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タァちゃんのママは、さげまんかもしれない(第七話)

 タァちゃんが高校に入学にしてから、何か月かたったある日、タァちゃんはパパとママの仲が険悪になっている事に気が付きました。口を聞かなくなり、寝室も別々にしてしまいました。タァちゃんは受験でいっぱいいっぱいだった自分を秘かに責めました。両親の不仲の責任を感じたのです。離婚になることも覚悟しました。進学を望んでいたタァちゃんは、家事のこともあり、そうなったらパパについて行こうと決心していました。ごゆっくりさんのお兄ちゃんは、何と、この事態に全く気が付いていません。

「パパとママが、別々の部屋で寝る様になったから、TVが観れなくて、困るんだよ!」

怒りながら話すお兄ちゃんを見て、タァちゃんは心底あきれました。この時からタァちゃんは、お兄ちゃんの事を嫌うようになりました。

 高校2年生の時、パパは会社から地方の工場への転勤を命じられました。タァちゃんとお兄ちゃんの学校の事もあり、パパは単身赴任することとなりました。パパとママはタイミングよく物理的な距離を置くことが出来たので、離婚には至らずにすみました。ただし、その事がタァちゃんの苦しみを長引かせ、パパの寿命を縮めることにつながったのかも知れませんでした。

 タァちゃんは大学受験に失敗し、一年、浪人生活を送ることになりました。

 予備校に通うことになったタァちゃんは、とにかくこの一年は必死に頑張ろうと心に誓いました。一年後の姿がはっきりとは見えない不安と戦う日々。ただし、浪人生活を許してくれたパパやママに、タァちゃんはいつも感謝していたし、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 そんなある日、予備校から帰宅すると、近所の若いママ友と、その子供たちが遊びに来ていました。姉妹は小学生と幼稚園児。パッと見は姉の方がかわいらしいのですが、行動を見ていると妹の方がこまっしゃくれていて、目立っています。その親子が帰ってから詳しく話を聞くと、お姉ちゃんのオーちゃんは登校拒否の問題を抱えていました。

「オーちゃんの面倒を見なさい」

タァちゃんのママは、そう言ってきました。とはいうものの、タァちゃん自身も受験勉強中です。それどころではなかったのですが、お金のかかる予備校通いを許してもらっている負い目のあったタァちゃんは、なるべくママの要望に応えようと思いました。

 オーちゃんが登校拒否になった理由は、彼女と接していてすぐに明らかになりました。少し年齢の離れた妹の方を、オーちゃんの母親も同居している祖父母も溺愛し、甘やかしていました。大人しい性格のオーちゃんは、何事につけ積極的な妹に押しのけられて、寂しい思いをしていたのでありました。

 第三者のタァちゃんからすると、妹よりもオーちゃんの方が顔立ちはずっと整っているし、女の子らしい子供でした。絵を描く事の好きなタァちゃんは、実はかわいらしい女の子を見るのが好きでした。オーちゃんにいつも妹がくっついてきましたが、タァちゃんは妹よりも、オーちゃんの方を優先して相手をしました。オーちゃんは少しずつ、自信をとり戻して行きました。

 毎日のようにオーちゃんはタァちゃんの家に遊びに来ました。そんなある日の事、オーちゃんの相手をしているタァちゃんを見て、ママはこう言いました。

「本当、よくやるわよねぇ」

半ばあきれた様な口調に、タァちゃんは自分の耳を疑いました。タァちゃん自身だって、受験で苦しい思いをしているのに、ママの要望に応えようと頑張っているのです。タァちゃんの中の何かに、またヒビが入りました。

 次の日曜日、予備校が休みで家で受験勉強していたタァちゃんのところに、オーちゃんが友達をつれてやって来ました。ママは出かけていていません。勉強が忙しいという理由で、タァちゃんはオーちゃんを追い帰しました。オーちゃんは二度と、タァちゃんの家を訪れることはありませんでした。

 タァちゃんは無事に大学生になりました。

 ママは相変わらず、タァちゃんの事をバカにし、パパの悪口を言ってきます。タァちゃんがどんどん知識を得、経験を積み、レベルアップしていくことに、ママは焦りを感じ、何とかして足をひっ張り、自分の理解出来る範囲にタァちゃんを押し込めようとしていたのでした。

 ある時、ママはこう言いました。

「結婚なんてくだらないから、するもんじゃあない」

その言い方が、あまりにも口汚く、聞くに耐えないものだったため、逆にタァちゃんはママをたしなめました。

「そんな事、言うのは変だよ。大体、パパに失礼じゃない?」

ママは口をつぐみました。自分がその立場を享受していることを、少し認識したようでした。

 大学生になったタァちゃんは、こっそり漫画を描き始めました。そして、それを大学の友人たちに見せて楽しんでいました。しばらくしたある日、夜中に漫画の下描きをタァちゃんはしていました。と、突然、部屋の引き戸が開きました。ビックリしてタァちゃんが顔を上げると、そこに目を吊り上げたママが立っていました。無言のまま、じーっとにらみ続けます。ターちゃんは漫画の道具を片付けるしかありませんでした。実はママは、タァちゃんの留守中に、持ち物を勝手にチェックして、タァちゃんの漫画の原稿を見つけたのでした。何とかしてそれを止めさせようと、その機会をうかがっていたのです。ママはタァちゃんが楽しそうにしていると、それを妬ましく思い、不機嫌になり、とにかく邪魔しようとします。その傾向はますます強まっていきました。

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