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くろくろ異世界+わん  作者: 吉恵理多
1章 森からの脱出
2/13

こんにちは異世界

何処かで鳥の鳴き声がする。

クケーやらギャシャシャシャやら、可愛らしい小鳥の鳴き声とは違うゴツい声。


「ん――……」


パチリと目を開くと一面の緑、緑、緑。

頬にあたる葉をちぎって見れば青臭い香りが鼻をつく。


「Q、あの世ってこんなに鬱蒼とした森なんですか?」

「A、いいえ、多分違います」


起き上がり、辺りを見回す。

広がる緑はまるでジャングルのように繁っており、日が差し込まない場所は薄暗く気味が悪い。

海に落ちたのに気がつけば森の中。

どういうこっちゃ、何が何やらどうなってるの?


「一応私、生きてるのかな」


怪我もないようで手足もしっかり動くし、頬っぺたを思いっきりつねってみたら滅茶苦茶痛かった……うん、夢でもなく現実のようです。

今の状況を整理してはみるものの、結局よくわからなくなる。

あの悪寒がしたときから変だった。

黒い何かに襲われて海に落ちて溺れて……?

むしろなに、あの黒いの。

明らかに私狙ってきたよね、あれ。

お母さんは無事だろうか、あの時落ちたのは私だけだった気がする。

ざっと辺りを見回してみても、此処にいるのは私だけのようだ。


「う〜考えても仕方ないしどうするかな、あ服濡れてないや」


海に落ちる前のままだ、身一つだけで所持品は何もなし。

ここは森の中。

まずいよね、この格好サバイバル向きじゃなさ過ぎる。


「取り敢えずここから離れよう、何か薄気味悪いし」


鬱蒼とした森といえば、獣などの害獣がいないとも限らない。

襲われでもしたら手に負えない。

丸腰では危ないでしょと、傍に落ちていた野球バットサイズの木の棒を見つけ一振り。


ブンッ! ブンッ!

……よし、何とかいける。

今はまだ日が真上にあるが、暗くなったらかなりヤバそうな森だ。

早く抜け出すに限る。

期待はしてないが、人がいれば近くの家まで連れていってもらえるだろう。

そこで電話でも貸してもらえばいいか。


ザクザク、ザクザク、森を進むこと数分。

ピタリと立ち止まり前を凝視する。


「……何あれ」


『ぽよんぽよん』


半透明のつるりとした、触るとぷにぷにしていそうな物体。

某国民的RPGでは最初に戦うあのモンスター。

目と口すらないが形はあれそのもの。

それが今、目の前にいるのだ。


どうみてもスライムです、あ、こっちやって来た。


ぽよんぽよんと跳ねながら来たかと思えば、いきなり素早い動きで顔目掛けてアターック!!

避けられず、ベチン! と大きな音がしたのは言うまでもなく、その後もさんざんベチベチしたら満足したのか、スライムは去っていった。

あれ、これって……もしかしなくても私、負けてる?


乙女らしからぬ鼻血をたらしながら、呆然とスライムの去っていった方向を見る。


「何の為の木の棒やねん!!」


『……』


一人ツッコミは寂しく森に響く。

スライムにすら負ける私最弱じゃない? レベルで言ったら1(イチ)ですらなくレベル-(マイナス)1?

うーわー私弱っ! 一般人ですが弱っ! 非力すぎでしょ!

……と、ここまで考えてはっと気付く。


「ここ、日本じゃないよね」


今更だが、そう考えると納得せざるを得ない。

まさか自分が……とは転移した人皆が思う事。

これは俗に言う『異世界トリップ』ではないだろうか。


「ラノベかぁ――――――――!!!!」


今日二度目のツッコミも誰に聞かれることなく消えていった。

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