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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
最終章「隣の彼女は幼馴染み!?」
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第96話「彼の進路相談」

 あれから二日ほど経過し、終業式を迎えた。


 今日で長かった高校二年生は終わりを迎える。よく四月になるまでは前年の学年のままだという人がいるが、実際問題感覚的にはもう高校二年生は終わっている。

 本当ならにこやかな気分で二年生を終わりたかったのだが、俺の心はそれを許してくれなかった。

 雅や静夏にあれだけ言われ、木葉からしっかりと気持ちを聞こうと思ったのにも関わらず、俺は未だに踏み出せないでいる。その理由は明白である。


 前のままならば、たとえ木葉と付き合えなくても同じ環境で笑っていられた。けれど、俺が木葉から偽りと誤魔化しのない答えを聞いてしまえば、それすらも叶わなくなってしまう可能性がある。

 そう考えると、これから歩みだそうとしている一歩というのは、非常にリスクの高いものなのだ。


 それに、ここ最近、木葉が妙に俺のことを見てくる気がする。休み時間や授業中、どう形容していいのか分からない視線を俺に向けてくる。その真意は不明だ。

 もしかしたら、今の俺との距離感が気に食わなかったのかもしれない。ならば、俺はもう少し木葉と距離を離し、彼女に満足のいくベストな立ち位置を見つける他ない。

 けれど、そうやって機嫌を伺うのは正直疲れた。だからと言って何か行動できるわけではないが、こうしているとどうしても疲れてしまうのだ。


 完全に自己矛盾を起こしているのは分かってはいるが、こればかりはどうすることもできない。



 終業式はあっという間に終了し、俺たちは教室で帰り支度をしている。

 今日は終業式で午前授業ということもあり、萬部の活動はない。そのため、俺はこのまままっすぐ家に帰るつもりだ。

 カバンに荷物を詰めていると、近くの席に座っている須藤に声をかけられた。

「なあ、遥斗。二年生も終わったしよ、これからどっか飯でもいかないか? 久しぶりに遊ぼうぜ?」

 久しぶりに、か。確かに萬部に入ってからというもの、木葉・雅・静夏とは遊ぶ機会が多かったが、須藤とはほとんど学校以外で顔を合わせていなかった。

 俺はしばしの間考える。しかし、

「んにゃ、悪い。今回はパスだわ、俺。何か気乗りしなくてな」

「なんだよそれー。ノリ悪いぞ、遥斗。けど、そうなら仕方ないな。また今度誘うわ。次、同じクラスになれればだけどな~」

「ああ、その時は頼むぜ」

 そうか。もしかしたら、三年生になってクラス替えをしたら、須藤とは別のクラスになるかもしれないのか。当たり前のことだが、俺はそれを改めて思い知った。須藤ならどこでもやっていけるだろうが、問題は俺の方だ。非リア充でぼっちとかどうやって生活していけばいいんだよ。いや、マジで。

 と、近い将来に待ち受けるであろう危機に、俺は今から不安を抱いた。

 ただでさえ、低いテンションを更に低くしつつ、俺は帰り支度を再開する。

 すると、今度は視界に黒い影が入り込んだ。影はもぞもぞと俺の視界の隅で動いている。

 俺は気になり、影の方へ目線を向ける。

「こ、木葉、か」

 木葉がカバンを肩から下げ、どこかしおらしい表情で俺を見ていた。

 俺たちは数秒間見つめ合うと、どうしていいのか分からないままお互いに口を開いた。

「あ、いや、えっと……どうしたんだ?」

「ん? えいや、どうしたっていうか、その……」

 互いにぎこちなく、会話がかみ合わない。

 木葉は自身の茶色い髪をくるくると人差し指でいじりながら、俺から目線を外して口を開いた。

「じ、実はさ、その、ずっと言おうと思ってたんだけど、そろそろ一緒に――」

 言いかけた瞬間、俺はたまらず木葉の言葉を遮った。

「わ、悪かった。もうちょっと距離は開けるよ」

「へ?」

「何か最近木葉変だもんな。俺の方ちらちら見てさ。それって、俺がちょっと木葉と距離が近いから、もっと遠ざけろって意味だったんだろ? 任せろって、お前の嫌がることはしないからさ」

 俺は自分の胸が押しつぶされそうなほど苦しくなりながら、笑顔を作った。静夏から偽りの笑顔だと言われた表情だ。 

 木葉は呆気にとられたような面様で、小さく頷いた。

「そ、そう……よね……。ごめんなさい、遥斗。それじゃ私、先に帰るね」

「ああ。また、次の部活で」

 そう言って、木葉は顔を伏せながら、足早に教室から出て行った。

 これでいいのだ。木葉はきっとこういう俺を望んでいるはずだから。静夏や雅には申し訳ないが、俺はやはり一歩を踏み出すのはやめようと思う。

 別に木葉のため、だとか格好付けるわけじゃない。


 ただ、…………怖いからだ。



 数分後、帰り支度が終わり教室から出ようとしたところで薫先生に捕まった。

「やあ奥仲。こんなところで奇遇だな」

「何言ってんすか先生。あんたうちのクラスの担任でしょうが。奇遇も何もありませんよ。明らかに俺が出るのを待ってましたよね?」

 言うと、薫先生は腕を組んで「ふふん」と鼻で笑った。組まれた腕に乗っかった胸に目がいってしまったが、それに気づかれないように全力で平静を装う。

「まあ、君の答えは正解だと言えば正解だし、不正解だと言えば不正解だ」

「面倒くさい言い回しですね」

「まあ、そう言うなって」

「それで何ですか? 雑用の押し付けの命令ですか?」

 特に何かした憶えもないときは、大抵薫先生の仕事の手伝いだとか、何か雑用を押し付けられる。きっと今回もそうだろう。

 しかし、薫先生は首を振った。長く艶やかな黒髪が、頭の動きに連動して波のように空中を舞う。

「違うよ、奥仲。ちょっと話がしたくてな」

 と言いながら、先生は俺の肩に腕を回した。

 アラサーだというのに、どこか妖艶で甘い香りが漂ってくる。それに、先生は残念なタイプだが見た目は抜群に良い。そのせいも手伝って、俺の心臓は今までにないほどにバクバクと振動している。

「あ、あの、えっと……み、身の危険を感じます!」

「なぁにをいうか、奥仲。私と君の仲じゃないか」

 俺の制服の腹部から胸部にかけて、薫先生が細長い指先でなで上げる。ぞくぞくと背筋を駆け巡る未知の感覚に、俺は今にもオーバーヒートしてしまいそうだ。だが、ここで取り乱して良いわけがない。

 俺は気づかれないように深呼吸をひとつ。

「ど、どどどどんな仲なのかはさておき、先生からのお誘いなんで断るのも無理そうですよね。分かりました。それで、お話っていうのは一体なんなんですか?」

「ここで話すのは少々適切ではない気がする。場所を変えよう」

「へ? 場所をですか? 分かりました」

 俺は一抹の不安を覚えながら、薫先生の言葉に唯々諾々と従った。



     ***



 訪れたのは誰も使っていない空き教室だった。


 一般教室の半分ほどの大きさで、室内には机が四台それぞれ二台ずつ隔てて中央に置かれている。それなのに、椅子は二脚しかない。見たところ、面談をするような配置に感じられる。

「あの……ここは……?」

「ん? ここは三年生の生徒が受験時の面接練習をするときの部屋だ。ほら、大学受験には色々な種類があるだろ? 完全学力の筆記受験から、面接を執り行う受験など様々あるんだ。それでこの教室は、面接を行うタイプの試験を受験する生徒の練習場なんだ。ただ、今年度の生徒は全員進路が決まったので、ここは只今空き教室となっている」

「はあ……。それで、どうしてここに?」

 聞くと、薫先生は片方の椅子に腰掛けた。こちらを見ると、俺も座るようにと促してくる。

 俺は怪訝に感じながらも椅子に腰掛けた。

「答えは簡単だ」

 そこで言葉を区切ると、薫先生はにこりと微笑んだ。



「大事な生徒の進路相談だ」


 こんにちは、水崎綾人です。

 少し更新が遅れて申し訳ございませんでした。

 さて、今回は悩みもがく遥斗の前に薫先生が現れました。薫先生はある意味では、物語開始当初からずっと一緒にいた人であり、近くで遥斗を見てきた大人でもあります。そんな薫先生だからこそできる進路相談。はたしてこれは遥斗の未来にどう影響するのでしょうか? 

 最終回まで読んで頂ければと思います。もうラストスパートです。最後までよろしくお願いします。

 では、また次回

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