第四話~ドラゴンギルド
『第四話~ドラゴンギルド』
北町三丁目ギルド。
オレの所属するギルドだが、そこに一仕事を終えたオレらのチームが凱旋すると、同じく別地区でドラゴン退治を終えた面々と合流した。四丁目、二丁目、その他幾つか。
ドラゴンスレイヤーたる椿波雲氏のいないチームであってもドラゴン討伐活動に支障はなく、ついでに被害などもなく、皆無事に生還していた。既に見知った顔ぶればかりだ。
三丁目ギルドは総数二十名ほどで、ギルドとしてはまだ小さく新しいほうだが、前述したような武装が豊富なので実害なく任務をこなすことが出来ている。これは他所のギルドでも同じらしい、そうアヤが言っていた。
我らがドラゴンスレイヤー・椿波雲氏はギルドに到着するや否や姿を消していた。きっと喫煙コーナーにでも行っているのだろう。そこをオヤジ連中が取り巻いているのは想像に容易い
アヤが岩竜のサンプルとデータをギルドの博士に渡し終えると、オレたちは途端に暇になる。
勿論それはいいことなのだが、ドラゴンとギルドで町興しをと画策しているオヤジ連中は、もっとドラゴンフォール現象が起きればいいのに、と相当に不謹慎なことを平気で口にする。
とどめを刺すあのイヤな感覚が蘇り、思わず舌打ちをするオレを、アヤがどうどう、となだめる。
「方城護の言いたいことはさ、まあわからなくはないさ。でもさ、人間、なんだかんだでお金がなきゃやってけないってのは事実なんだし、大人になれ、とまでは云わないけど、やっぱどっかで割りきっとかないと、どっかでしっぺ返し喰らうぜ?」
解ってる……そう返すが実際は解ってなんでいない。
強いていうなら波雲氏の鉄面皮、あれを見習うべきなんだろう、くらいなものだ。非情とは云いすぎだが岩竜相手に微塵の躊躇もなく強烈な弾丸を撃ち込み、そのまま煙草を一服するくらいの度量が、今のギルド構成員には必要なのだろう。
なんてことを考えつつオレは武器であるアサルトライフルの弾装を武器係に渡し、使った分の弾丸を補給して次の出動に備え、ついでに学校からの課題に着手する。
ドラゴンフォール現象でやや日本が混乱していても学業はそのまま継続中なので、ドラゴンを退治する合間に課題をこなさなければならない。まったく、学生というのはあれこれ忙しいもんだ。
それにしても、ドラゴンフォール現象が最初に確認されて五年は経つが、未だにそのメカニズムが解明されていないというのは、学者連中の怠慢ではないだろうか。
都市伝説風に幾つかの原因について語られてはいるが、どれも眉唾ものだ。
ドラゴンという侵略生物説や異世界なるものの存在、果てはドラゴンという乗り物に乗った竜人なる人種など、バリエーションは様々。
正直なところ、どれであってもオレは構わない。
結果として人に害をなす存在ならば退治する、ここが変わらないからだが、竜人なんて説が本当だとしたら、あの嫌な気分は倍増するだろう。ほぼ無抵抗な相手にアサルトライフルをバシバシと撃ち込むのだから当然だが。
自衛隊や国が本腰を入れて対応していないことも、気になるといえば気になる。
なので、ドラゴン族と国とで密約があるのでは、なんて都市伝説も存在するが、少なくとも現時点では町興しの一環として収まっている。
なんとも平和なものだ。