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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第6章「そして俺たちは幼稚園児たちと接する」
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第36話「幼稚園2日目」

 次の日。俺たちの仕事は再び幼稚園児たちと触れ親しむことだった。


 やはり、なぜか園児たちに避けられてしまう。なんでだろう…。


 俺は、軒下に視線を放った。

 そこには、やはり昨日のように梨恋(りん)ちゃんがいた。俺は昨日決めたことがあった。梨恋ちゃんが仲違いをしている相手の(まい)ちゃんと仲直りをさせるということだ。


 俺は、梨恋ちゃんの元に歩み寄り、彼女の隣に座った。

「やあ」

 言うと、梨恋ちゃんも今日は俺の言葉にすぐに反応してくれた。


「おはよ…遥斗」

 顔を俯かせて地面を見る梨恋ちゃんの姿は昨日とまったく同じものだった。

 少しの間、二人の間には静かな空気が流れた。


 11月の晴れ渡る空、冷たいながらも心地いい風が全身をそっと吹き抜ける。


「舞ちゃん…なんて言ってた?」

 静かに梨恋ちゃんが聞く。

 俺は少しだけ微笑み答えた。


「仲直りしたいって言ってたよ」

 言うと、一回俺の顔を見たが、また地面に視線を戻してしまった。

「どうしたの?」


 すると、梨恋ちゃんは静かに口を動かした。

「だって…、仲直りの仕方が分からないんだもん…」


 決定的なことだった。仲直りの仕方。これを完璧に知っている人間だなんているのだろうか。もちろん、俺だって完璧に仲直り出来る方法だなんて知らない。


 まず、喧嘩するくらい本気になった奴というのがいないというのが最大の問題なのだが。

 これには困ったことに、俺はなんと答えていいのか分からなくなり、うまく答えられなかった。


 頭の中で答え方を模索している最中、俺の視界にはブランコに乗った一人の少女の姿が入った。


 そう、末田舞(すえだまい)。舞ちゃんだ。

 彼女も昨日と同じような表情をしてブランコに乗っていた。

「……っ」

 そうだ、梨恋ちゃんにばかり気を取られていたが、悩んでいるのは舞ちゃんもじゃないか。


 俺は「ちょっと、ごめん」と梨恋ちゃんに言い残し、ブランコの方へと向かった。

 ブランコの周りには枯葉が落ちており、どこか寂しい感じだった。まるで舞ちゃんの心を表しているようだった。


「や、やあ」

 梨恋ちゃんに声をかけた時と同じように、舞ちゃんにも声をかけた。

「……お兄ちゃん?」

 切ない視線をこちらに向けられた。それは、幼いころの楓が、母さんに怒られた時などによく見たものと似ていた。

 俺は、舞ちゃんの隣の空いているブランコに腰を掛けた。


「舞ちゃん。仲直りしたいんだよね?」

 コクリと静かに頷く。


「じゃあ、や――」

 言いかけた時だった。突然、木葉に呼ばれたのだ。


「あ、いた遥斗。美代子先生が荷物運ぶから手伝ってって」

「ああ、分かったよ。じゃあ、また後で舞ちゃん」

 舞ちゃんは何も言わずにただ頷くだけだった。




 美代子先生に案内された場所は、倉庫のようなところだった。

「これから何をするんですか?」

 雅が聞いた。


「はぁい、実はですね。先日お遊戯会があったんですけれど、その大道具をしまわなければいけないんです。なので、それを手伝って頂けないかと思いまして」


 美代子先生は、申し訳なさそうに、弱弱しくそう言った。


 なるほど。お遊戯会か懐かしいな。でもこの先生もうちょっと堂々としたほうがいいんじゃないかな?


「体育館のステージに大道具はしまっていますので、そちらの方からこの倉庫に運んでください」

 

 

 ステージに行くと、どれもこれも可愛い造形をしていた。

 明らかにダンボールで作った草木、『おおきなかぶ』でもやったのかかぶらしき白くて大なものまで転がっていた。


「うわ~。これは地味に大変そうですね。遥斗くん、木葉ちゃん」

 俺たちは静かに頷いた。

 俺と木葉、雅はそれぞれ協力して大道具を運んだ。体育館から倉庫までは少しの距離がある。


 それを、いくら幼稚園児が使うようなサイズの大道具だからと言ってもやはり大きいので運ぶのはそれなりに苦労した。


 俺が、おおきなかぶを肩に担いで運んでいると、舞ちゃんの姿が見えた。


 舞ちゃんは、先ほどとまったく変わらない様子でブランコに乗り、地面を見ていた。


「舞ちゃん…」

「こ~ら」

 コツンと俺は頭を誰かに叩かれた。

「おお!」

 いきなりのことに驚き振り返ると、そこには木葉がダンボール箱を両手に抱えこちらを見ていた。


「さぼんないの!」

「いや、別にサボってるわけじゃなくて…」

「じゃあ、なんなの?」

「えっと…」

 なんと答えたらいいのか分からなくなり、言葉を詰まらせてしまった。


 その間も木葉は俺の方をじっと見つめ続けてくる。こういうのは、心臓に悪い。木葉には慣れたと言っても彼女が美形であることには変わりないのだ。やはり見つめられるとドキドキするものだ。


 こういうのって他人に話すべきなのかと俺の頭の中では梨恋ちゃんと舞ちゃんのことを木葉に話すかどうかを考えていた。

「ううん。なんでもない、悪い」

 俺は再びおおきなかぶのかぶを運び直した。

「遥斗…?」



 かれこれ2時間かけてやっと全ての大道具を倉庫にしまうことができた。

「ふ~。疲れましたね」

 雅が額を拭う仕草をしながら言った。その姿はまるで工事現場で働くおじさんみたいだった。


「ああ」

 雅の言葉に同意した。

「ありがとうございます。皆さんのおかげで早く片付けることができました。さあ、お昼にしましょう」


 もうそんな時間かとポケットから携帯電話を取り出して時間を確認した。携帯の時計は12時37分を指していた。

 もう、立派なお昼時だった。



 『チューリップ組』の教室に戻り、おエレたちは園児たちと適当に混ざり昼食にすることになった。


 何故だか、今回は園児たちに嫌われていなく、逆に「遥斗お兄さん、こっち来て」とせがまれるまであった。それも、女の子の園児にだ。


 俺が、招かれた園児たちの班には木葉も同席していた。


 木葉いるなら俺がいる意味なくね?

「遥斗ってロリコンだったの?」

 冷たい視線で俺を見てくる木葉。

「違う、違う。小さい子は好きだけどロリコンじゃない」

 あらぬ誤解をかけられて冷や汗をかいてしまった。おお、暑い暑い。

 よく見ると、そこには本当に女の子の園児しかいなかった。


 園児たちはわいわいとおしゃべりをし、とても楽しそうだった。

 しかし、この中から将来ビッチみたいな奴が出ると思うと何とも複雑な気持ちになった。

「ねえねえ、お兄さん?」

 と、一人の園児が俺に話しかけてきた。


 なんだろうかと俺が、そちらに振り向くとクスクスと数人の園児が含み笑いをした。

 何とも、異様な感じを受けた。何俺、幼稚園児にまでからかわれてんの?

「お兄さんと、木葉お姉さんって恋人同士ですか?」


「――っ」

「ん――なっ」

 予想外の質問に箸でもっていたウインナーをポロリと落としてしまった。

「…まっ――」

 俺がそれはない、と言おうとした時だった。

「そんなわけないよ~」

 ものすごくおかしなイントネーションで木葉が否定した。木葉…さん。発音ヤバイですよ?


「え~そんな訳ないよ~」

 園児たちはまだ、イジリ続ける。木葉の顔はなぜか赤くなっており、目が必死だった。

 木葉が明らかに面白い反応をするので、園児たちも面白がり、さらに木葉をからかった。

 その頃には、俺には話題も振られず、集団ぼっちみたいな感覚だった。


 はぁ、とため息を一つつき、弁当を食べることに専念した。


 すると、肩をツンツンと誰かにつつかれた。

 今度は何か?と思いつつかれた方を振り向くと、そこには意外なことに春元梨恋ちゃんがいた。


 予想外の人物に俺は、たじろいでしまった。

「ど、どうした?」

 優しく彼女に聞いた。

「ご飯…食べよ?」

 小さい梨恋ちゃんの声は俺の耳にしっかりと入った。


「分かった。じゃあ、梨恋ちゃんの席にいこっか」

「……うん」

 コクリと頷き、俺たちは席を移動した。



 梨恋ちゃんの席につき、弁当を広げた。

 なぜ、俺を誘ったのかは分からないが、さっきの場所には正直いるのが辛かった俺は、素直に嬉しかった。


「えっと、誘ってくれてありがとう」

「ほぇ…あ、うん…」

 お弁当箱を眺めながら返事を返してくれた。



 その後も、他愛もない会話が続いた。予想外のことに話していくにつれて梨恋ちゃんは元気になっていて、昨日と今日の歯切れの悪い口調は無いように感じた。

 美代子先生が手をパンパンと叩き昼食終了の合図を出した。それに合わせ、俺たちは『ごちそうさまでした』と挨拶をして昼食は幕を閉じた。


 その後、俺たちに与えられた仕事は、園長先生と一緒に来月にこの幼稚園で行われるクリスマスパーティーのポスター作りだった。

 始めて合う園長先生はどんな人なのかと期待に胸を躍らせながら、俺、木葉、雅の三人は職員室に入った。


 職員室前まで来ると、ドア越しに薫先生の声が聞こえてきた。

『おじさん、今度餃子安くしてよ~』

『ダメだよ薫ちゃん。こちとら客商売なんだから特別扱いは出来ないよ』

『ケチ~』

 なな何なんだこの会話は…。薫先生は幼稚園の職員室で何を話しているんだ。そう言えば、始めてこの幼稚園の職員室に入ったときは先生は全員女の人だったような…。ということは今薫先生が話しているのは園長先生!?


 だとしたら、薫先生は恐ろしく肝の据わった人だ。この幼稚園の最高権力者にケチと言えるのだもの!


 俺は、ゆっくりと職員室のドアに手を伸ばし、そのドアを開いた。

「し、失礼します…」

 俺たちの目に広がった光景は、何とも言えないものだった。


 ラーメン屋の格好をしたおじさんが薫先生と話していた。

 しかも、そのおじさんはなぜか園長先生の椅子に座っていた。

「おお、来たかお前たち」

 薫先生は俺たちに笑いながら声をかけた。

「先生…あの、園長先生っていうのは…えっと…」

 雅が力なくく尋ねると、薫先生はうんと首肯してこういった。

「あそこの椅子に座っているオッサンが園長先生だ」


「いや、オッサンって…」

 目の前に本人がいるのにオッサンと呼べる薫先生が大きく見えた。

「ふぉ、ふぉ、ふぉ」

 かすれた声で笑い出すおじさんがこちらに歩み寄って来る。ラーメン屋の格好で。

「というかなんでラーメン屋の格好?」

 木葉が言うと、おじさんはそれを待っていたかのように答えた。


「ラーメンは趣味じゃ」

「……」

 ?と、俺たち三人の頭の上にクエスチョンマークが出た。

「…しゅ、趣味ですか…?」

「そうじゃ」

 張り切っていっているが、やはり意味が分からなかった。ラーメンが趣味だからラーメン屋の格好をするというのは、これは新手のコスプレイヤーという認識でいいのか?


「ああ、そうなんだ。このオッサンは自営業でラーメン屋を営んでいる正真正銘のこの幼稚園の園長でありラーメン屋の店長でもある」


 窓から入り込んできた日光に顔が照らされ、どことなく仙人という感じを受けた。

「でわの、早速ポスター製作に取り掛かるとするか」

 そう言って、戸棚から画用紙とカラーペンを出してきた。


「その画用紙にペンでクリスマスパーティーに来たくなるようなポスターを作ってくれ」

「分かりました」

 これから、俺たちのポスター書きが始まった。


こんにちは水崎綾人です。

最近少しサボりぎみだったので、久々の更新です。一応、まだ続くので次話もお楽しみに!

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