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設計士ですか、そうですか

 …光が収まる。何だったんだ今のは…まさか誰かが閃光手榴弾でも嫌がらせの為に投げ込んだかっ!


 って、そんな訳が無い。


 しかし、本当に何だったんだ今の現象は。周りを見れば分かるだろうか。そう思い周囲を見渡すと、


 ・何も無い白い空間。


 ・何が起きたか解っていない同級生達。


 ・宙に浮かぶ青年らしき人の姿。


 …どういう事なんだ、さっぱり訳が分からない。


『さて、何が起きたか分からなくて呆然としている皆さん。私は神です。』


 すると男にしては高いような、中性的な声が耳に入ってくる。どうやらあの青年が喋り出したらしい……ちょっと待て。神?


『いいですか、君たちは異世界に召喚されました。しかし、何も説明されないで異世界に行かせるのは可哀想だ。という上の判断で、簡単に異世界について説明します』


「おぃちょっと待てよ!テメェいきなり何様のつもりだ!」

「そうだ!大体異世界だなんて、お前狂ってんだろ!」


 そうだそうだ!と荻中らから野次が飛ぶ。俺もそう思った。だが、もしこの自称神が嘘言ってたとしても、宙に浮いてることや、この果ての無さそうな白い空間の説明がつかない。


『神様だよ。全く煩いなぁ、少し黙っててよ。今から説明するって言ってるんだから』


 そう言うと自称神が、まるでチャックを閉めるように手を横に動かす。すると、荻中達は口にてをあててモゴモゴ何か言っていた。…まさか開かなくなったのか?千と○尋の神隠しか、お前は湯○婆(ゆば○ば)かよ…!


『確かに彼等の口を閉じたけど湯○婆と一緒にしないでくれよ、君』


 あ、心を読まれた。しかし、今のでこいつが神だって事が分かったぞ。心を読むなんて、神とか人ならざる物にしか出来ないだろ。


『それじゃあ説明を開始するよ。一回しか言わないからよーく聞いていてね?説明の途中で質問は無しだ。勿論、そこの運悪く教室に入っちゃった教師含めて。いいね?』


 神がそう言うと、全員が頷く。


『うん、よし。それじゃあ始めるよ。まず、君達が行くのはさっきも言った通り、異世界だ。所謂、勇者召喚って奴だね。それに君達が選ばれたんだよ。ご愁傷様♪』


 ご愁傷様の言い方が気に障ったのか声を上げようとした奴がいたが、荻中達と同じように黙せられる。


『はぁ…手を煩わせないでくれよ。いいかい?その世界は、地球の様に人類が我が物顔で支配してる世界じゃあ無い。常に危険が側にいる。』


 何人かの生徒が息を呑む。そりゃそうだ。平和な日常を過ごしていたのにいきなり危険と隣り合わせの世界なんて、恐ろしいことこの上ない。


『その世界は君達でいう、ファンタジーの世界だ。高度な科学技術なんて物はまだ存在しない。魔法とかは当たり前の様に使われるけどね。現代っ子な君達には不便で慣れないことも多いだろう』


 ファンタジー系…危険が沢山というと、やはり魔物等の事だろう。


『勿論、そんな世界にいきなり君達が行ったらあっという間に死んでしまうだろう。でも、それじゃ幾ら何でも可哀想だ。そこでだ。君達にはちょっとしたプレゼントをさせてもらう事になったよ』


 プレゼント。もしこれが所謂テンプレ通りなら、スキル・ステータスなんだが。


『ある程度の人は察しがついてるね。そう、君達へのプレゼントはランダムで選ばれたスキルとステータスだ。これから行く世界ではちょっとしたチートなやつをね。さて君達、袖をまくって腕を見てごらん。そうそう、右腕の方のね。そこに変な模様があるはずだ、それに触れてごらん?』


 制服の袖をまくると、成る程確かに変なマークがある。大体スマホアプリのアイコン程の大きさだろうか。言われた通りに押してみる。すると…


「!」


 目の前にパソコンのウィンドウの様なものが現れ、文字が表示される。まるでVRゲームのようだ、さて内容は…?


 _______________________________________________

 ステータスmenu

 _______________________________________________



 名前:八澤 蓮


 年齢:17


 性別:男


 Level:1


 職業:設計士

 体力:60

 筋力:50

 防御力:70

 俊敏性:70

 魔力:1450

 魔力才能:

 技能:器用

 スキル:設計再現,言語理解力上昇,解析


 _______________________________________________


 …これは当たりなのだろうか?それともハズレ?魔力は1450と沢山有るけど、魔力才能が空白なのは何故?そして、職業の設計士って何?確かに親父が設計士な事もあり色々な事を教えてもらったし、天才少女和紗さんの設計図の欠点を指摘したけど、まだ職業を名乗る程専門って訳でも無い。


 しかしステータスか…まるでゲームみたいだ。そんな事を感じながら、俺は自分のステータスをじっくり眺める。他の奴らも自分のステータスに目が釘付けだ。


『さてみんな、自分のステータスは見れたかな?じゃあ説明するね、先ずはレベルから。レベルは上昇すると、各ステータスも上昇する。上昇には個人差が有るけど、レベルの上限は101。まあ上限と言っても、今まで人間が生きてる内に上昇させたレベルの一番上が101なんだ。上げようと思えば幾らでも上げられるよ?』


 神様がステータスの説明をはじめた。成る程、本当にゲームみたい。


『でもね?ステータスはレベル上昇と共に上がると言っても、そのステータスをよく使ってないとダメなんだ。つまり、あまり普段から鍛えないでレベルを上げても、ステータスはあまり変わらないって事だよ。ちなみにレベルを上げなくても、鍛えればステータスは少しずつ上がっていくから』


 つまり、よく鍛えれば損する事は無いと。


『次に職業。職業はスキルや技能と連動していて、その職業の領域だと、物凄い才能を発揮するんだよ。ちなみに、職業持ちは向こうの世界ではなかなか少ない』


 おい、それ無職ってことか?異世界にはニートが多いのか?


『ああ、別に無職って訳じゃ無いんだ。ステータスに表示される職業の話だよ。数か少ないから、ユニーク職業なんてのもあるかもしれないね。そして、その職業の中でも、戦闘系、例えば剣士とかは激レアなんだよ。一つの大国に二人居たらその国は物凄い強いんだろうね。あと、生産職業もレアだけど、こっちは一つの大国に100人は居るかな。』


 つまり俺には設計士のすごい才能が有るよって事か。…いやー、才能かー…今まで平凡だった俺に、こんな才能が有るとは。しかも、魔力は1450だ。チートが出来る、俺TUEEEが出来る、思わずニヤニヤしてしまう。


 がしかし、神様の次の一言でそのニヤニヤが吹っ飛んだ。


『後は…ステータスと魔力才能かな。ステータスはレベル1の冒険者だとすると平均50位だよ。もっとも、君達はその何十倍も有るんだけどね。最後に、魔力才能は文字どうり魔力を使う才能さ。火、水、土、風、光のどれか、もしくは全てが書かれていると思うけど、その書かれている属性の魔法をつかえるよ。居ないだろうけど、書かれて無いと基本的な物しか使えないよ』


 ……?

 あれ、平均が50ですか。俺のステータスは魔力以外全部50付近。そして、その魔力は才能が無いと基本的な物しか出来ない。…おや?チートは?俺TUEEEは?あ、そうか。最初はみんなこれ位なのか。そうだよね?


 そんな期待を胸に、近くに居た富山のウィンドウを覗き込むと…


 _______________________________________________

 ステータスmenu

 _______________________________________________


 名前:富山 秀吉


 年齢:17


 性別:男


 レベル:1


 職業:魔導剣士

 体力:1000

 筋力:1000

 防御力:1000

 俊敏性:1000

 魔力:1000

 魔力才能:火、水、土、風、光

 技能:剣術,魔術

 スキル:全属性強化,剣術強化,全属性耐性,魔術強化,限界突破,高速回復,言語完全理解


 _______________________________________________

 今度はチートの具現化かよ…お前本当は転生して来たオリジナル主人公だろ?そうだろ!?


 なに?まわりのやつらみんなこんな感じなの?俺だけ?こんな低いの俺だけ??


「ゲェ、こいつ、ステータスクッソ低いぜ!お前こんなイベントでもクズのままなんだな!」


 荻中?!こいつ話せないんじゃ?!


 …説明が終わったから術が解けたのか!


「おい梶原ぁ、中島ぁ、こいつのステータス見てみろよ、クズだろクズ!」

「うっは、本当だ!殆ど50だぜ!こいつ!しかも職業、生産系!」

「こんなんであんた戦えるわけぇ〜?」

「ヒヒッ!こんなん盾にもなんねぇなぁ〜!」


 その声を聞いたクラスメートは、特に男子がニヤニヤ笑っている。なんてテンプレな小物の行動だろうか。しかし、直に言われてそれが事実だと心にグサリとくる物がある。


 次々と笑い出す生徒。そんな中、和紗がこっちにやって来た。


「蓮くん、彼らの言うことなんて気にしなければいいのよ。だって彼ら、後々蓮くんを頼る様になるでしょうから」


 どういう事だ?


「なあ、和紗さん、それはどういうこ『さーて、君達にはさっさと移動してもらうよ。さあ、この魔法陣の中に入ってくれ』」


 俺が彼女に質問をする前に、神様がまた喋り始めてしまった。これでは質問が出来ない。


 もう帰れないと悟っているからか、もしくはステータスという玩具をもらったからか、ごぞって我先にと魔法陣の中に入っていく生徒。いこう?という和紗の呼びかけで、俺も中に入らなければと端の方に入る。


『はい、入ったね。じゃあカウントいくよ、3 、2』


 1―――その瞬間、背中に軽い衝撃がきた。俺は魔法陣の外に突き飛ばされる。

 蓮くん!と和紗が手を伸ばしたが、俺の前でかき消えた。


 そして俺は…召喚から取り残された。


 おいおい嘘だろう。ここまでするのかよ、アイツら。


『…全く人間の子供というのは、こういう事をしてくれるのか。そこの君。立てるかい?』

「…はい」

『いいかい?君は召喚から取り残された。もう召喚されることは無いだろう。しかし、君を地球には返せない』


 ……


「…だったら、だったら俺は、どうすればいいんですか?こんな彼奴らからしたらゴミ同然のステータスで、異世界の彼奴らとは違う場所に行かせるんですか!?そうだとしても…こんなステータスじゃ何もできやしない!いったいどうすれば…どうすればいいんですか…?」


 心から出た言葉だった。別に神様の同情を誘いチートを手に入れたい訳とかじゃなく、ただ、ただ心から出た言葉だった。


『君、さっきも言っただろう。説明の途中で質問は無しだ。いいかい、確かに君のステータスは一見すると使えない物に見えるかもしれない。しかし使い手によれば、その人にとって最高のステータスになってくれる筈なんだ』

「…どういうことですか?」

『本来ならこんな事をしている暇もないんだが…仕方がない、手短に話すよ。今から君を彼らが召喚される17年前に転生させる。その間に努力して、彼奴らに勝てる様にでも努力するといい。いいね?』

「しかし…こんなステータスじゃ生き残ることすら…」

『平均よりも上の数値だぞ、それは。それに君はマシンオタクだろう?そして職業は…設計士だ』


 その言葉を聞いた瞬間、俺は一筋の希望をみつけた。なるほどそうか…イケる。コレはイケるかもしれない。


「神様、あっちの世界の魔物の強さは?」

『んーそうだね…色々いるけど、地球の兵士なら頑張れば勝てるぐらいかな?』


 きた…来たぞこれは…


『もう時間が無い、急いで君を転生させるよ?』

「あぁ、頼みます神様!」

『よし分かった、任せてくれ。そうだ、これは餞別だよ』


 そう言って神様は、テニスボールくらいの金属を渡してきた。


「これは?」

『それは地球と異世界の金属、全てが詰まった物質だよ。何かの役に立つかもね。さ、この魔法陣に入って!』


 俺は魔法陣の中に入ると神様にお礼を言った。


「こんなことまでしてくれて、ありがとうございます…!」

『いいんだよ。それより君が今後どのように行動していくか、ここで楽しみにしているよ。それじゃあ行くよ!』


 そして再び目を瞑るほどの眩しい光がーーー







感想、誤字指摘、よろしくお願いします!

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