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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第7章「揉め事と発表とクリスマス」
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第44話「いざ、発表会へ!」

 バタンと薫先生の車のドアを閉め、俺たちは『春ノ山中学校』の正面玄関を入っていった。


 そこには、ちょうど先週見た事務室のおじさんがいた。


「すみません、今日来る予定だった『緑ヶ丘高校』のものですが」

「はいはい」


 と言って、鍵を持ってこちらにやってくる。

 おじさんは、俺たちをまた応接室にとうして、ここで待っていてくださいとココアを置いて出て行った。


「ココアを出してくれるなんて、気前のいい学校ですね」

 雅がカップを持ってそう言う。



「それにあのおじさんも優しそう。昔からそうだったんですか?」

 俺の方を見て雅が言う。

 何このデジャヴ。ちょうど先週も聞いたような。


「いいや、分かんないよ。俺が在学中の時には居なかった人だからな。きっと入れ替わりで来たんだろうさ」


 しばらくすると、大門先生が入ってきた。

「お待たせしてすみません。おやっ、川下。また来ていたのか?」

「先生、先週も言いましたけど俺、奥仲です」

 やっぱり覚えてないよね。うん、うんわかるよ。


「そうか、すまんかった。では、約束通り10時からということでお願いします」

「分かりました」

 薫先生が軽く頭を下げ言う。


 大門先生が一旦席を外してすぐの時だった。

「なんだ、奥仲。完全に忘れられてるじゃないか~」

 にやりと頬を歪ませ、薫先生が楽しげに言う。


「なんすか、その歪な笑顔」

「ふふ~ん」

 何なんだよ一体。もう…。

 刻一刻と約束の時間に近づいてくる。


 俺だけだろうか、緊張がどんどんエスカレートしてきた。実際、何に緊張しているのか尋ねられれば答えられないが、緊張している。

 理由の無い緊張というやつだ。


 そして、約束の時間は確実にやってくる。

「では、お時間ですので移動をお願いします」

 大門先生のその一言で、俺たちは移動を開始した。



      ***



 向かった先は図書室だった。

 ここに来れば思い出すことがある。

 あれは、俺が嘲笑と哀れみを受けている頃のことだった。


 クラスにいても絶対に誰かしらが俺のことを馬鹿にして笑っている。


 どこにいても、どんなときでもそうだった。

 だが、ここ(図書室)だけは違った。ただ純粋に本を読みたい奴らだけが来るこの教室は、俺にとってとても心地よいものだった。

 ここだけが、俺が登校してから唯一心を落ち着けられる場所だったのだ。


 だから、ここ(図書室)は、俺にとっての中学校生活そのものと言っても過言ではない。

 


 俺たちは前に出て、発表を始める準備に取り掛かった。

 パワーポイントの動作を確かめたり、最終練習として、各自念仏のように口ずさんだりしている。


 だが、俺は、俺だけは、図書室を、その俺の中学校生活のすべてをただ眺めていた。

「どうしたの?」

 木葉が、練習がてら聞いてきた。


 説明するのも時間が必要なので俺は、「はんでもない」とだけ言い練習を始めることにした。


 少しすると、中学3年生が列になり図書室に入ってくる。


「うわ~綺麗なお姉さんたちだぁ…って男が一人だけいる変なの~」


 うっせ黙れ、ガキ。


 中学生の発する声に少しながらぼやきつつも、その光景を比較的優しい笑顔で見送る。

 全員が入り終わりいよいよ、発表が始まる。

――さあ、始めますか――


「それでは『緑ヶ丘高校』の生徒さんからの入試対策についての発表です。お願いします」

 学年主任の先生が軽く前フリをし、俺たちに話を振る。


「はい、皆さんこんにちは。これから『入試対策』について発表します」

 雅が話し出す。


 雅の話スキルは目を見張るものだ。よって、雅が適役だと判断したため、メインは雅となったのだ。


「それでは、ただ『入試対策』とだけ言うのもあれだったため、3つの観点に分けてみました」

 俺は、すかさずパワーポインターを操作する。


 パワーポインターには

〇高校の特色・校風

〇入試対策

〇先生・生徒の印象

 と表示された。


「では、まず最初の観点の『高校の特色・校風』についてです」

 と、静夏にマイクを渡し、静夏か登壇した。

「はい、まずは『高校の特色・校風』についてですが、こちらを見てください」

 再びパワーポインターを操作する。


 静夏が台本通り完璧に話進めていく。予定通りの時間で言い終わり、継いでの入試対策の担当の雅に代わる。


「続いてですが、『入試対策』です。こちらを見てください」

 俺は、流石に慣れた手つきで操作し、順番通りの画面を出す。


「入試についてですが、入試本番は3月8日となっております。この時期になると、もう志望校が決まっていると思います。そのどの高校にも言えることですが、やはり、一番の対策というのは『勉強』となります」


 生徒たちは拍子抜けした顔をしていた。

 そりゃそうだろう、と思っているはずだ。だが、俺たちが言っている『勉強』とは単にガリガリやるだけではないのだ。

 続けて、雅が喋り出す。


「しかし、ただ一色単に『勉強』というのでは無く、ここから先必要なのはより効率よくやるかということです。入試というのは、学校の定期試験ではありません。不得意な教科があるならば、得意な教科で挽回すればいいのです。よって、苦手教科克服というのでは無く、得意教科を伸ばすことが必要と言えるでしょう」


 そこで、俺はパワーポインターを切り替える。


 切り替えた画面は、過去5年分の入試の教科別得点の推移だ。入試課のおじさんに行ったら快く見せてくれた。


 それをグラフ化し、まとめたものがこれだ。

「過去5年間の教科別得点の推移です。これを見ると、一番点数が高い教科は理科、逆に低いのは数学となっております。これによって何が分かるかと言うのは、言うまでもありません」


 見わたすと、分かっていないような顔をした生徒も何人かいるようだった。

 だが、それが分からないんだったら、ウチ(緑ヶ丘高校)を受験するのは辞めておいたほうが良い。


 まあ、このグラフから読み取れるのは簡単なことだ。うちの学校は公立校じゃない。私立高だ。ということは、学校が問題を作っていることになる。


それも過去5年と言う過去問に近いほどのデーターを出している。


すなわち、このデーターから分かるのは、うちの学校は比較的、理科(・・)が簡単で点数が取りやすく、数学(・・)が難しく点数が取りにくいということが分かる。

 その後も、雅が完璧に話し終え、最後の『先生・生徒の印象』の担当の莉奈先輩に代わった。


「え~っとですね。『先生・生徒の印象』についてお話します――」


 莉奈先輩の話も、滞り無く終わり、少しのトイレ休憩になった。時間として15分程度だろう。


 だが、そんな僅かな時間でも俺たちの疲れを取るには十分な時間だった。

「はあ~。ようやく一段落したな」

「そうだね~」


 と、特に何もしていない木葉がいう。

 まあ、それ自体はいいのだ。あまり発言をしなかった分、荷物運びを頑張ったのだから。

「あっ。もう少しで皆帰ってきますよ」

 雅が時計を見ていう。


 さてと、っと腰を上げ、それぞれ用意された椅子に座った。


 図書室のそれぞれの場所に5つの椅子が備え付けられている。


 そこに各自座り、生徒が来たら答えるというものだ。


 あと、1分で始まる。

 そしてチャイムがなると同時に生徒が入ってきた。


 ここからが、俺の働き時だ。

 幼稚園訪問に行った時には考えられないほど、俺の周りには生徒が座っていた。

「えっと、何か質問がある人いるか?」

 聞くと、あちらこちらで手が挙がる。

 俺はランダムで当てる。

「じゃあ、そこの後ろから2番目の人」

「はい」

 と、真面目そうな男子生徒が立った。あらかじめ用意していたのか、実にスラスラと質問文を言った。


「入試対策について質問なのですが、奥仲さんは具体的にどういうことをしたのですか?」


 とてもいい質問だ。他人の勉強方法を盗むというのは誰もがやることだ。


 だが、誰もがやること故に間違った解釈をする奴もいる。他人が成功した勉強方法を自分も真似をすれば出来ると思っている。が、そんなことは不可能に近いのだ。


 なぜなら、人それぞれ性格が違うように、その人に合った勉強法があるならば、それが他人に通ずるということはまず無いからだ。


 必要なのは、他人の勉強法を聞き、それを自分なりにどう改良していくかだ。


「それって勉強法ってことでいいのか?」

「はい」

 やっぱり勉強法についてか。


「俺がやった勉強法は簡単だぞ。覚えるまでひたすら問題を解いた。それだけだよ」

「あ、ありがとうございました」

 周りからは「そんなんで緑ヶ丘行んるの?」と呟いている声が聞こえる。


 うっせ、中2から勉強しかやることなかったからな。友達いなかったし。

「他には?」


 また手がどんどん挙がる。

 さて、(さば)いて行きますか。



     ***



 あと10分くらいで終わりと言う時だった。

 最初の頃にいた本気で緑ヶ丘を受験しそうな奴らはどんどんと他の部員の方にも情報収集に向かった。


 だが、今俺の周りに残っている奴は明らかに緑ヶ丘は受験せず、ぞれどころかただ時間つぶしで座っているような奴らばかり残っていた。


「質問……ないのか?」

 ダメ元で聞いてみる。

 帰って来るのは返事では無く視線。それもかなりドスが聞いている。


 たかだか中学生の段階で不良を語られると片腹痛い。そういうのを見ていると子供がダダをこねているだけに見えてしまうのだ。


 なぜ、昔の俺は同級生の不良(笑)を怖がっていたのか点で分からない。


 だが、お調子者みたいなやつが唐突に手を挙げたのだ。


 何かと思って聞いてみると

「あの~奥仲さんは~、なんつうーか、他の部員さんとは~どういう関係なんですか~?」


 周りにいた、どうしようもなさそうな女子たちも「それ、気になる~」と言って、お調子者をはやし立てる。


 はぁ…子供だな。

「別に、ただの部員だよ。それがどうかしたか?」

 お調子者は下がらない。

「ぶっちゃけ~、皆結構可愛いじゃないですか?付き合ったりしないんですか?」

「あのな、今そんな質問必要か?」

「あ、俺緑ヶ丘行かなんで」

「ほう、どこ志望よ?」

「佐野高っす」


 佐野高校。

 あそこはそんな良いもんじゃない。

 例えるなら、問題児をしまっておく監獄、檻のような学校だ。最も、通っている生徒はそんな気はしていないようだが。


 なぜなら、自分たちのやっていることを理解していないからだ。なんでもかんでも楽しければいいとしか考えていない。周りからどう見られているのかを分かっていない哀れな連中の巣窟。


 この俺から見ても哀れだと思うのだから、もう仕方がない。


「もう決定?」

「まあ、志望の段階っすけどね」

「だったら止めておいた方が良いんじゃないか?」


「なんでっすか?」

 俺は、さっき思ったことを説明した。

 自然とお調子者の顔からは生気が消え、青々としていた。


「だからさ、止めておいた方が良いんじゃないか。それに多分、後輩出来るまでパシられまくって大変だと思うぞ」

 と、俺が言いかけた時だった。


 お調子者の隣にいた髪を金髪に染めて、いかにも俺不良やってます系男子がいきなり行ったのだ。


「なあ、少し黙れよ」

「うん?」


 そちらに目をやると、金髪もこっちを見ている。


「なあ、俺も佐野高なんだけどさ。なに馬鹿にしてくれちゃってるわけ?俺も志望してるんだけど」


「いや、別に馬鹿にしてるわけじゃない。ただ、前情報を教えてやってるだけだ」

 金髪は、少しずつ近づいてくる。

「なあ、俺はよ。てめえみたいなやつが大っ嫌いなんだよ。なあ」

 金髪はいよいよ俺の正面までやって来て椅子に座った。


 女子たちは「あ~怒っちゃった~」など、禁忌に触れてしまったように、俺を蔑んだような口調で言った。


「今、俺のことが嫌いとか関係無いだろ?」

「はあ?うぜーな。マジでキモイな」

 俺は、中学校の時は比較的ぼっちだった。


 そのため、心の中での愚痴は日常茶飯事。口喧嘩では負ける気がしない。

「そうか、確かに俺は馬鹿にしてたかもしれない――」


「はっ、今更ビビって謝んのかよ」

 周囲が、金髪に釣られて一斉に笑う。

 冷静になれ、相手は中学生だ。俺が頭ごなしに理屈を並べたところで、聞き入れてくれはしない。

中学生たちは、口々に「ビビってる」など、俺に聞こえる声の大きさで囁く。

所詮は中学生の戯言。そう思ってもやはり辛い。

中学二年生の時を思い出すのだ。この時のバカにされ方は、あの時とは違うが、どこか似ているものを感じる。

どこだろうか?分からないな。

その後、俺は時間終了まで中学生に笑われた。

ものすごく哀れだっただろう。中には、俺を気遣って笑うのを止めるように促している子もいたが、彼ら彼女らの前では、無意味に等しかった。




     ***



 無事、とも言えない中で『入試対策』の講義は幕を閉じた。


 金髪は俺たちが図書室から出るまでずっと睨んでいた。


 まあ、それもそうだろう。出会ってすぐの高校生に自分の志望校の批判を受けたのだから。

 俺たちは部室に戻り、薫先生は言う。


「いや、よくやった。向こうの先生も喜んでいたぞ。これにて、今年の依頼は終了だろう。皆、よく頑張ってくれた。今日はゆっくり休むといい」



 それから、日々は刻一刻と過ぎていった。

 12月22日。終業式を迎え、萬部の活動は冬期休業中は無し、と言うことになった。



     ***



 それから3日が経ったクリスマスの日。12月25日。


 俺は、あまりに暇過ぎてコンビニにでも行こうと玄関に出た時だった。


 隣の玄関から、大空木葉も出てきたのだ。

「あ…」

「あ…」

 不思議とハモったその声は、まさにクリスマスの奇跡とでも言うべきか。

「どうしたの?遥斗」

「いや、コンビニにでも行こうかと…お前は?」

 聞くと、


「暇だから、ちょっと散歩でもって思って」

「そうか」

 ふたりの間を静かな空気が流れる。


「じゃあさ――」

 俺が切り出す。


 たまにはこういうことも良いだろう。

「一緒に出かけないか?」

 いきなりのことだったのか、木葉はビックリした顔をしている。


「う…うん…」

 俺たちは、クリスマスの綺麗でもあり、寂しげのある道を並んで歩いた。



     ***



 神ケ谷市の都市部はとても綺麗な装飾が施されていた。


「うわぁ…綺麗」

「ああ、そうだな」

 ポケットに手を突っ込み、反応する。

「でも、どうして誘ってくれたの?」

 木葉が俺に聞く。


「え?ああ、いや…この前俺がボコられた時にさ、最初にかばってくれたからそのお礼と言うかさ」


「そ、そうなんだ」

 再び装飾を見上げる木葉。

 いつもの彼女とは違う無防備さが、俺の心臓の鼓動を速くした。


「っていうのは建前で…なんつーか、その…木葉と出かけてみたいなって思ったんだ」

「えっ…」


 やべっ、しまった。誤解されたかも。

「いや、俺たち幼馴染みなのによく考えたら、そんなに一緒じゃなかったなって思って」

「ああ…」

 小さく頷いて見せる木葉の顔には、不思議と笑っているように見えた。


「思い出の続き――」

「は?」

「作ってくれるんでしょ?」


 木葉は腕を後ろに組んで、いたずらに俺をみる。

「ああ、作ってやるよ」

 ――思い出の続き


 それは、俺が木葉に言った言葉だ。この言葉に嘘はない。

「じゃあ、来年もよろしくね!遥斗」

 木葉の俺を見る瞳はどこまでも美しかった。


 クリスマスの木枯らしが、俺たちの身体をすり抜けていった。

 

こんにちは、水崎綾人です。

実際に書いてみると難しく、頭の中で思い描く描写がうまく書けずに悩んだものです。文章も拙く、自分で読み返していても恥ずかし話もありました。でも、そんなことも自分のレベルアップのためと思えばいい薬みたいなものです。感想を頂いたときは本当に嬉しかったです。


水崎綾人でした。

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