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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第2章「幼馴染みと部活」
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第5話「なぜか遥斗は木葉に甘い」

 俺と大空が仲直り?をしてから早くも一週間が経過した。相変わらず大空は言い方は悪いかもしれないがぼっちだ。



 ただ一つ変わったことと言えば大空の喋り口調が少し優しくなったというところか。



 今俺たちは放課後の教室に二人きりである。普通ならドキドキの展開であるはずなのだがそうはいかなかった。


 なぜなら、大空の表情がいつもにまして険しいからである。

「ねえ…」

 大空が厳かに口を開く。


 ゴクリ…。自分がつばを飲み込む音が聞こえるくらい静かなこの教室内で、冷たい空気が流れるような気がした。


 そしてまた、大空が言う。

「私も…そろそろ友達を作らなきゃならないと思うんだけど…」

 ゴクリ…。再びつばを飲み込んだ。



 こんな険しい顔をしていた大空が何を言い出すかと思えば、『友達を作らなちゃいけないと思う』だあ?緊張して損した。

 俺の体を縛っていた緊張感は大空の放ったイマイチ緊張感の無い悩みで一気に解放された。



 緊張から解き放たれた俺とは対照的に、大空は未だ緊張感の抜けない顔でこちらを見続ける。


 もしかして、コイツって意外とアホ?無言のまま上目遣いでこちらを見る大空の視線に耐え切れなくなり、俺は大空に問うた。

「それがどうした?」


 大空から腹にストレートを喰らった。実に痛い。もしかしてコイツは可愛らしい容姿の中に化物並みの腕力を隠し持っているのではないか。

「遥斗!それって本気で言ってるわけっ」


 大空は自分の胸の前で腕を組みながら説教の真似事みたいな感じで俺に怒鳴ってくる。

「せっかく幼馴染みが悩んでるっていうのにそんな興味無さそうな態度とんなくてもいいんじゃい?」

「ああ…分かった。俺が悪かったよ」

 殴られた腹を擦りながら俺は立ち上がる。前にも言ったが素直に謝るのが一番だ。



「でもお前が未だにぼっちなのは俺が原因じゃないしな…」

 再び腹ストレートを受けた。

「う…がぁっ…」

 床に倒れ込んでしまった。やばい、やばいマジで死ぬかと思った。入ってるよ。みぞに入ってるから。


「ぼっちって言うな。私だって好きでぼっちやってるわけじゃないもん」

 おい…自分でもぼっちって言ってんじゃねーか。俺の意識は、そのまま闇の中に落ちていった。





「おっにいちゃーーん」

 甲高い声が俺の元に近づいてくる。

「ぐえっふぅ…!!」


 なんだ俺の上に隕石でも落ちたのか?なんて阿呆なことを考えながら、少しずつ目を開ける。そこには楓がいた。


 それより驚いたことがあった。そこはベッドの上だった。確か俺は学校で大空と話してたはず…。俺は一体どうなったんだ?



「なあ楓、俺はなんでここにいるんだ?」

 楓はぽかんとした表情でこちらを見てくる。それもそうだろう。いきなりこんな意味不明なことを言われれば誰だってこうなる。

 気を取り直してもう一度聞いてみた。


「すまん、すまん。俺、学校に居たはずなんだけど、なんで家のベッドで寝てんのかなって」

 言うと楓はようやく俺の言いたいことが分かったようで笑顔になりこう言った。


「お兄ちゃん学校で倒れたんでしょ?」

 ああ…学校で倒れたのか俺…。ってんなわけないだろう。

 正直、楓の話だけじゃ信用ならないので、一気に階段を駆け下り母親の元へと向かった。


「なあ母さん。俺さっきまで学校いたのに家のベッドで寝てんの?」

 リビングのドアを開けるのと同時に大きな声で訪ねた。

 母親は飲みかけていたコーヒーを一回止めこちらをじっと見つめた。

「学校から電話があったのよ。なんでもアンタが学校で倒れているところが発見されたって。ちなみに見つけたのは木葉ちゃんよ」


 なぜか意味ありげな笑みを浮かべた母親の表情はどこか気持ち悪かった。

 というより大空が倒れている俺を見つけただって?冗談じゃない。俺はアイツに腹ストレートを喰らって倒れたんだぞ。

 そう思うと居てもたってもいられなくなり、そのまま玄関を飛び出した。



「青春ねぇ」

 また母親が訳の分からないことを言っていたが今回も無視することにした。


 俺が、玄関から飛び出し向かった先は、俺の隣の家。


 つまり、大空木葉の家である。


 こいつの家に来るのは一週間ぶりだった。


 あの時は、大空との仲直りのために勢いで来てしまった。もう、そんなことはしないだろうと思っていたのだが、またもや勢いでここまで来てしまった。


 ぜーぜーぜーと息を荒らげながら大空の家のインターフォンを押した。数秒後、大空木葉が「はーい」と甲高い声で家のドアを開け、俺の前に現れた。


 大空と俺の目が合った。

 大空は気まずそうにそっとドアを閉めようとする。


「ちょい待てやっ!」

 俺は、閉まりかけていたドアに手を伸ばしそれを阻止する。


「あ、あら遥斗。げ、元気そうね?どうかしたの」


「お、おう…。お陰様でな」


 大空は俺と目を合わせようとしない。

「話がある」


「ほぇっ!?」


「公園かどっか行くぞ」


「う、家でいいわよ。外行くの面倒くさいし…」

 う、家で良いってお前…。いくら話があるって言っても普通に可愛い女子の家にお邪魔するのはいかがなものなんでしょうかね?


 そんなことを思いながらも俺は、特に何も言うことなく大空の家に上がることにした。


 大空の部屋はいかにもザ・女子というような印象を受けた。部屋の内装は清潔極まりないと言っても過言では無かった。


「お、お前。俺が倒れてるところを発見してくれたんだって?」

「え?何?お礼を言いに来てくれたの?」


「んな訳ねーだろっ!!」

「て、ですよねぇ」


苦笑いしながら大空は答える。全くだ。お前のせいで気を失ったんだぞ。何で俺が礼を言わなきゃなんないんだよ!


俺は、心の中でそう思いながら大空の目を見つめる。


「お前、友達欲しいんだろ?」

小さく頷く大空。


うつむいた彼女の表情を見ていると、何だか手を差し伸べたくなってきてしまう。反則だ…。


「分かった。分かったよ…。お前に協力してやる」


折れたのは俺の方だった。


「俺も友達少ない方だからな、これをきっかけに交友の輪を広げるのも良いかもしれないし」


大空の目は光輝いていた。こんなことを思うのは、駄目かもしれないがコイツ可愛いかも…。


「本当?遥斗ありがとう!!」

「しゃーねーな」


本当は怒りに来たはずだったのに、全然怒れなかった。これじゃあ本末転倒だ。



どうやら、まだまだ俺と大空は行動を共にしなければいけないらしい。

こんにちは水崎綾人です。

孤立していた木葉に救いの手が!これからどうなっていくのかお楽しみに!

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