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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第9章「三学期、始動」
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第52話「素行調査だってお仕事です」

 時刻は、一七時四七分。太陽はもうじき仕事を終えようと地平線の彼方へ消えようとしている。一五分ほど前まで茜色に輝いていた空も、今では少しばかり闇色になっている。輝き出した星々が夜空になりかけた空に妙に目立っている。


 俺と木葉は今、上西女子高の校門近くで、須藤の彼女こと実山(みやま)(みみ)()を待ち伏せしている。


「そ、それにしても寒いわね……」

 木葉が白い息を吐きながら、手をすりすりしている。


「そうだな。たぶん、あと少しで出てくると思うんだが」


 あと数分で一八時。もうじき実山さんが下校してもおかしくないはず。


「ねえ、遥斗?」


「ん、どうした?」


「本当に実山さんは浮気していないと思う?」


「いやいや、これから尾行するのにそれを聞くのはいかがなものか」


 俺が苦笑いをしていると、さらに木葉が続ける。

「でもさ、彼氏と別々な学校って心配じゃない?」


「まあ、須藤にとっては心配だろうな。でも、依頼を受けるときに覚悟はしておけって言ったし」


 万が一、ということもある。だから、俺はあの時、須藤に確認をとったのだ。


「それじゃあさ、遥斗はどうなの?」


「え、俺? な、なに言ってんだよ。俺には浮気される彼女なんていないぞ。ていうか、むしろ彼女がいない」


 言っていて悲しくなってくる。二次元の嫁ならいるんだけどな。

 一月後半の寒い空気とともに、心までがどこか寒々しくなってきた。


「なら、もし私がまた転校して、遥斗の知らない男の子と楽しそうに話してたら、遥斗はどう感じる?」


「……どう感じる、と言われてもな」

 言葉に詰まってしまった。

 なんなんだ、この質問。木葉はいったい、どんな返答を期待してこんなこと訊いてきたんだ? 上目遣いで俺のことを見つめる木葉の瞳が、心なしか潤んでいる気がする。


「どうなのよ?」


「どうって言われても……」

 と、言いかけた時だった。


 別の場所に待機している雅・静夏ペアから通信が入った。


『お取り込み中のところ悪いんだけど、実山さん来たみたいよ』

 静夏の声だった。


 俺と木葉は会話を打ち切り、校門の方に目を向ける。


 ちょうど、校門から女子生徒が出てきた。綺麗にカールされた茶髪を腰の位置まで伸ばしている小柄な女子だ。須藤が見せてくれた画像と比較しても、おそらく彼女が実山美々香さんに違いない。


 彼女の隣には、すらっとした長身の男子が並んでいる。肩の位置よりも少し短めの黒髪を、寒風に揺らしている。とても爽やかなイケメンだった。


 待てよ、女子高から男子!? まさか、俺と木葉が話し込んでいる間に、校門の中に入っていったのか?


「行くぞ、木葉」


「え、うん」

 俺は木葉の手を掴み、彼女らの跡をつけた。

 雅曰く、ただ後ろを歩いているだけだと尾行だと気づかれる可能性があるらしい。俺は全くそうは思わないのだが、木葉も特に嫌がるような様子は見せなかったので、とりあえず今回は木葉と手をつなぐことにしたのだ。


 しかしなんだ……いつも一緒にいると言っても相手は女の子。いざ手を握るとなるとやはり緊張する。


 柔らかな木葉の手はかなり冷たかったが、それでも確かに暖かさを感じた。

 これが……女の子の手……。


 今までも何度か木葉の手を握ったことはあるが、あんな上目遣いで見つめられた後だと、やっぱり緊張してしまう。


 そんな意識を紛らわすためにも、俺は実山さんの背中を見つめた。


 須藤の言っていた通り、実山さんは隣にいるイケメンと仲良さそうに話している。もしかしたら、本当に浮気なのかもしれない。


 それにしても、隣にいる男子は美形だ。切れ長の目に、形の良い鼻、きゅっと引き締まった唇。あんな美形が世の中にいるのか。


 俺はそっと木葉に話しかけた。

「なあ、すごいイケメンじゃないか? あいつ」


「そ、そうね。でも、なんていうか男の子っぽくなくない?」


「どういうことだよ? めっちゃ男じゃん、あれ」


 木葉は少しばかり眉間に皺を寄せ、

「うーん。確かにそうなんだけど、なんかパーツが整いすぎてるっていうか、手入れが行き届いているっていうか」


「なるほどな。イケメンっていうのは肌の手入れもきちんとしているわけか」

 やっぱり、俺や須藤みたいな人種とは根本的に違うのかもな。イケメンっていうのは。


 その後、実山さんとイケメンは、数回コンビニやスーパーに入ったのち、公園の前で別れた。


「なんだか、普通にデートしてるみたいだったな」


 小さくなっていく実山さんの背中を眺めていると、向こうの方から雅たちがやってきた。

 別の角度から尾行をしていたのだ。

「遥斗くん、これってデートじゃありません?」


 どうやら、雅も同じように思ったらしい。


「やっぱそう見える?」


「そうね。これじゃ須藤くんは太刀打ちできないんじゃないかしら」


 静夏がバッサリと言ってのけた。お、お前って須藤に対してやけに辛辣だよな。

 しかし、デートに見えたのは事実。須藤には今一度覚悟をしてもらう必要があるかもしれない。


「でもさ。さすがに今日一日で決めるっていうのもアレじゃない?」

 そう言ったのは木葉だ。


 彼女の言うことも一理ある。一日ですべてを決めてしまうというのは、確かに早計だろう。

「そうだな。じゃあ、あと何日か続けてみるか」



 こんにちは、水崎綾人です。

 ついに今作も50話を超え、52話まできてしまいました。

 遥斗たちの関係性にも変化が訪れ始めていますね。

 では、また次回。

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