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友達のように

 目覚めの気分は、最悪だった。

「・・・うぇっ」

 強い吐き気をこらえ、窓から外を見る。

 いつもと変わらない朝だった。

「・・・一日の時間は、一緒なんだな・・・」

 昇る太陽を見ながら、清彦はそう呟いた。

「・・・ぅぅ」

 この気持ちの悪さは、ただの寝不足ではないことくらいすぐに分かった。

「・・・俺は・・・何のために」

 今までは、ただ悪の組織と戦っていた。

 それしかやれることがなかったし、それが自分のやらなければならないことだった。

 しかし悪の組織が倒された今、まったく知らないこの場で、俺はなんのために生きればいいのか・・・。

「・・・ぅう・・・」

 こうなることは、薄々予想できていた。

 悪の組織を倒したら、そのあとどうするのか、考えたことはあった。

 あのときは、普通の人間のように暮らせばいいと思っていた。

 いや、思おうとしていた。

 そうやって逃げて、戦いに無理矢理集中した。

 そうしなければ・・・戦えなかった。

 その弱さが、今の事態を招いている。

「・・・・・・・・・」

 いくら強くなっても・・・ヒーローは存在理由がなければ生きていけない。

 だからこそ、考えなければならない。

 自分は、これからどうやって生きるのか・・・。

「・・・・・・!」

 清彦の思考を遮ったのは、控えめなドアのノックだった。

「・・・清彦」

 呼びに来たのは、ルルだった。

 もしかしたら、リルに嫌われてしまったのかもしれない。

「・・・ああ、今行くよ!」

 暗い気持ちを払拭するために、わざと明るい声で返事をして起きる。

 そのときすごいめまいがしたが、気にしない。

 今日は明るくいよう。

 これが、この家にいる最後の日になるかもしれないのだから・・・。






「おはようございます」

 この家の人はみんな早起きなのか、すでに朝食ができていた。

「おはようございます」

「・・・おはよう」

 ララは普通に、リルは怯えがちに返事をした。

「それじゃあ食べましょうか」

 ララの合図で食事が始まった。

「・・・いただきます」

「なにそれ?」

 清彦にルルがすかさず訊く。

「え、ああ・・・」

 いままではルルたちに合わせて言ってなかったが、ついうっかり言ってしまった。

「・・・いや、気にしないでくれ」

 食事をしようとした清彦だったが、ルルに止められる。

「ねぇ、なにそれ?」

「え・・・」

 いつになく強い口調で問われ、不審に思い清彦は顔をルルへ向けた。

「・・・・・・・・・」

 そこには、憤怒の形相で清彦を睨むルルがいた。

「なんなの、それ」

 もう一度ルルが訊いてくる。

「・・・なんだよ、急に。なにを怒ってんだ?」

 なぜルルが怒っているのか、わからない清彦ではなかった。

 結局は、ルルもあっち側の人間なのだ。

 異質の者を嫌い、追い出す側・・・。

 ルルが・・・いや、この家の誰かが自分に出て行けというのなら、喜んで出て行こう。

 そう心に決めて、清彦はルルの次の言葉を待った。

「・・・目」

「え?」

 待っていた言葉が、あまりにも予想外どころか言葉ですらなくて、清彦は戸惑う。

「朝から、一度も目を合わせてくれなかった」

「・・・え?」

 ポカンとする清彦に、顔を真っ赤にしながらルルは叫ぶ。

「ずっと・・・他人みたいに・・・まるで、私なんかいないみたいに・・・」

 限界がきたのかルルは椅子からガタリと立ち上がると、自分の部屋に戻って言ってしまう。

 清彦は、その背中に声をかけることができなかった。

 二桁超えましたが、主人公が変身するのはまだまだ先になりそうです。

 なるべく更新ペースは保ちたいですが、いましばらくお待ちください・・・。

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