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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第5章「そして彼ら文化祭が始まる」
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第28話「仕事開始!」

 展示・装飾係を所定の場所に移動させた薫先生が、会議室まで戻ってきた。


「リラックス出来たかな?今日からさっそく仕事がある。各自席について取り掛かってくれ」


 言うと薫先生は廊下方ダンボール箱を2,3箱持ってきてそれを会議室の長机の上に置いた。

 中を開け、取り出すとそこには無数のプリントの束があった。


「先生これはなんですか?」

 事務係の誰かが聞いた。

 すると、薫先生は造作もなく答える。


「ああ、これか?これは今年の文化祭の予算案の企画書だったり、近所の有志の募集用紙、それに各クラスに発行できる予算の計画書だったり色々だ。正直、事務は文化祭実行委員の中でもかなり大変な方だ。心してくれ」

 唇の端をクイっと上げ僅かに笑って見せる。

 会議室にいた人間の全員がこの無数のプリントの山の前に息を飲んだ。


 もちろん、俺も例外ではない。

「大変そうですね…?」

 雅が俺に囁くように言ってくる。

 雅の表情は硬く、プリントの寮に圧倒されていた。

「本当にな」


 俺は「はぁ」と肩を上げ嘆息し、雅の声に相槌(相槌)をうつ。

「それでは、各自席についてくれ。仕事を始める」


 薫先生の声とともに俺たちは自分たちの席へと着いた。

 前の席からプリントが配られる。もう、何枚あるかすら分からない数のプリントが一人一人に割り振られる。

「マジかよ…」

 あまりの数に思わず声が漏れてしまった。

「何かあったかー」

 薫先生は、意地悪な声でどこかにその声を放った。


 雅の席は俺とは割と離れているが、ここからでもあいつの表情は分かった。

 プリントの数に驚きすぎて硬直している。

「大丈夫かよあいつ…」

 薫先生の説明のあと、「始め」の合図で仕事が始まった。


 仕事内容は実に簡単なものだった。

 俺の場合は与えられたパソコンに割り振られたプリントを写せばいいのだ。

 しかし、作業は簡単だとは言え単純作業が無限に続く程、苦痛なものはない。

 作業を開始してから2時間が経過しようとした時だった。


 次第に、パソコンを見ている俺の量の目が悲鳴をあげ出す。

 眉間に手を当て、少しの間だけ休む。ふと、雅の方に視線を放ると雅も同じように休んでいた。


 この作業は疲れが溜まるのだ。

 少し休んでまた作業を再開する。あまり休んでいると、後々自分が大変になってくるからだ。


 パソコンのキーボードを叩く。欄列する文字が俺の目の前で踊るように見えた。

「あ…目痛った」

 そうつぶやいている俺の元に薫先生がおもむろに現れた。

 薫先生は俺の仕ぶりを見ながら言う。

「なかなか頑張っているじゃないか奥仲」

 声のした方を一瞬振り向き、またパソコンに目を向ける。


「まあ、仕事ですから」

「君は、大空木葉と出会ってから変わったな」

「そうすかね?」

 キーボードをうつ速さは変わらないことを意識して会話にも意識を向ける。


「あ、ミスった」

 プリントの行を間違えた…。バックスペースのキーを連打する。

「ちゃんと集中しないとダメだぞ」

 話しかけておいて何言ってんだこの先生は。

 俺は、「はいはい」と答えプリントと画面を見ながら文字を再び打ち込む。


「ふむ、なんだか邪魔そうだな。では、私は戻る。引き続き頑張りたまえ」

 と言うと、薫先生は会議室から出ていき、会議室の空気が一気に緊張感から解き放たれる。


 周りにいた他の実行委員のメンバーは、伸びをしたり、おしゃべりをしたりなど各自休憩を取る。

 だが、俺は仕事を続ける。別に仕事熱心なわけじゃない。休憩をし続けたら仕事が終わらなそうなのと、まずおしゃべりをする友達がいないのだ。


 雅の方まで行き喋るのもいいのだが、そこまで行くのは面倒くさいし、そこまでして喋ることもない。


 周りは仕事のことなど忘れたかのようにパソコンを閉じたり、自分に割り振られた仕事に手をつけない。

 それから1時間が経過した時だった。

 薫先生が仕事終了の報告をするために、再び会議室に戻ってきた。


「お疲れ。今日は解散だ。明日も仕事があるから頑張ってくれ」

 俺も仕事を切り上げ、帰る支度(したく)をする。

 次々と会議室から出て行く中、俺だけ一人取り残されてしまった。

 マフラーを巻いていたら時間がかかったのだ。

 時刻は19時。外はもう真っ暗な時間帯だ。生徒も下校しているので廊下の電気は消されていて、廊下も真っ暗だ。


 消火栓の明かりくらいしか存在しない学校の廊下はどこか恐怖を覚えた。


「うーわ、廊下真っ暗だな」

 そう言うと、後ろから俺を呼ぶ声がした。

 学校の怪談かと思ったが、季節が季節なのでそれはないと思い、恐る恐る後ろを振り向く。


 そこには、リュックを背負ってピンクと白のチェックのマフラーを巻いた小野雅が立っていた。

「雅…か」

「お、驚かせてしまいましたか?すみません」

 ペコリと軽く頭を下げるが、またすぐに上げ爽やかな笑顔を覗かせる。

「い、いや。そんなことは無いけど、どうしたの?」


 俺が聞くと、雅は恥ずかしそうに斜め上を見上げながら言う。

「えっとですね。実は遥斗くんと途中まで帰えりたいなと思いまして…」

「ああ、外暗いしな。ちょっと危ないかも知れないからな」


 雅が言いたいことが分かり、納得する。

 確かに、外は真っ暗だ。こんな時に女の子一人で返すのは危ない。特に女子高生だ。狙われる対象となりやすいだろう。


 だが、そうなると木葉も例外ではない。あいつだって一応は女子高生なのだ。それに、認めたくはないが完全な美形だ。

「あ、ちょっと待ってて、木葉のことも見てくる」


 そう言い残し会議室を出たが、俺が出た後の雅の顔は少し寂しげに見えたのが気になった。


 俺は、真っ暗な階段を踏み間違え無いように確実に登っていく。

 確か展示・装飾が仕事を行っている教室は理科室だったはずだ。

 理科室に向かうと、教室は既に真っ暗でもう誰も活動している様子は無かった。

 恐らく事務より先に終わって帰ったのだろう。帰ってしまった以上どうしようも無いので俺は、雅を待たせている会議室に戻ることにした。


 会議室に戻ると、そこには椅子に座って寂しそうに待つ雅の姿があった。

 なんだか無性に申し訳のない気持ちになる。

 俺が戻ってきたことに気がついた雅は笑顔を作って見せた。


「あ、木葉ちゃんいましたか?」

「え、ああ、居なかったよ。帰ろうか」

 俺は雅にそう言うと会議室から出るため愛を動かした。


 その時だった。会議室の扉から急に黒い影がヌウっと現れたのだ。



「「ぎゃあああああああ!出たあああああ!」」



 俺たちは、現れた黒い影に絶叫を上げた。

 その絶叫に反応したのか、黒い影も同じように叫び声を上げる。その声には聞き覚えがあった。


 いつも黒いレディースのスーツを着て、年齢・結婚の話になると急に(うつ)になる女性教師。


 俺は、恐る恐る黒い影の方に歩み寄っていった。


 そこには、ドアの外で身を丸めながらガクガクと震えている前宮薫先生がいた。

「か、薫先生」

「え…その声は奥仲か…?」

 先生の目には涙が溢れて、頬は赤く染まっていた。そこまで怖かったとは思わず、お互い叫んだのだが、なんだか自分が悪いような気がしてきた。


「さっきの叫び声は一体…」

 薫先生が身を丸めてうずくまったままで、顔をキョロキョロと見渡した。


「いや、あれは俺たちです。俺たちも驚いてつい叫んでしまったんですよ…」

 苦笑いしながら薫先生に告げる。

 薫先生は、ポカンとしながら呟く。


「さっきのは…奥仲なのか…?」

「はい」

 すると、急に立ち上がり涙が溢れていた目を拭い「コホン」と咳払いをした。

 そして、会議室に入る。


 そこには、当然雅もいるわけで…


「うわっ!」

 予想通り雅を見てまた大きな声で驚いたようだ。


 今回はさっきほどでは無く、身を丸めてうずくまってはいなかった。


「先生大丈夫ですか?」

 俺も、会議室に入った。

「奥仲…」

「はい…」

「そこの椅子に座れ!」

「はい!?」


 薫先生は俺の近場にある椅子を指さした。

 その後、俺は向こう三十分薫先生から理不尽な説教と愚痴をたっぷりと言って聞かされた。




 ようやく薫先生から解放された遥斗は今、雅とともに校門を出ることができた。

 この時点で時刻は19時40分を過ぎていた。


 夜になり太陽が沈んだ今は昼以上に気温が低く空気が痛かった。

「それにしても災難でしたね」

 雅が遥斗を気遣うように言う。

 遥斗もそれに同調して答える。


「ほんとにな。もう懲り懲りだ」

 雅と遥斗は「ははは」と笑い合った。

 こうしていると、またあの夢がフラrっ主バックしてきそうだったが、今回はなぜかそうはならなかった。


「あ、そうだ。そう言えば、マフラー見つけたんだね」


 遥斗が雅のマフラーに目をやって言う。

 すると、雅は自分のマフラーに手を当て答える。


「いいえ、それが…結局見つからなくて新しいのを買ってきたんですよ」

 雅が恥ずかしそうに笑う。

 遥斗は「そうなんだ」と答え、帰り道を二人で他愛もない会話をしながら歩いた。


 神ケ谷駅まで来た時だった。

「私、電車なんで。ここまででいいです」

 駅の街灯に照らされた彼女の顔はまた少し寂しそうだった。


「そうなのか…分かった」

「今日は嬉しかったです。もしよろしければ明日もご一緒してくれませんか?」

 その答えは言われる前から決まっていた。

「ああ、分かった。じゃあ、また明日」

「はい、また明日」

 互いに手を振り合い雅は駅のホームに、遥斗はそのまま自分の帰路に向かって歩きだした。


 正直、雅と別れた後の遥斗の帰路はつまらないものだった。


 遥斗にとって木葉以外の人間と帰るのはとても新鮮なものだったのだ。だから、もうちょっと長く居たかったというのが素直な気持ちだ。


 街頭の明かりが照らす夜道を遥斗は一人で歩き続けた。




 翌日。俺は実行委員の仕事をするべく会議室に行った。


 そこにはまた山のようなプリントが積まれており、やる気を一気に削がれた。

 俺は自分の机に座り早速仕事を始める。

 周りを見ればもう仕事をしている人もおれば、何もしないでお喋りにふけっている者もいた。挙句の果てには会議室に来ていないものすらいた。


 流石に二日目からサボるというのには脱帽するしかなかった。

 昨日のうちに結構やったと思ったのだが

プリントの山は減る(きざ)しが見えず、今日もパソコンと格闘した。


 だんだん目が痛くなってきた。眉間に手を当て軽くマッサージを施す。


 そしてまた画面とプリントに目を向ける。

 いざ、仕事を再開しようとしたときだった。

 会議室の扉がガラガラと開かれ、誰かが入ってきた。


 俺は視界の端でそれを見ていたため、完全に誰だか把握することは出来なかったが、明らかに薫先生ではなかった。

 しかし、声でその人物が誰だか判断がついた。


「失礼します。1年2組の須藤大樹です。クラス展示の計画書を提出しに来ました」

 須藤だった。どうやら須藤が来たのは、クラス展示リーダーだからのようだ。


 須藤は、委員長に計画書を渡すとそそくさと会議室から出て行った。ただし。俺に向けて『グッドラック』と親指を立ててだが。

「えーっと、奥仲くーん」

 委員長が俺を呼んでいるようだ。

 俺は席から立ち上がり、委員長の元へと向かった。


「なんですか?」

「さっきのこれ、パソコンに写しといて」

 そう言われ手渡されたのは、先程須藤が持ってきたクラス展示の計画書だった。


 また、俺の仕事が増えた。




 今日もなんとか実行委員の仕事を乗り切った俺は雅と一緒に校門を出た。

 もうすぐで神ケ谷駅に着くと言うときのことだった。


 雅が「ちょっと待ってください」と言い、歩く足を止めたのだ。

 訳も分からず俺も足を止め、雅の方を向く。

「あ、あの…。もし…良かったらでいいんですけど…土曜日あの…お、お、お――」

「お?」


 雅の声が小さくとぎれとぎれだったため、俺は聞き返した。

 下を向いたままでいる雅はやっとのことで言葉を紡いでその口を動かす。


「一緒にお出かけに行ってくれませんか?」

 その声とともに顔はことらに向けられた。

 俺は、週末はとてつもなく暇だ。特に雅の誘いに断る理由はなかった。

「分かった。良いよ」


 俺の答えとともに、雅の顔は微笑んで見えた。(暗くてよく分からなかったが)


「本当ですか?」

「ああ」

「ありがとうございます」

 元気な声でそう言われ俺も気持ちが高ぶってきた。

 そのまま神ケ谷駅まで歩いてきた。

 別れ際の時だった。


 雅が思い出したかのように言ってきた。

「あ、そうだ。遥斗くん、メアドと電話番号交換しませんか?」


 いきなりのことだったので俺はひどく驚いた。自分の携帯には女子のメールアドレス」は木葉のだけで男子のメールアドレスすらそんなに入っていないのだ。その俺の携帯に新たにメールアドレスが入るだなんて夢にも思っていなかった。


「ダメですか?」

 俺は、首を左右にブンブンと振った。

「い、いや、ダメじゃない。むしろこっちからお願いしたいくらいだよ」


 そう言い俺は携帯を差し出した。

 雅もそれに応じて携帯を取り出す。

 赤外線通信と言う便利な機能で一瞬で交換ができた。


 俺の携帯の画面には

『小野雅 登録しました』

 と機械的な文字で書かれた表示が出ていた。

 恐らく雅の画面にも同じような表示が出ているだろう。


 雅は画面に目を落とし確認を取ると、「じゃあね!」と手を上げ駅のホームへと走っていった。


 俺の携帯に数少ない友人のメールアドレスが追加された時だった。



こんにちは水崎綾人です。

雅がどんどんヒロイン化している気がしています。まあ、そう書いているんですけどね。

もうお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、今回のメインヒロインは雅で書いています。今まで木葉や楓にばかりスポットが向いておりましたので雅回です。私なりの課題ですが、雅をどう可愛く書くか、表現するかを課題としています。

もちろん面白く書くというのは大前提で課題としています。

次話もお楽しみに

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