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落下、落下、落下。

「…それで、まだ何か言いたいは有りますか?」


「…申し訳ございませんでした。深く反省しております、マリー先生」


 だから、だからお願いです!


「そろそろ正座を止めても宜しいでしょうか?!」


「いーえ、ダメです。いいですか?だいたい貴方は…」


 マリー先生に森に行った事云々を素直に白状して数十分。俺はマリー先生にが叱られていた。正座させられてるから脚がピリピリと痺れて痛いの…


 てか、何で先生がジャパニーズ正座を知ってるんだよ!此処異世界!その旨をマリー先生に(もちろん異世界云々は除いて)質問してみると、


「…先生の友人に東の方の国出身の人が居て、その人に教えて貰いました。でも、そんな事今は関係ありませんよ?話を逸らさないで下さい。それに…」


 と、お叱りが長くなってしまった。藪蛇だったか。というか、こっちにも正座の文化あるのね。


「はぁ。全く貴方は…何度も言いますが、自分が何をしたか分かってますか?森にコッソリ行って、スフィンスウルフに追われて、挙げ句の果てに謎の爆発に巻き込まれそうになったんですよ?死なないで帰ってこれたのは奇跡ですよ、奇跡」


 …死なないで帰って来れたのは奇跡、か。そうかもしれないな。やっぱり今のままじゃダメだ。やはり覚悟か足りないんだな。そして根性。これも大事。…明日晴れるといいな…


「また森に行こうだなんて考えてませんよね?そんな事はさせませんよ?」


 マリー先生がジト目で俺を睨んでくる。くっ、勘のいいエルフは嫌いだよ!


「はぁ…今日はもう良いです。部屋に戻って寝て下さい。そして、今後一週間は外に出てはいけません。これは先生との約束です。この約束を破ったら……賢いレンくんならわかりますね?」


「はぃ…!」


 うぅ…こわいよう…いつもは温厚なマリー先生が怒るとめっさ怖いよ…


 うーんしかし、こいつは参ったな…一週間外出禁止か。コッソリ行った事がばれた以上、監視の目が強くなるだろうし…


 しかたない、じゃあもっとコッソリ行く方法を考えますか。今度は周囲に気を配りながら慎重にやらねば。ヌッフッフ、マリー先生?バレなきゃ犯罪じゃないんですよぉ…?




 ###########




 次の日。俺は昼食を食べ終えると、トレーニングの為にソロリソロリと孤児院から抜け出そうとしていた。


 よし、辺りには誰もいna「レンくん!ダメでしょおそとにでたら!」


 …?!今ミリアどこから出て来た?!


 ミリアは俺と同じ日に、この孤児院に預けられた。そのため幼馴染の様な関係となり、仲は良い方だ。そのせいか、どうやマリー先生に俺の見張り役を頼まれた様だ。


 しかし、今ミリアは本当に何処から出て来たんだろう。まるで瞬間移動でもしたかの様に出て来たな。

 何かスキルでも持ってるのかな?解析で見たい所だが、今の俺のレベルじゃ体力とかの値しか見れないし…


 あ、今はそんな事より何か言い訳を考えないと。


「レンくん、きのうおそとにでちゃダメですってマリーせんせーにいわれたのわすれたの?ほら、おへやにもどろ?」


「部屋に戻るのも良いけど…外はこんなに良い天気なんだぜ?日向ぼっこしたいと思わないか?ほら、澄み渡る青空。流れる白い雲。こんな中外で暖かい太陽の光を浴びて寝れたら最高じゃない?」


「うぅん…それでも、ダメなものはダメー!ほら、もどるよ!」


「引き摺られるぅ…」


 この言い訳は駄目だったか。上手く誤魔化そうと思ったんだけど…


 こうして俺はミリアに首根っこを掴まれ、ズルズルと部屋に引き摺られて行くのだった。



 ###########





「じゃあ、レンくんはまどのそばのつくえのとなりにおいてあるおきものつぼやくね?」


「その役必要ある?!」


 ミリアに部屋に引き摺られたあと、俺は強制的にミリア達のおままごとに参加させられていた。

 ストーリーは王城のお姫様が主役の御伽噺らしい。俺はウンザリしながらも、ミリア達が満足するまで付き合って、そのあと隙を見て脱出しようと企んでいた。


 が、役が置物とは聞いていないぞ!こんな部屋の隅でじ〜っと座ってる役だなんて、何の意味があるんだ!断固抗議する!


「あのねレンくん、きぞくにとっておきものっていうのは、じぶんがどれだけえらいとか、どれだけおかねもちかとか、そーいうのをしめすじこしゅちょーみたいなものなんだよ!」


「いや、でもsa「それをなくしておひめさまはやれないんだよ!それじゃ、はい!これだいほんだから!」…ハイ」


 自己主張なんて難しい言葉よく知ってるね。


 とまぁ、この様に置物の必要性を熱く語られてしまい、反論もさせてくれず敢え無く撃沈。ぐぬぬ……


 しかもこのおままごと、結構長く続きそう。台本を見ると結構分厚い。

 そもそも置物に台本って必要?てか、あれ?これって劇じゃない?


 こうなったら、近くの窓から感づかれない様に脱出するしか無い。幸い自分の役は置物。すぐに忘れられるだろう。そうなったらもうこっちの物だ。なーに、影を潜めて窓から出るだけの簡単な仕事だ。ほら、現に彼女達は遊ぶ事に夢中だ。今ならイケる。


 そーっと窓を開け、枠に足をかけ、あの青くて広い空へジャンプ!


 スタッ。うん、着地も完璧。ドヤァ……案外簡単に脱出出来たな。


 こうして、俺は二度目の脱出に成功した。さてさて今日はフィクショントレーニングの日だ。まずは準備運動がてらに、目的地までダッシュだ!走れ走れ!周りの景色が一気に後ろに流れてく。風が気持ちいい!狼に追っ掛けられながら走るよりはずっといいや!


 葉を掻き分け、木々の間を駆け抜ける。勿論、辺りの警戒は忘れない。そうして森を進んでいると、急に景色が開ける。崖だ。


「はぁ、はぁ…ふぃ〜、やっと着いたか」


 そう、今回の目的地はこの切り立った崖である。

 別に此処から観える綺麗な景色を観に来た訳ではない。ちょっとした目的が有ってきたのだ。


 崖下をソーっと覗く。高さは…うん、高い。ちょっとした崖だって聞いていたんだけど…コレは流石に怖いな、此処から普通に落ちたら死ぬ。確実に。さて、それじゃあ集中集中、身体に魔力を纏わせるイメージ……よし出来た。


 今の俺は、簡単に言えば魔力を固形化させて出来たプロテクターを装備した状態になっている。透明でつけてる気がしないけど、あるであろう部位を触ればちゃんと確認出来る。


 この魔力、本当に形は自由が利くんだよ。強度はスーパーボール以上硬くならないけど、重さも無いに等しいし。夜な夜な練習した甲斐があったな。


 …よし、準備おっけー。後はひたすら下腹部に力を入れて…


「おりゃっ!」




 飛べっ!




 落下。落下。落下。


 風の音が耳を騒がす。


 木の枝をみつける。

 掴もうとする。

 枝が折れる。


 落下。落下。落下。


 飛び出た岩を掴もうとする。

 手が滑る。


 落下。落下。落下。


 視界がスローになる。


 その後も、岩や生えている草を掴もうとする。


 風を切る音に混じって、何かの唸り声が聴こえる。なんだ?



 落下。衝撃。思わず目をつぶる。

 ギャン!と、何かの鳴き声。


 柔らかい物の上に落ちた。


 ゆっくり、ゆっくりと目を開ける。


 …死んではいないようだ。


 体を起こす。下に、毛むくじゃらの感覚。なんだ?


 下を見る。白い毛の生えた大型犬ほどの大きさの動物が白目を剥いて伸びている。顔についた傷が特徴的だ。



 これ、追っかけてきたスフィンスウルフさんじゃない?


 「うげぇ?!」


 思わずそこから飛び退いた。

 どうやら件のスフィンスウルフが、下敷きになって落下の衝撃を吸収してくれたようだ。完全に伸びてしまっている。気絶しているせいか、火の粉は纏っていない。


 「ふぅ…助かった……イギぃ?!」


 突然左腕に激痛が走った。

 見ると、腕があらぬ方向に曲がってしまっている!

 プロテクターだけじゃ衝撃を殺しきれなかったか…!


 「イダダダダダ!痛い!イタイ!」


 あまりの痛みに倒れこんでてしまう。


 くっそォ…!痛い、こんな痛みは初めてだ!


 思わず気が遠のく。せめて、元の場所に固定しないと…!


 すると、左腕に冷たく柔らかい感触。なんだ、今度は何なんだ!


 見ると左腕の上にバレーボール程の大きさの銀色に鈍く輝く水銀の様な物体。これは…鉄スライムか?


 鉄スライムがなぜこんな場所に…まさか、俺を襲って魔力を吸収するのか?!


 なんてこった、こんな所で人生からログアウトする事になるなんて…!


 気が遠くなる痛みの中、俺はそんなことを考える。


 ダメだ、もう、意識が……






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