プロローグ
初めて書く物ですので、温かく見守ってくださると幸いです。
チャイムが鳴ると同時に俺はいつもの様に教室の扉を開け、席に着く。
扉を開けた瞬間に飛んで来る、紙くずや消しカスの類は一切無視。そして、無視をした事に対する舌打ちも無視。関わらなければどうという事は無い。
が、やはりそう上手くはいかない。
「よぉクズ、今日も随分と遅い登校だなぁ」
「どうせ徹夜でエロゲーでもしてヌいてたんだろ〜?」
「やだ〜流石キモヲタ、キモ〜い」
そんな事をしてる訳ないだろ。
何が面白いのかクスクスという何人かのクラスメートの軽別の笑い声の中で、顔を上げる。 俺に絡んできたのは、荻中 祐武、梶原 大毅、中島 美沙の三人。毎日毎日飽きもせず、日課のように絡んでは罵倒してくる。
俺なら三日で飽きるね。
梶原の言うとうり俺こと、八澤 蓮はオタクである。しかし、キモヲタとバカにされる程行動や言動、身だしなみが見苦しい訳じゃあ無いし、体格だって普通な筈だ。コミュ症でも無い。それに、オタクはオタクでも、メカオタクである。こいつらの言うヲタクとは種類が違う…筈だ。まあ、周りからしたら同じ様な物か。
そんな事を考えながら、鞄から出した本を開く。
はぁ…スマホを持ち込みたい。スマホが有れば、ネット小説を読んだりとか好きな銃や戦車や重機などの画像を眺めたり出来るというのに。
別にこの高校はスマホの持ち込みが禁止という訳じゃない。ただ…
「おぃおぃ、何無視しちゃってんのぉ?」
「お前、俺らを無視出来るほど身分高かったっけ〜?」
「耳が腐っちゃったんじゃないのぉ〜?」
…持ってきたら、絶対にこいつ等に盗まれる。で、隠されるか壊される。本当に何とかならないのだろうかこの三人組は。まあ教師に言っても無駄だったんだ、諦めるしかないだろう。なにせ、荻中と梶原は金持ちのボンボン。
中島は学園長の娘である。揉み消されてしまったに違いない。
しかし、如何して俺はこのような状況に陥ってしまったのだろうか?
……まあ理由なんて無いんだろうな。イジメなんてそんなもんだ。だから――
「蓮くん、おはよう」
――俺の隣に居る可憐な女子生徒が、何故か男子では俺だけと親しくしている事に嫉妬したからなどというくだらない理由が切欠で起きているイジメじゃない…と、願いたい。
彼女は和紗 由紀。
文武両道の美人さんで、背まで伸ばしたストレートヘアのよく似合う淡い目の綺麗な整った顔立ちの、男女共に絶大な人気を誇る…まあ、所謂超人である。しかし、そんな彼女にはある欠点がある。
何故か、俺以外の殆どの男子を毛嫌いしているのだ。
話しかけようものなら、すぐに「すみません今忙しいので」とあしらわれてしまう。どんなにイケメンでも、どんなに性格が良くても、反応は同じだ。だからこそ憧れの存在なのかもしれないが。
だが、何故か彼女は俺にはそこそこフレンドリーに接してくる。少なくとも普通の会話を交わす程度には。そのおかげで、今や彼女はまともに会話が出来る数少ない友人の一人である。
しかし、何故そんな嫌われている俺に和紗さんは構うのだ。容姿平凡、成績は数学以外そこそこなこの俺に。男子からの"何故、どうしてアイツなんだ!"という視線で、俺は胃に穴が開きそうですよ。
そもそもこうなったのは高一の頃、彼女が書いていたエンジンの設計図の欠点を指摘してからだ。凄く洗練された設計図だったんだか、何故かそこだけ設計ミスがあったのだ。指摘したとき最初はムッとし反論されたが、じゃあどうするべきかと議論を重ねてどうやら納得してくれたらしい。それが原因なのだろうか。どうしてそんな物を書いていたのかは訊いてみたがはぐらかされてしまった。
「お、おはようございます。和紗さん」
"テメェなんで和紗様から挨拶してんのに返さないんだ"という周りから放たれる殺気を感知して、取り敢えず挨拶を返す。
「なんでそんな他人行儀なの?もっと軽い口調で言ってくれてもいいのに」
「そりゃあ、成績が良くて美人で人気者な和紗さんが話しかけてきたら、男なら誰だってそうなるでしょう」
笑顔でそんな事を尋ねてくる和紗さんに、ありのままの本心を返す。てかこのような会話は何回目だろう。それに貴女に馴れ馴れしく話しかけたら、何をされるか分かったものじゃない。
本当に、なんで和紗さんは俺に話しかけて来るのだろう?話しかけて来るのならせめて二人きりのところにしてください…周囲から俺に向けられる殺気に気付いてくれないものか。
どんどん増していく周りの無言の圧力。早く、早く誰か来てくれ。何て事を考えていると、三人の救世主が現れた。
「おはよう、由紀、八澤くん。…八澤くん、朝からお疲れ様」
「おはよう由紀。また彼の世話しているのかい?君は本当に優しいね」
「俺もそう思うぞ、なんで和紗はそんな奴に構うんだ?」
三人の中で唯一俺に労いの言葉をくれた彼女は女神だと思うんだ。名前は嶋里 優香。真っ白な肌と切れ長な瞳、サラリと溢れる漆黒の髪、口紅が無くても桜紅色の唇、まさに大和撫子そのものの美少女である。また、やはり此方も文武両道、成績も優秀で、生徒会にも務めているし、男女共に人気がある。 彼女も俺と会話が出来るレアな人材だ。
続いて臭い感じの台詞で和紗に声をかけたイケメン。こいつは富山 秀吉。運動神経抜群で長身、これまた頭も良く、俺以外の誰にでも優しく接している。といっても、話しかけるとちゃんと言葉を返すだけましな方か。ちなみに、嶋里とは幼馴染だそうだ。惚れている女子生徒は数多く、ファンクラブもできているらしい。
まあ、要するに超モテ男、リア充の具現化である。難点は正義感が強過ぎる所か。
最後に、和紗に疑問を投げかけたのは坂本 龍野。坂本くんいい質問だ。それは俺も気に成っている。彼はスポーツ特化型、悪く言えば脳筋タイプである。長身で熱血漢、細かいことは気にしない奴で、富山の親友である。俺とは正反対の性質の持ち主だ、仲良くなれそうもない。
「おはよう、嶋里さん。…ありがとう」
「いいのよ。貴方、かなり苦労しそうなタイプですもの」
この会話を終えた瞬間、殺気がさらに膨れ上がる。やばい、思わずチビりそうになった。
はぁ…もうどっか行きたい。異世界に行きたい。もしくはこの4人を誰か召喚してやってくれ。魔王位なら軽く倒せそうな最強パーティだぞ。なんて、心の中で愚痴る。
「ねえ、君は僕らには挨拶しないのかい?」
…何故お前らに挨拶しなきゃならない?思わず口が滑りそうになるが、これ以上厄介事にしたくない。我慢せねばなるまい。
「俺はおm…富山くんたちに挨拶はされていない。だから返さなかった。それだけだ。」
「…はぁ。由紀、君はなんでこんな奴に構っているんだい?僕は不思議でしょうがないんだ」
この世にはお前らに会ったら挨拶をしなきゃならない法律でもあんのか。なんて言いたいがそんな事を言えばリンチだ。大体こいつ思い込み激しいから、何を言っても無駄なのだ。
そんな中、和紗が爆弾をポイッと放り投げた。
「なんで貴方に不思議がられなきゃいけないの?私はただ、蓮くんと話したいから話しかけてるだけだから。あと、馴れ馴れしく名前で呼ばないでください」
…何て事を言っているんだ和紗さん!ほら、周りの俺に対する殺気がヤバいよ。もうピリピリどころじゃないよ、ビリビリだよ。
「なっ……あぁ、由紀。君は本当に優しいね」
あ、俺を庇ってると勘違いしやがったなこいつ。しかし…この空気、どうしてくれよう。そんなことを考えている時、救いの始業のチャイムが鳴った。教師がドアを開けて入ってくる。やっとこの空気から解放される!そう思った瞬間。
世界が光に、包まれた。
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