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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第5章「そして彼ら文化祭が始まる」
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第26話「文化祭への幕開け」

「お、小野。なんだよ、こんなところに呼び出して」


 小野に呼び出された俺は、今、彼女の後ろに立っている。


 小野は、なにも言わずにこちらに向く。

「遥斗くん…」


 何かが不自然だ。


 小野の目が垂れて、どこか淫猥(いんわい)な感じを受ける。


「名前で呼んでって言ったじゃない」

「ああ、悪い。それで雅。用ってのは、何なんだ?」


 そう言うと、雅はブレザーを脱ぎ始めた。下には、白いブラウスが覗いて見せる。

「お、お、お、お前何やってんだ。早く服を着ろ、服を」

 慌てて手をバタバタとしながら、彼女から目を背ける。


 が、雅の手は止まらない。

 ブラウスのボタンを上から一つ、また一つと外していく。


 ブラウスのボタンが全て外された頃には、雅の白い肌とピンク色のしたブラジャーが顔を覗かせていた。


「何やってんだ!」

 俺は、顔を赤らめながら必死に雅から目を逸らそうと試みる。だが、何度挑戦しても惹きつけられてしまう。これが、思春期というやつなのか。


「もっと、私を、見てよ…」

 うつろな声が俺の鼓膜を伝って脳内に伝播する。


 この上なく甘い声だ。もし、理性というものがなかったら、余裕で過ちを犯しているかもしれない。


「だから、何なんだ。早く服着ろって」

 目を逸らしながら懸命に言う。顔が熱い。全身の血液が沸騰しているようだ。


 すると、彼女は再び言葉を紡ぐ。

「もっと私を見て。莉奈さんでも、妹さんでも、木葉ちゃんでも無く私を…見てよ…」

 何を言っているのか分からなかった。見るも何も、ほぼ毎日部活で顔を合わせている。


 それについこの間は、休日にも会った。正確に言えば出くわしたのだが。

「見てるよ、普段部活でも会ってるだろ?」

 彼女は、顔を下げそのまま涙ぐむように言う。


「違う。あなたは私を見てない…。私は、あなた…遥斗くんに全てを見て欲しいの」

 言うと雅は一歩、また一歩こちらに歩み寄ってくる。その足取りは軽快なものでは無く、ゆっくりと確実にこちらに向かっていた。

「お、おい…み、雅さん?」

「お願い遥斗くん。私を感じて。私は…あなたのことを感じたい」


 言う頃には雅は既に俺の目の前まで来ていた。

 雅の目は(うつ)ろで、溶けそうなくらいだった。

「―お願い…」

「―っ」


 雅の顔が刻一刻と俺の顔に近づいてくる。

 全身を汗が伝うのが確かに分かる。

 握った拳からも汗は煮沸し、俺の鼻を彼女の匂いが包み込む。


 あと少し…あと少しで…雅の唇が俺の唇と…。





 リンリンリンと甲高い目覚まし時計の無機質な音が、俺の頭の中に響いた。

 目を開けた先に広がったのは、真っ白い天井だ。


 そう、ここは俺の部屋。ついで言うと俺はベッドの上にいる。さっき見たのは、夢、であったのだ。


 俺の身体は寝汗で全身がビッショリだった。

 ベッドから起き上がり、さっき見た夢のことを脳内で再生する。顔から煙が出そうになるくらいだった。緊張とか、興奮とか様々な感覚、感情が走る。


「俺…なんて夢見てんだよ」

 小さく呟く。


 同じ部活の部員の女子の如何(いかが)わしい夢を見てしまうだなんて、どこか罪悪感を覚えた。


 頭を掻きむしり、さっき見た夢を忘れようと努力するも、衝撃的な夢だったためそうもいかず、掻き毟るたび鮮明になってきそうだった。


 それから、カーテンを開け、今日の日の光を浴びた。


 クローゼットから制服を取り出し、着替えを始める。

 これからまた、学校に向かうために――。




 11月。この時期は俺たちの学校では文化祭シーズンなのだ。


 他の学校は10月くらいに行うが、どうもうちの学校は遅い。


 なんでも、文化祭と12月の初めにある修学旅行の間を、あまり開けないようにするのが目的らしい。


 クラスでもそろそろ文化祭と言うことで、少しばかりみんなテンションが上がりつつあった。きっと、もう少し時期が近づけばもっと上がってくるのだろう。


 今日の5、6時限目のロングホームルームも、文化祭の係決めだ。

 クラスで何かを決める時は決まって学級委員長が指揮を取る。


 このクラスの学級委員長、桜井雫(さくらいしずく)が教卓の後ろに立ち、ロングホームルームが始まった。


「では、文化祭でうちのクラスがやるものを決めたいと思います。何か考えがある人は、挙手して答えてください。それではまず5分間相談をしてください」

 雫の呼びかけの後、クラス中で相談が始まった。


 俺は後ろの席の須藤と話すことにした。

 こういう時あまり友達の多くない俺みたいなやつは苦労する。


「なあ、須藤。お前何やりてえ?」

「んー、そうだな~。高校なんだしベタに喫茶店とか?」


「喫茶店か…高校生っぽいかもな」

 顎に手を当て考える。


 少し周りの声を聞けば、あちらこちらでカフェだの喫茶店だのと言う声が飛び交っていた。


「他には?」

「え~と…あ、お化け屋敷とかか?よく、アニメとかドラマとかでも定番だろ」

「確かに!」

 お化け屋敷、盲点だった。俺は新たな可能性を須藤に覚えた。


「あとは?」

「う~ん。てか、俺だけが考えてんじゃねえか。お前も少しは考えろ」

 須藤に言われて俺も考えてみる。


 実のところ、俺はこういう出し物などを考えるのが苦手なのだ。どんなアイディアを出しても否定されるような気がして。だが、そもそも否定される前にアイディアが出ないのだが。


「うーん、えーと」

 頭をフル回転させても出てこない。叩いても出てこない。どうやってもアイディアなんて出てこない。


 俺は自分の発想力の貧困さを嘆いた。

「出てこねーーー」


 すると、須藤が方にポンと手を置いた。

「すまん。お前にアイディアを出せと言った俺が馬鹿だった」


 須藤から向けられる哀れみの視線が腹立たしい。


 今のこいつを無性に殴りたいと思った。

「はーい、そこまで~。出た意見を挙手で発表してください」

 雫がテキパキと仕切っていく。


 次々に手が上がり、クラスの半分以上が挙手をしていた。


「はーい、じゃあ水野さん」

 当てられたのは水野香織(みずのかおり)。ショートヘアで体育会系女子だ。


 香織は「はい」と元気な声で起立し

「えっと、私は、演劇がいいと思います」

「分かりました、演劇と…」

 雫が副委員長の津上に黒板に書くように合図する。


 男にしては綺麗な文字で『演劇』と黒板に書き記す。


「他には~」

 また次々に手が挙がる。


「はい、神崎くん」

 真面目そうなこの男子は、確か名前は神崎弥夢(かんざきひろむ)といったはずだ。

 彼は、落ち着いたトーンで

「図書喫茶」

 と一言だけ口にして席に就いた。


 いつも本を読んでいる彼のイメージからすればとてもイメージどおりな印象を受けた。

 クラスの女子たちのウケはあまり良くなさそうだが、逆に神崎が「メイド喫茶がやりたいでーす」なんて答えたら、ギャップ萌どうこうの話では無い。言ってしまっては悪いが、少々引いてしまう。


「では他には」

 すると、俺の後ろから「はい」と元気な声が響いた。


 そう、ほかならぬ須藤だ。

「はい、じゃあ須藤くん」

 須藤は立ち上がり、ハキハキと歯切れのいい声で

「お化け屋敷です」

 と言った。


 クラス中からは、いいねや、やりたいかもなどと言った声が響いた。


 どうやら、クラスのウケも良いようだ。

 その後も、話し合いは続き、多数決で決めることになった。


「はい、じゃあ、多数決をとります。一人一回手を挙げてください」

 雫が指揮を取る。


 黒板に書かれているものの中で決めるのだ。

 多数決が始まった。次々と手が挙げられていく。


 津上が忙しそうだった。俺も適当に手を上げた。俺が上げたのは『お化け屋敷』だ。手を上げて発表した須藤の勇気をくんでだ。

 全員が手を上げ終え、集計が終わったようだ。


「えーでは、我がクラスで行うのは…お化け屋敷に決定しました!」

 クラス中から拍手でそれに応じた。なんだかクラスが一つになっているようだった。

「と、言うことで発案者の須藤くんには『お化け屋敷班』のリーダーを勤めてもらいたいと思います」


「へ?」


 間の抜けた声が後ろから聞こえた。

 どうやら、須藤もかなり驚いているらしい。

 俺は須藤に「ドンマイ」と親指を上に立て合図をし、微笑んでやった。これでさっきの哀れみの借りは返した。


「では、次に係りを決めたいと思います」

 雫のこの言葉が発したあとすぐに、ツガミが必要な役職を黒板に書き写した。



・文化祭実行委員 二名

・クラス出し物リーダー 一名(須藤)

・クラス出し物班 十五名

・飾り付け 十名

・ポスター作成、展示 七名



「この中で決めてもらいます」

「ちょっといいか?」

 今まで脇で見てきた薫先生がここで口を出してきた。


「はい。どうかしましたか?」

「文化祭実行委員は既に決まっている」

「え?」


 とクラスの大半の奴らが驚いた声を漏らした。文化祭実行委員は、文化祭の仕事の中でも最も敬遠される役職だ。これが既に決まっているとなると残った奴らは、ものすごくやりやすい。

「そうなんですか?」


「ああ」


 薫先生は得意げに答えてみせた。

「それで、誰なんですか?」

「奥仲と、大空だ」

 クラス中が一斉に俺の方を凝視した。

 なんで俺だけ見るんだよ、大空の方も見ろよ。


「お、おい、遥斗」


 須藤が俺の背中をポンポンと叩く。

「なんだよ?」

「お前マジで実行委員やんのか?」

「好きでやるわけじゃないけどな」

 首元を軽く掻きながら言う。須藤は関心したような顔をして言う。


「マジかよ。ガンバ」

「ああ、どうも」


 津上は「文化祭実行委員 二名」と書かれた下に奥仲、大空と書き加えた。

 文化祭実行委員と言う一番の難所の係が決まったあとの他の係りが決まるのは早かった。

 ものの30分もかからず全ての係が決まったのだ。


 今度は、雫に変わって薫先生が指揮を執ることになった。


「では、余った時間で席替えをしよう」

 クラス中が歓喜の声に満ち溢れた。二学期が始まってからというもの、一度も席替えをしていないのだ。なので、みんなの嬉しさも大いに分かる。


「だが、今回はクジやなどは持ってきていない。なので、文化祭の仕事が同じ者と近くの席にする」


 こういう係決めの時は大半の場合が友達同士で組んでいるため、この席替えはみんなにとってはクジ引きより確実に仲のいい友達と近くになれる最大のチャンスなのだ。


 だが忘れないで欲しい。そうなると俺の隣は必然的に…大空木葉の隣になってしまうのだ。


 俺は気づかれないように木葉の方へ視線を放った。

 すると―。


 木葉も俺の方を見ていたのだ。これは思い込みでも勘違いでも無く、完全にそうだと確信した。


 木葉も見ていた。その理由がどういうものかは分からないが、確かにこっちを見ていたのだ。


 なぜだか、胸の奥むず痒くなった。

「それでは机を移動させてくれ。各係りはこのような配置なら誰の隣でもいいぞ。だが、ちゃんと男女の列は守ってくれよ」


 薫先生は黒板に書いた各係りの席の指定の図を指しながら言う。

 クラスメイト全員が机を持って移動を開始する。


 俺もそれに倣って指定された位置に机を持って懸命に移動を開始する。

 俺たち『文化祭実行委員』の席の位置は、ど真ん中の列の一番後ろの席だ。

 続けて木葉もやって来た。ゆっくりと俺の隣に机を置く。


 家も隣で席も隣になってしまった。これが幼馴染み補正とでも言うのか。


「よ、よお」

 俺は平然を装い右手を上げて軽い挨拶をした。


「う、うん」

 木葉もそれに応じて返事を返す。

 どこがぎこちないこの会話で俺たちはやっていけるのだろうか。素直な俺の気持ちだった。




 その日の放課後。普段なら私を置いて一人で部室に行ってしまう遥斗が私を待っていてくれた。


 私は、自分のリュックにピンクでうさぎのキャラクターの描かれているペンケースとプリントを入れるファイルをリュックにしまい、遥斗に目で合図をした。通じたかどうかは分からないけど。


「んじゃ、行くか」


「そうね。い、行きましょうか」

 どこかぎこちない私たちの会話。きっと遥斗もそう感じていると思う。


 部室への階段を一段、一段と遥斗と一緒に登っていく。こうしていると心が安らぐのが手に取るように分かる。


 

 部室には、まだ誰もおらず二人きりの時間が続いた。


 自然と顔が熱くなってくる。自分の顔があ赤くなっているんじゃないかと心配になってくる。


 遥斗はどう思っているんだろうか、そう思うときがある。


 今日、私は遥斗と席が隣になれて嬉しかった。遥斗は嬉しかったのかどうか私には分からない。


 いつも彼は、私を助けようと努力してくれる。10年ぶりにあった時、私が思い出に絶望仕掛けたときも、私がクラスで友達ができなくて困っている時も一緒になって協力してくれた、柏崎くんのデートを断れなくて苦労したときも助けてくれた。


 そう、遥斗はいつも助けてくれた。そんな遥斗に私は10年前以上に惹かれている

 でも、遥斗の周りにはいつも女の子がたくさんいる。本人は気付いてはいないようだけど。莉奈さんや、みやびんだって多分…程度の差はあれど遥斗に好意を持っているはずなのだ。


 それに、遥斗は優しいからこの先だって増えていくに違いない。そう思うと、私はどこか心の奥がムズムズしてくる。


 そんなことを思いながら遥斗の顔を見ている時だった。


 ガターンと勢いよく扉が開き莉奈さんが入ってきた。


「みんな、お待たせ!さあ部活を始めようか」

「ちょっと莉奈さん扉壊れちゃいますよ」

 後ろにはみやびんもいた。

 みやびんは莉奈先さんに言い聞かせるように言うが、当の莉奈先輩はまるで聞いているようでは無いようだった。


 私にとってもこの部活や遥斗といるのは楽しい。だから、しばらくはこのままの時間が続いていって欲しいと思うな。





こんにちは水崎綾人です。

 今回は、少し長めで書かせていただきました。まったく遥斗も男ですね。

あんないやらしい夢を見るだなんて。

 そんなこんなで文化祭への道のりはまだ始まったばかりです。

 次話お楽しみに! 

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