんなに感情的になっているのか・・・自分でも分からなかった。
「・・・・・・・・・」
どうすればこの感情を抑えられるか、ベッドに伏せたままぼんやり考える。
そんなルルを現実に引き戻したのは、小さなノックだった。
始めは母親が呼びに来たと思ったルルだったが、ノックのあとに聞こえた声に身を硬くする。
「・・・ルル」
ベッドから出ずに、這いずるようにドアの方へ移動する。
「・・・なに」
なるべく声に感情がこもらないように喋る。
「ごめん」
ドアの向こうから、静かに声がする。
「・・・俺、ルルのこと誤解してた。いや、ルルだけじゃない。この家の人たちみんな・・・いい人たちだ」
「・・・・・・」
「俺を、俺みたいな変な奴を受け入れてくれてありがとう」
違うよ。
「俺、ここじゃない遠い場所から来たんだ」
「・・・?」
急に、なに?
「そこで俺、戦ってたんだ」
戦いをしてたのは知ってる。あの戦いぶりを見れば分かる。
「基本一人だった。俺を受け入れてくれる人はあんまりいなかったし、それでいいと思ってた」
「・・・・・・・・・」
それも分かってた。だって初めて来たときも一人だった。
雰囲気も、誰も寄せ付けないとでも言うように、どこかピリピリしていた。
「でも、いままででも受け入れてくれる人がいた」
・・・そうか。
よかった。私みたいに、一人ぼっちじゃ・・・。
「巻き込みたく、ないんだ」
・・・え?
「俺に関わりすぎると・・・いや、ちょっと喋るだけでも・・・」
・・・なんの話を・・・。
「初めて会ったのが、この家の人でよかった」
「・・・待って」
「もう戦いは終わったけど、俺がここにいる時点でなにか始まってるってことだから。だから・・・」
しかし、清彦の言葉は続かない。
続かせる訳にはいかなかった。
「・・・・・・っ!」
右手をあげて、力を籠める。
それだけでドアが開く。
「!?」
開いたドアの向こう。
そこには目を見開いた清彦が、壁に張り付いていた。
慌てて跳びのいたのか・・・その姿はかなり・・・なんというか・・・こういったら悪いかもしれないが、面白くて、吹き出しそうになるのをこらえる。
「・・・変なのは、清彦だけじゃないよ。私だって・・・ううん、私の方がおかしいもん」
ルルは自分の手を見た。
恐らく・・・魔力と呼ばれるものを放った右手を。
「私は・・・こう言うとお母さんは怒るけど・・・こんな変な色をした髪の毛と目をしてるから、誰も私を人と見てくれなかった。そんなんだから、お母さんにも、リルにも迷惑かけて」
「・・・・・・・・・」
誰も人と見てくれなかった。最初は否定していた。
でもこんな・・・魔力を直接放つなんて、そんな化け物じみたことができたから・・・認めることにした。
自分ば人でないことを。
最初は辛かったが、慣れると辛くなくなった。
それどころか、少し楽になって。
「・・・でも、清彦は・・・私を人みたいに扱ってくれた」
だから・・・
「一緒にいて」
出て行かないで。
私を、一人にしないで・・・。
「・・・・・・ルルは、人だよ」
「っ!」
その言葉は、心に重くのしかかった。
なぜだろう。人ではないと言われるのはなれたのに。
その、逆は・・・。
「誰がなんと言おうと、お母さんと・・・お父さんもいて」
「・・・・・・」
ルルは、清彦から目が離せなかった。
「味方が、いるじゃないか。ルルを励ましてくれる人が・・・家族が」
途切れ途切れに聞こえる清彦の声は、その一つ一つが重く響く。
「だから・・・人だ」
「・・・清彦・・・」
それじゃあ、清彦はどうなのか。
その言い方では・・・清彦は。
「・・・・・・俺は」
そこで。
清彦は言葉をきった。
「・・・?」
そして、
「まずい・・・」
そう言って、走り出す。
「待って!」
話を・・・。
清彦の話を聞かせて・・・。
ルルはその一心で清彦を追いかけた。
早く変身させたいので、話を早めます。ご了承ください。
さて、清彦の過去ですが・・・作品紹介にかいてあるとおりです。
戦いを終えたヒーローに、安息はくるのか?
次回をお楽しみに!