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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第6章「そして俺たちは幼稚園児たちと接する」
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第34話「お仕事当日!」

 二日後。

 今日は幼稚園訪問当日だ。二日前、いきなり花美静夏に告白をされていらい俺の心は落ち着きを知らなかった。


 まず今日は昼まではいつも通り学校に行き、昼過ぎからは幼稚園に行く。

 そして、明日からは朝から幼稚園にいくとのことだ。


 手回しが早いことに、薫先生が公認欠席の手続きを済ましておいてくれたため、莉奈先輩を除く俺たち萬部員は何もしなくて済んだ。

 莉奈先輩はと言うと、今日から京都へ修学旅行に行っているのだ。お土産に金閣寺を持ってくると言っていたので元気ではあると思う。



 俺は、玄関を出て出発をした。

 いつもと変わらない道。だが、ふと目をやるとこの時間帯なら当たり前なのかもしれないが、幼稚園児・保育園児が母親に連れられて歩いている姿をよく見かける。


「俺もこんなんだったのかな」

 などと、感慨に浸りながら道を歩いていると後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。

「遥斗~」


 振り返ってみると、そこには俺のおとなりさんで幼馴染の大空木葉が走ってきていたのである。


「どうした?朝から」

 彼女は息をきらしながら言った。

「はぁ、はぁ、はぁ。最近あんま一緒に行けてなかったから…はぁ、今日くらい行こうと思って」

 確かにここ最近といっても、俺が花美から告白されて以降、俺は木葉や雅と顔を合わせづらくなった気がしていたのだ。


 どうしてかは俺にも分からない。

「そっか。んじゃあ行くか。学校」

 そう言って、俺は木葉と一緒に学校に行くことになった。




 学校に着くと、そこには当然花美静夏がいた。

 花美は俺を見つけるなり愛想よく「おはよう」と言ってきた。それには、俺も「おはよう」と返すしかなかった。


 席もすぐ後ろのため、離れようにも離れられずにいて、どこか落ち着かない。

 2時限目が終わり、休み時間になった。

 俺は、花美に呼ばれて廊下に来ていた。

「あ、あの…これはどういう?」


 すると、俺に背を向けていた花見は、俺の方に向き直り口を開いた。

「ねえ、返事…まだかな?」

 頬を朱色に染めていう彼女は、なんというか…その…愛らしかった。

 だが、俺の結論はまだ出ていない


 出していいのかすら分からない。まだ、暗闇の中をなんの手がかりもなく走っているような感覚だ。

「ごめん…まだ…」

 と、俺が言うと花美は「じゃあ、」と切り出した。


「今日から、奥仲のこと遥斗って呼んで良い?」

 突然のことだったので、俺は酷く動揺した。

「へ…?」

 すると、花美は状態を少しだけ(かが)め、上目遣いで言った。


「だって、大空さんも、小野さんだっけ?も、みんな遥斗って呼んでんじゃん。私だけ苗字なのは仲間はずれっぽいって言うか…なんていうか…。代わりに私のこと静夏って呼んでいいから」

 俺は、自分の顔の前で両手をバタバタと振った。


「いや、いや、いや。遥斗って呼ぶのはいいけど、俺が静夏って呼ぶのは勘弁してくれ」

「大空さんのことは木葉って呼んでるのに?」

「あれは、頼まれたからで…」

「私のときは頼んでもダメなの?」

 痛いところをつかれた。正直、花美のことを静夏と呼ぶのは抵抗があるのだ。木葉や雅のように信用できる人物ならともかく、一度騙されたことのある相手が前にいると、どうも信用が…。


 これでまた下手に親しくなって、高校時代も嘲笑と、哀れみの中で生きてきだなんて絶対に嫌だ。確かに、花美とは友達になりたいとは言った。自分がこれ以上逃げないように、成長するために。だけど、展開が早すぎてついていけない。


 花美は、まだこちらを見続ける。

 これは、もう時間の勝負だった。休み時間が終わるか、俺の忍耐が負けるかの。

 結果は、予想通りだった。俺の忍耐が負けたのだ。


 いくら、一度騙された経験があって、まだ完璧に信用していないからと言っても、やはり、花美は美形だ。そんな顔で睨まれたら、どんな男でも長くは持たないだろう。

「わ…分かったよ…分かりましたよ…」

「本当に!」


 と、やけに嬉しそうな顔でいう花み――いや、静夏に俺は苦笑いで答えるしかなかった。

「ああ、本当だ…」

 答えた時、休み時間終了の鐘が鳴り響いた。



 教室に戻ると、木葉が何か言いたげな顔をしてこちらを睨んでいた。

 なんだよ…今日は…。


「遥斗どこいってたの?」

「え?ああ、ちょっと廊下にな」

 木葉の方は向かずに答える。

 それ以上木葉は、聞いてくることなく3時限目の授業に入った。




 4時限目終了の鐘が鳴り響いた。

 すると、教室に薫先生が入ってきてこういった。


「ようし、奥仲、大空準備をしろ~」

 それに俺と木葉は「は~い」と返事をし、幼稚園に向かう準備をする。

 準備といっても、もう今日は学校に戻ってこないので普通に下校する準備をした。

 準備をしていると、後ろからツンツンと誰かにつつかれた気がして振り返ると、そこには静夏が弁当を食べながらこちらを見ていた。

「?何かようか?」

「どこ行くの?」

 なぜか小声で聞いてくる。しかも、今コル先生に呼ばれているということもあり、クラス中の注目は俺たちに注がれている。


 それにも関わらず小声で密談してますみたいな空気で話されると、より一層注目を集めてしまう。


「よ、幼稚園だよ」

 言うと、静夏は箸でもっていた唐揚げを弁当箱にポトリと落とした。

「ま、まさか…もう子供が――」

「いねーよ。部活の一環だ」

 とんでもないボケをかましてくれたお陰で、完全にクラス中の注目を集めてしまった。

 はぁとため息を着くと、今度は須藤が、後ろから首に腕を絡めてきた。


 そして、耳元でこういった。

「おいおい、いつから花美さんとあんなに仲良くなったんだ?」

 俺は、須藤に冷たい視線で

「んな、仲良くなってねーよ」

 と少し強めに答えた。

 ふと、木葉の方を見ると、木葉は死んだ魚のような目をしていた。

「は、遥斗…」

「こ、木葉…。さ、行くぞ」

 と言って、俺は木葉の手を引き薫先生と一緒に教室を出た。


 駐車場には、すでに雅が待っており、俺たちを見つけるやいなや手を振って「こっち、こっち」と呼んでいた。

「よし、これでみんな揃ったな。今から春野幼稚園に向かう。昼食は幼稚園でとってくれ。私も幼稚園に残るが、君たちが園児と触れ合うのが最大目的だ。つまり、君たちが率先して動きたまえ」


 薫先生はそう言うと、車に乗れと右手の親指で車を差した。

 俺たちは車に乗り込み、『春野幼稚園』へと向かった。




 俺たちが幼稚園に向かっている間、学校では。

 静夏は弁当を食べ終わると、ある人物の元へと向かっていた。

 それは、木葉の友達の前原、篠宮のところだった。


 静夏は、お得意の清楚系アピールで、彼女らにいくつかのことを聞いていた。

「あの~…」

 心細そうな静夏の声が前原と篠宮の耳に入る。

「どうしたの?」

 先に口を開いたのは、篠宮の方だった。彼女は活発で、クラスの中でも派手な方だった。ちなみに、遥斗は彼女のことが少し苦手である。

「あの…大空さんって何部に入ってるの?」

 いきなりの質問で驚いたのか、すぐに答えは帰ってこない。


 ならばと静夏は継いで口を動かす。

「さっきも、部活の用事でどこかに行ってたみたいだから、気になって…」

 すると、篠宮が「ああ、なるほど」と手を鳴らし、快く答えた。

「確か…えっと何部だっけな?えーっと巣鴨部?」


「違うよ篠ちゃん。確か萬部だよ」

 と、今まで黙っていた前原が丁寧に訂正してくれた。

「萬…部ですか。ありがとうございました」

 と、静夏はペコリと頭を下げそそくさと自分の席へ戻ってしまった。

 一体なんだったのだろうと首を(かし)げながら、前原と篠宮はそれを見送った。




 車は、神ケ谷市郊外の比較的交通の便の良いところまでやってきて、その足を止めた。

「さあ、降りてくれ」

 そう言われ降りた先に広がるのは。それもこれもミニサイズの遊具に、小さな男の子女の子、それに倣って手を叩いたりしている先生の姿があった。


 何だか遥斗は不思議な感覚がしていた。まるで、心だけ過去にタイムスリップしたかのような……。

「よし、まずは先生方に挨拶とするか」

 薫先生が幼稚園の職員室に向かって歩き出す。遥斗たちもそれについていった。




 俺たちが幼稚園の職員室へ行く際に幼稚園児たちにめちゃくちゃ見られたが、気にしないようにしよう。

「遥斗…なんかめっちゃ見られてない?」

「気にしないようにしろ…。これから3日間接するんだから」


 苦笑いしながら木葉を励ます。

 職員室には優しそうな先生ばかりいた。園長先生らしき人は…ここにはいないようだ。

「では、挨拶を」

 薫先生の一声で俺たちは挨拶をした。

 幼稚園の先生方はとても暖かく迎えてくれた。これなら、やっていけそうだ。

「では、君たちを指導してくれる先生を紹介する」


 言うと、薫先生は俺たちに若い女性の先生を紹介した。その先生はまるで絵に描いたような幼稚園の先生のような印象を受けた。

「こ、こんにちは…大野美代子です。これから皆さんにやってもらうこと等を指示しますのでよろしくお願いします」


 物腰が柔らかそうで木葉の母親のような感じだった。

 美代子先生は言うと、俺たちに向かってこちらに来るように指示する。どうやら、これから仕事が始まるようだ。


「では、頑張ってくるように」

 薫先生は、俺たちに手を振って見送っている。どうやら、薫先生は直接この仕事には関与しないらしい。

「それでは、こちらに」

 職員室のドアが開かれ、俺たちの仕事が始まろうとしていた。


 こんにちは水崎綾人です。

 更新できなくてすみませんでした。『隣の彼女は幼馴染み!?』はもうちょっと続きますので、皆さん引き続きよろしくお願いします。

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