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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第6章「そして俺たちは幼稚園児たちと接する」
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第35話「静かな園児」

 美代子先生に連れられて向かった先は、『チューリップ組』と書かれたクラス札のかかっている教室だった。


「では、このクラスで今日から3日間園児たちと触れ合ってもらいます」

「「「分かりました」」」


 俺たち3人は声を揃えてそういった。

 教室内では、園児たちがクレヨンで思い思いに画用紙に絵を書いていた。なんか本当に幼稚園って感じだよな。


「はーい、聞いてくださーい」

 美代子先生がか細いながらも通る声で、手を叩きながら園児たちに呼びかける。


 園児たちは、美代子先生の声に「なーに」「どーしたのー」など口々に言い出した。

 それにも負けず、美代子先生は続けた。

「今日は、みんなと遊んでくれるお兄さん、お姉さんを紹介します」


 クラス中の園児たちが一斉に叫びだした。どうやら、一応は喜ばれているらしい。

「じゃあ、お兄さんお姉さんに入ってもらいましょう。どうぞ」


 その声を合図に俺たちは『チューリップ組』に入った。


 正直、ものすごい緊張が走った。幼稚園児相手でも緊張はするのだ。

「はーい、ではお兄さんたちに自己紹介してもらいましょう」


 自己紹介など考えていなかった俺たちは、硬直してしまった。じ、自己紹介なんれ考えてなかった…。


 だが、いつまでもそんなことを思っている場合ではない。園児たちの目もこっちに向いている。早く何とかしなければ…。

 俺は、ゴクリと生唾を飲み、自己紹介に臨んだ。


「え…えっと。お、奥仲遥斗です。緑ヶ丘高校の1年生です。これから3日間よろしくお願いします」


 緊張に包まれた俺の自己紹介は、園児たちの暖かい拍手によって幕を閉じた。

 続いて、木葉、雅と自己紹介をした。これも園児たちからの暖かい拍手で幕を閉じた。

 自己紹介も済んだところで美代子先生が、手をパンと叩いてか細い声で次へと話を進めた。


「じゃあ、お外で遊ぼうか」

 園児たちは「はーい」と元気な声で言うと、みんな一斉にクラスのドアを開き、外へ走り出て行った。


「す、すごいな…」

 園児たちの元気さに圧倒されてしまった。

「では、行きましょうか」


 美代子先生に促されて、俺たちも外へ出た。

 そこには、思い思いに砂場、滑り台など様々な遊具を匠に使い、楽しんでいる園児たちの姿が目に映った。


「皆さんは、これから自由に園児たちと触れ合ってください」

「自由に触れ合うって…、それだけで良いんですか?」


「はい、それだけでも園児たちには、幼稚園以外の人との接し方が学べると思うので」

「なるほど」

 俺たちは、頷き納得する。

 意を決して俺たちは、園児たちのもとへ歩み寄って行った。


 俺が園児たちのもとへ行くと、なぜか園児たちは俺を避けてどこかへ行ってしまう。そこまで、園児に嫌われているのかな…。

 めげずに園児たちのもとへ向かい続けること1時間。


 俺がまともに関わりを持てた園児は0人。つまり、誰とも関わりを持てなかったのだ。

「はぁ…。園児に嫌われてるのかな…?」

 クタクタに疲れた俺は、日陰で休もうと軒下に向かった。


 すると、俺の向かう先には先客がいた。

「えっと…みんなのとこ行かないの?」

「……」


 その園児は答えようとしない。

 答えたくないときは答えない方が良い。また、それをしつこく聞かない方が良い。これは俺の持論だ。


 だから、俺は何も聞かずにその園児の隣に静かに腰掛けた。


 それから何分たったのだろうか、俺と園児の間には沈黙が続いた。


 だが、その沈黙は突如として破られた。

 園児の方が口を開いたのだ。

「ねえ、お兄さんの名前は…?」

 透き通るような綺麗な声だ。俺にはロリコン属性はないのだが、この声には自然に萌えてしまった。


 俺の名前さっき言ったんだけどな…

 俺は苦笑いしながら、答えた。

「奥仲遥斗って言うんだ。遥斗でいいよ」

「お兄さんはなんで幼稚園なんて来たの?」

「え?部活なんだよ」

 空を見ながら答えた。


 俺もその園児に質問をした。

「えっと君の名前は?」

「………春元梨恋(はるもとりん)

 綺麗な名前だ。うつむいている彼女の顔はどこか悲しい顔をしているみたいだった。

春元梨恋(はるもとりん)……梨恋(りん)ちゃんね」


 俺と梨恋ちゃんは静かに軒下の日陰で休んでいると、雅がこちらの様子に気づいたようで近づいてきた。


 表情を見ると、うっすら笑っているように見えた。


「ダメですよ遥斗くん。しっかり働いてください」

 声に怒気は無く、叱り立てるようではなかった。


 だが、いつまでも軒下の日陰で自分だkじけ楽をするわけにも行かないため、渋々日陰から出ることを決意した。


「梨恋ちゃん、行こう?」

 俺の呼びかけに梨恋ちゃんは首を左右に振って答える。どうやら、ここから動くつもりはないらしい。


「じゃあ、俺向こうに行ってるから、麻生日においで」


 そう言い残し、俺は雅とともに再び園児たちの元へと向かった。


 なぜか知らないが俺は園児たちに嫌われている節があるため、慎重に接するように心がけた。


 1時間が経とうとする頃には、俺も見事に園児たちに受け入れられたようで、ブランコの勢いをつけるための押し役を任されるくらいになった。


「ふぃー。次は誰かな?」

 もう11月だというのに額からは汗がこぼれ落ちた。園児たちは「はーい」「はーい」と次々と手を上げ、俺は園児たちにモテているような錯覚に陥りそうだった。


 数多くの園児たちの背中を押し、ブランコの勢いを増す役目もある程度終わり、再び梨恋ちゃんのいた方に目をやった。


「流石にもう寒いから、どっかに移動した――」


 俺の目に映ったのは、1時間前と同じ格好をした梨恋ちゃんの姿だった。

 時刻はもうじき14時を迎える。いくら14時だと言っても、今は11月なのだ。寒いに決まっている。


 それも、まだ6歳の幼稚園児がじっと黙って日陰に座っているのだ。寒いに決まっている。


 俺は、梨恋ちゃんのいる軒下の日陰に向かった。


「あ、あの。梨恋ちゃん寒くない?」

 また、首を左右に振って俺の問に答えた。

「そ、そうか…。あっ、隣いいかな?」


 今度は、首を縦に振って答えてくれた。どうやらそれはオーケーらしい。

「でも、どうしてみんなのところに行かないの?」


 梨恋ちゃんは答えようとしない。

 沈黙が流れる。いくら相手が幼稚園児だからと言っても気まずい。


 その時だった、また、突如としてその沈黙が梨恋ちゃんによって破られた。

「けんか…」

「へ?」

 あまりに小さな声のため聞き取れなかった。

 梨恋ちゃんの声は薄い氷のようにすぐに溶けて消えたようだった。


「喧嘩した…の」

「けんか…?」

 梨恋ちゃんは喧嘩したとそう告げた。

 その顔はとても悲しそうな顔をしていた。やはり、俺がさっき思ったことは間違いではなかったのだ。


「な、仲直りは?」

 首を左右に振った後

「してな…い…」

 と答えた。


「そう…か…」

 俺はどうしていいのか分からないくらい混乱していた。まさか、幼稚園訪問して喧嘩をした園児と会話をするだなんて思っても見なかったからだ。


 梨恋ちゃんに返す言葉も思いつかず、ただ前を見るだけの時間が続いた。

 俺が、園庭をただ適当に見渡していた時だった。


 俺の視界に一人でブランコに乗ったまま、特に何をするわけでも無くじっと座っているだけの園児が入った。


「あれは…」

 俺は、梨恋ちゃんに「ちょっとごめん」と言い残し、ブランコに座っている少女のもとへ歩いて行った。


「ちょっといいかな?」

 女子園児は最初疑いの目をしていたが、少しの間だけ待つと、コクリと首を縦に振って首肯してくれた。


「ありがと」

 俺は、女子園児の横のブランコに座った。

「えっと、名前なんて言うの?」

「……」

 返答がない。梨恋ちゃんのときと同じだ。

末田舞(すえだまい)…」


 時間差で答えが帰ってきた。時間差を使うの流行ってんのかな。


「舞ちゃんね。えっと、どうして舞ちゃんはここで一人で居るの?」


 今度の返答は早かった。

 それに、その答えは俺が予想したものだった。


「けんか…した…の」

 やはりか…。もしかしたらこの子の喧嘩した相手っていうのは……。


「えっと、その喧嘩した相手っていうのは…」

「梨恋ちゃん…」

 やはりか。俺の予想通り舞ちゃんは梨恋ちゃんと喧嘩したのだ。


「仲直りはしてないんだよね?」

 また首を縦に振って答えた。

 やっぱり…。仲直りさせた方がいいよな。でも、どうやって…。


 俺の頭の中ではそんなことばかり考えていた。


 だが、その前に一つ確認しなければいけないことがある。

「えっと、舞ちゃんは梨恋ちゃんと仲直りしたい?」

 その言葉とともに舞ちゃんは俺の方に顔を向けてきた。


 純粋という言葉がよく似合うその汚れを知らない瞳で。


「う…ん」

 再び顔を落とし、地面に視線を落とした。

「それだけ聞ければ十分だ」

 俺は、立ち上がって梨恋ちゃんの方へ向かった。


 彼女にも聞いておかなければいけない。両方に仲直りしたいと思う気持ちがあれば、それは仲直りしなきゃダメなんだと思う。

「梨恋ちゃん…。君は仲直りしたいと思うかい?」


 いきなりのことにびっくりしたのか梨恋ちゃんは、目を大きく見開いた。

 そのまま、コクリと首を縦に振った。


「よし…」

 両者が仲直りしたいと思っているのなら、それは自然と仲直り出来るものだ。ほんの少しだけ後押ししてあげるだけだ。


 後押しするためにも、喧嘩の原因を知らなければいけない。俺は、梨恋ちゃんの隣に座ろうとした時――


「はーい、みんな~。中に入ってくださーい。そろそろ、お迎えの時間ですよ~」

 美代子先生がか細いながら、よく通る声で園児たちに呼びかけた。


 園児たちは口々に「はーい」と手を上げ、教室の中に入って行った。


 もちろん梨恋ちゃんも例外ではなかった。ただ、返事をしないだけで後は他の園児たちと同じように、教室に戻って行った。

「あ…」


 俺は、力ない声でそう漏らした。

 すると、何歩か行ったところで、梨恋ちゃんがこちらを振り向き

「また明日…遥斗」

 とだけ言い残し、教室に入っていった。

「呼び捨てか…」


 静かに微笑み、俺はそう呟いた。


 俺たちも、美代子先生に継いで教室の中へ戻った。


 どうやら、これで今日の仕事は終わりらしい。


 明日も仕事が待っている。

 仲直りをさせなければ…。俺の中ではどこかやる気になっていた。


 こんにちは水崎綾人です。

 今日中に更新できそうでよかったです。最近、更新出来てなかったので連日更新ができて素直によかったと思っています。

 さて、遥斗はなぜこんなにも仲直りさせることにやる気なのでしょうか?もうじき明らかになります。是非次話模お楽しみに!

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