第一話~ドラゴンスレイヤー
ラノベ風味。
『ドラゴンフォール』
――飛鳥弥生
『目次』
・第一話~ドラゴンスレイヤー
・第二話~ドラゴンバスター
・第三話~ドラゴンキラー
・第四話~ドラゴンギルド
『第一話~ドラゴンスレイヤー』
獰猛で人を襲い、片や人をも凌ぐ知性を持つこともあるデカいトカゲ、もしくは小さな恐竜と聞いて、若い、ごく一般的な日本人が思い浮かべる生き物といえば?
ドラゴン。
そう、竜と書いてドラゴンと読ませるアレでほぼ間違いないだろう。
ホビットが活躍する冒険モノに登場したのが初登場だったと思うが、ともかく、ドラゴンなる生き物は日本人に支持され、娯楽フィクションの至るところで活躍した。
詳細な経緯は専門家に任せるとして、現時点のオレにとって重要なのな、そんなドラゴンのうち、岩場に住まい自らの体も岩で覆われたドラゴン、岩竜{ロックドラゴン}を確実に葬る方法、これだ。
オレの町がいくら田舎だといっても体長八メートル強、立ち上がれば頭まで同じく八メートルはある巨躯が自由勝手に出来る場所なんてものは、そもそもない。
数時間前、商業ビルの取り壊し跡、数日後には基礎工事が始まるそこに岩竜は唐突に、文字通り唐突に現れ、警備のオッサンをしこたま驚かせてからそのまま居座り続け、そして現在に至る。
あと一区画東か西なら管轄違いで出向くこともなかったのに、そう愚痴るオレに対してチームの司令塔たる橘綾{たちばな・あや}は全く正反対に怒鳴り散らす、毎度の如く。
「だーかーらっ! 方城護{ほうじょう・まもる}はもっとロングスパンで思考しろって!」
方城ってのはオレのこと、あしからず。
「いいか? 今でこそドラゴンフォール現象は日常化してっけど、その原因から何から解明されてることはほぼゼロ! どっかのだれかかがそのうち勝手に解決してくれるだろ、ってのは日本人の悪い癖だぞ? あたしからしたらドラゴンフォール現象が明日にでも終了しちゃって、結局何だったのか不明、なんて寒いオチを想像しちゃって夜も眠れないっつーの!」
さいですか。
別に説明するまでもないと思うが一応。竜が空から降ってくる、みたいに唐突に現れるからドラゴンフォール現象……安直だよな、うん。
でもまあ、オレみたいな語学力の薄い高校生でも解るって点は、誰だか知らないが名付け親に感謝ってところだ。
さて、そろそろ本題に入らないとドラゴンよりも厄介なチームリーダー、他所の町から派遣されてる本職のドラゴンスレイヤー氏が物騒なモノを振り回しそうだ。
チームを組むのはこれで五度目くらいで、名前は椿波雲{つばき・なぐも}。
二十四歳だかと聞いて、それ以上のプロフィールは知らないが、秘密主義というのでもなく単に無愛想なだけで、他人の都合お構いなしのアヤでさえ殆ど喋ったことがないらしいから、これはもう相当な人間嫌いに違いない。
だから、でもないが、現代世界にとって異形ともいえる存在、ドラゴンを退治する達人、通称「ドラゴンスレイヤー」の二つ名を持っているのだろう。
実際、椿波雲の強さはその二つ名の通りか、それ以上か、というほど別格だった。
オレやアヤはいらないんじゃないか、そう思うことも何度かだが、彼女はそんなオレらにもそれなりの役割を振ってくれていた。牽制だったり雑用だったりあれやこれや。
それらが椿波雲なりの心遣いなのか単なる戦術なのかは知らないが、お陰で自分がそれなりに役立っている、と勘違いできる程度には活躍できるので、今日もこうして岩竜の目撃情報にしたがって三人一チームで現場にいるという訳だ。
……以上、長ったらしい前置きで申し訳ない。