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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第7章「揉め事と発表とクリスマス」
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第38話「静夏が静かに入部する」

「――ッお前」

「遥斗。来ちゃった」

 会議室に入った先で俺たちを待っていたのは、花見静夏だった。


 とういうことは、必然的に入部を希望する人間は静夏だと言う事になる。

「おお、花見じゃないか」

 薫先生は右手を上げ、挨拶軽く挨拶を済ませた。


「はい」

 そう言うと、カバンの中から、綺麗に閉じられたファイルを取り出し、その中から一枚の紙を取り出した。

――入部届け


 そう、俺は思った。俺の予想は的中し、静夏は薫先生のもとへ小走りで駆け寄り、手に持っているそれを差し出した。

「入部届けです。あ、あの、よろしくお願いします」

 薫先生は「おう」と片手で入部届けを受け取り、続ける。


「じゃあ、明日から部活に来てくれ。それと、部室の場所は奥仲や大空に聞くといい」

「分かりました」


 綺麗な声でそう返事をした。だが、俺は思う。そう言えばこいつ文化祭当日に勝手に部室入ってたよな。じゃあ、部室の場所知ってんじゃね。

「よし、では以上だ」

 そう言うと、薫先生は会議室をあとにした。「君達も早く帰るんだぞ~」と言い残して。


 薫先生が去った会議室の中には少しの沈黙が流れた。


 互いに何を話したらいいのか分からないのだ。

 木葉と雅は床の方を見、静夏は時計を見ている。


 早く帰ればいいのだが、そうもいかない。特に俺には、静夏に伝えなければいけない用事がある。


 俺をこの沈黙の空気の中で切り出すというのはなかなかの勇気が必要だ。


 11月下旬は日が沈むのが早い。これはもう、冬と言う季節に分けられる。それも、17時という時間ともなれば、夕日が顔を出し、もう月が出てもおかしくない地域すらある。


 今日の夕日が神ケ谷市を包み込む。それは、例外なく俺たちのいる学校も包む。

 もうじき、日は完全に沈み、夜が来る。そうすれば、新しい明日に向けての準備が必要になる。


 今日出来なかったことは、また翌日、翌日とどんどんと次の日に引き継がれるのだ。


 つまり、今俺が静かに伝えなければいけないことも、今伝えなければ、半永久的にいつかの明日に引き継がれるのだ。


 その度に、こんな沈黙が流れるのは、身体に悪い。


 だとすれば、今俺が取るべき行動は一つのはずだ。


 そうと心に決め、俺は沈黙を破り静夏に話しかけた。


「なあ、静夏。ちょっといいか?」

「いいよ」


 静かに放たれた彼女の言葉の端にはどこか、含みものがあったように感じた。それがなんなのかは俺には分からない。


「じゃあ、ちょっと」

 会議室の扉を開け、廊下に出るように促す。

 静夏は何も言わずに会議室から出る。木葉たちも何か言いたそうな顔をしていたが、それ以上は無かった。


 俺たちは、会議室を出てすぐの曲がり角で話すことにした。


「それで、話って何かな?」

「……それは」

 いざ話すとなるとやはり緊張する。静夏への恐怖心は俺の心の持ちようで大分改善はされた。だが、やはりどこか引っかかるのだ。

「俺が言いたいことは2つある」

 うんうんと静夏は頷いてみせる。


「まず1つ目。お前はなんで萬部に入ろうと思った?」

「そんなことか~」

 と、手を後ろで組み、おどけてみせた。


「それはね。一言で片付くよ」

「え?」

 言っている意味が理解できず、思わず聞き返してしまった。


「勝てないから」

 静夏の口からは、俺の予想をはるかに上ままる言葉が発せられた。正直、ますます理解できなかった。一体、何に勝てないというのだろうか。


「じゃあ、2つ目だ。俺は、お前に言わなくちゃいけないことがある――」


 これが、俺の本題だ。この答えをいうのにずっと抵抗があったのだ。


 もしかしたら、中学の時の繰り返しをやる羽目になるのではないかと…。だが、言わなければ始まらない。


「俺は、お前とは――」

 俺が言いかけた時だった。静夏が、右手を突き出し俺の言葉を制したのだ。

「い、言わなくていいよ」

「いや、でも」

 静夏はそっと顔を背け、続けた。


「だから言ったじゃない。勝てないから萬部に入ったのよ。今のままじゃ勝てないから」


 夕焼けの闇に消え入りそうな彼女の声は、俺の耳に全ては入ってこなかった。


「お前は…一体誰に勝とうとしてるんだ?」

「分からないならいいよ」


 そう言って、静夏は会議室の方へ走り去って行った。


 俺も、少しして会議室に荷物を取りに向かって、その日はそのまま家に帰った。




「たでーまー」

 無気力な声で、一応家に自分が帰ったkとを伝える。


 すると、妹の楓が何やら奥の方から変な視線でこちらを見ている。何をしてるんでしょうか…?


 俺は、気にしたら負けだと自分自身に言い聞かせ、楓のいる方にはあえて向かわず、いつも通りリビングに向かった。

「あら、おかえり遥斗」

 母さんが台所で夕飯を作りながら、俺に言う。

「ああ、ただいま」

 その間も、楓の視線は俺に向けられたままだった。何やってんだよあいつは。


 夕飯を作っている母さんの隣に歩み寄り、楓に聞こえないような声でそっと、聞いた。


「なあ、楓どうしたんだよ。さっきから」

 母さんは「そのことね」と言うと、楓に聞こえないくらいの声で俺に耳打ちした。


「あんたが幼稚園訪問に行ったって話をしたら、ずっと拗ねてるのよ」

「なんで?」


 さっぱりわからんん。

「楓曰く、幼稚園で可愛い子供たちと触れ合ったら、もう自分が可愛がってもらえないと思ったらしいのよ」

「な、なんだそれ…」

 俺は、ちらっと楓の方を向き、また戻った。


「俺、部屋行ってくるわ。飯なったら呼んでくれ」

「今晩のメニューはカレーよ」

「うーい」

 そう言って、俺は自室に向かった。階段登ってる際も楓の視線は俺に注がれていた。


「どうしろってんだよ…」

 明日もあるのだ。楓にばかりかまけている訳にはいかない。


 それより問題は静夏の方だ。少なくとも、入部した以上、今までより接する機会は多くなるだろう。それは、それでいいのだが、何かこう、引っかかる部分があるというか。


 俺に申し訳なさそうな感じだと言うか。気まずいと言うか。


 俺は、制服を脱ぎ部屋着に着替えベッドに横になり考えた。


 考え出した答えは分からないの一点張りだった。今までも、こんな風に考えて来たことはあったが、静夏の場合は俺から友達になるとたんかきっておきながら、なにかしている訳ではないのだ。


 あいつがどうして申し訳なさそうにしているのかが分からない。もし、中学のことを思っているならそれは、許したのだからいつまでも引きずっていては、こちらが接し方に困るというものだ。


『ごはんよ~』

 という声もしたところで、俺の模索は終を告げた。


 よし、今日は飯食って風呂入って寝よう。



 そうすれば、また明日がやってくるのだから。


こんにちは水崎綾人です。

第6章の引きとして静夏が萬部への入部を果たしました。これで萬部は5人となりました。え?誰がいるかだって?それは、遥斗、木葉、雅、静夏、莉奈先輩ですよ。そうそう、莉奈先輩と言えば、そろそろ修学旅行も終わって帰って来る頃じゃないですかね~。

連日更新は今後難しくなって来ると思われます。申し訳ございませんが、1週間に1話の更新は頑張ります。気ままに更新することが多いと思うので、たまに連日更新というのはあるかもしれません。

更新した際にはTwitterの方でも、お知らせします。『水崎綾人』と検索をかければ恐らく私のTwitterアカウントが出てくると思うので、興味のある方は是非。

では、次話もお楽しみに!


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