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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第4章「先輩、妹、部員に幼馴染み」
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第25話「悩みの晴れ間」

 朝、ふと思った。


 なぜ人は悩むのだろうかと。

 このような思考がなければ、人間は比較的幸せに暮らせるようになると。


 だが、俺は自分なりにこう結論づけた。

 それは、人間が弱い生き物だからであると。

 

 こんな思考になるときの俺は大抵どこかに悩みを抱えている時である。


 少しでも違うことを考えて、現実から逃れようとするのだ。


 これが意味のないことだというのは、毎回の経験で大体分かってきたところだ。


 俺は、誰と登校する訳でもなく、一人で通学路を歩いている。

 今週から11月に突入し、いよいよ本格的に寒くなってきた。ズボンのポケットに両手を入れ、一つ深呼吸をする。

 すると、白くなった息が俺の目の前に現れる。


「冬だな。こりゃ」

 そう無気力につぶやく。

 辺は景色は、とても寂しいものだった。

 木は葉が枯れ落ち、裸の状態だ。曇った空は寒さをより一層強調させる。


 毎年のことでなれてはいるが、いざこうなるとやはり殺風景であると思う。

 先週はあいさつ運動を行っていなかった松前も今日は、いつもより少し着込んであいさつ運動を行っていた。


 いつも通りに挨拶をしても今日は何も言われず、とても気分が良かった。

 これなら冬も捨てたもんじゃないと心の中で盛大に思った。


 教室に入ると、須藤が俺のことを待っていたのか、俺が教室に入るなり話しかけてくる。


「おお。遥斗、遅いぞ」

「そうか?いつも通りだけど」

「そんなことはどうでもいい」

「いいのかよ」

 まったく人の話を聞かないやつだ。

 須藤は言うと、おもむろに携帯を突き出してきた。


「どうだ!」

「どうだと言われも」

 須藤の問いの意図がイマイチ分からず、困惑してしまう。


 頭に手を当て少し考える。須藤は楽しそうにこちらを覗き込む。端から見れば、単なるアホにしか見えないだろう。


 須藤には悪いと思ったが、俺はその問の答えが全くわからなかった。


 そのため、俺は

「悪い、分かんねえわ」

「な、なんだって!」

 机に手を付け頭を落とす。

 だが、それと同時にクククと気味の悪い笑い声を上げ始めた。


「お前…キモいぞ」

「――っな」

 顔を思いっきり上げた須藤と目があった。

 机に付けていた手を離し、自分の力で立ち上がると、再び話し始める。


「これだよ、これ」

 と言い、さらに携帯をつき出してくる。

 ここまで携帯を推しだしてくると言うことは、携帯と関係があるなにかなのか。

 よく見ると、いつもの須藤の携帯とは少し違うような…。


 俺は目を凝らしてもう一度よくその携帯を見る。


「あっ、お前…もしかして携帯変えた?」

「そのとおり!!ようやく気付いたか」

「マジで!?すげえ見せて、見せて」

 俺たちは、友人が携帯を変えた時によくやる行動第一位(俺調べ)の『機能チェック』を行った。


 これによって、友人が使っている携帯のランクが分かる。


 ひとしきり須藤の最新携帯の機能をチェックし終えた時だった。


 ガラガラと教室の扉が開き、薫先生が入ってきた。

 薫先生が教卓まで来ると朝のホームルームが始まった。


「起立。礼」

 日直がそう言うと、みんなが一斉に礼をする。

 薫先生もそれに倣って礼をする。

 朝のホームルームは淡々と終わり、あっと今に過ぎていった。


 だが、連絡事項を話している時だった。

「えーと。では次、連絡です。萬部の部員は昼休み昼食を持って部室に集合してください」

 なんと――。


 萬部が呼ばれたのだ。

 こんな部活動リストに『しーくれっと』なんて書いてしまうような、影の薄い部活がだ。

 俺は内心驚きを隠せなかった。




 ホームルームが終わり、1時限目の教科の準備をしていた時だった。


「ちょっと、遥斗」

 いきなり大空に声をかけられたのだ。

 特別、教室で話さないようにしているわけではないが、部活のとき以外に声をかけられると少し驚く。


「ど、どうした?」

 ロッカーから教科書を取り出しながら答える。

「昼休み何なんだろうね?」

 大空が腕を組み考える素振りを見せる。

 大空は大空なりに考えているらしい。


「多分、(たい)したことじゃないだろう」

 地理の授業道具を取り出しながら言う。

 大空は「そうかな」と言葉の端に疑問符をつけるような感じで答える。


「なんか不安なことでもあるのか?」

 そんなに気にかけることでもな無いのに、過剰に気にしている大空はどこか不自然だった。


「え、だ、だって怒られるの好きじゃないもん」

「俺もだよ」


 当たり前のことをこうも堂々と言ってきた。

「昼休みになれば分かるさ」

 そう言い、俺は自分の机に戻った。




 4時限目の終了の鐘が鳴り響いた。

 俺は、いや、正確に言うと俺と大空は昼食を持って部室へと向かった。


「あ~本当何なんだろうな」

 不安げな声を出す大空。

 弁当箱を軽く振り回しながら俺に意見を求めるかのようにこちらを覗いてくる。


「どうだろうかな。行ってみないことには分からんだろう」

 片手に弁当箱を持ち、もう片方の手で後頭部を掻く。


 階段を上り、部室を目指す。

 部室まで行く道の間に小野や、莉奈先輩とは出くわすことがなかった。

 ガラガラとドアを開けた。

 すると、そこには既にいつものように座っている小野と莉奈先輩がいた。


 莉奈先輩はいつもどおり楽しそうにしているが小野は――。

 俺が視線を向けると、それを感じたのか目をそらす。


 俺の思い込みなのか、それとも本当に背けられたのかは分からないが、どこか嫌だった。

「早いっすね」

 俺は、小野や莉奈先輩に向かって話しだした。


 小野は無言のままだったためか、それとは対照的な莉奈先輩が特に引き立って見えた。

「本当だよ。4時限目が終わったから、亜光速で走ってきたよ」

 拳を胸元に作りながら、また訳の分からないことを言っている。


 さすがの俺も、もう慣れてしまった。

 大空の方に目を放ると小野と仲良く話していた。


 小野は大空とは話すらしい。それを見ていると、なんだか泣きたくなってくる。

 少し待つと、廊下からコンコンと靴の音がしてくるのが聞こえた。


 そして、ガラガラと部室のドアを開け、入ってきたのは薫先生だった。

「そろったな」

 意味ありげにニヤけるその顔は、少しばかり怖かった。


「今日、わざわざ昼休みに集まってもらったのは他でもない」

 薫先生は莉奈先輩の隣に座った。これは、この間の部編成の時と同じ状態だ。

 またジュースで酔うのではと言う考えが頭から離れない。


「この前依頼した『文化祭のテーマ』。これについての進行状況を聞きたいと思う。お前たちは、時間さえあれば先延ばしにしそうだからな」


 腕を胸の前で組み、俺たちの報告を待っているようだ。


 俺たちは、互いに顔を見合わせた。無論、小野とは合わせていないが。

 実際のところ、文化祭のテーマ決めについてなんの話もしていない。だから、進行状況も何もないのだ。


「どうした?」

 なぜか薫先生はニコニコしている。

 とその時だった。


 唐突に小野が口を開いたのだ。

「まだ、話し合ってないです」

 放たれた声はいつもよりかは小さく、か細いように聞こえた。


 薫先生は「ふん」と嘆息をして

「そんなことだろうと思ったよ。だから、今少しでも話し合おうじゃないか。弁当でも食べながら」


 と、薫先生はおもむろに弁当を取り出し、俺たちに見せる。


 これは、「弁当を食べるぞ」と言う合図なのだと俺たちは受け取った。

 部員全員がそれぞれの弁当を開いた。

 弁当というのは不思議なものだ。どこの家庭にもその家ならではの個性がしっかりとある。


 例えば、莉奈先輩。

 莉奈先輩のお弁当は主菜、副菜と来て弁当箱の隅っこにデザートのコーナーが設けられていた。


 これは恐らく、莉奈先輩が好きなものなのだろう。親の優しさを感じる。

 小野はと言うと、サンドウィッチがメインだ。シーチキンやハムレタス、タマゴなどと言ったスタンダードなものだが、逆にそれが良かったりする。


 そして、大空と言うと―。

 大空の弁当は比較的主菜、副菜がまんべんなく入れてあった。タコさんウィンナーにミートボールなど子供っぽい料理も目立った。

 普通なら、弁当を作るとき子供の嫌いなものは極力入れない親の方が多いだろう。


 だが、俺の家庭は違う。俺が嫌いなもの動向よりも、晩飯の残り物の消費の方が優先されるのだ。


 前日の晩飯が俺の嫌いなものだった場合は次の日の弁当は地獄だ。


 嫌いな食べ物のオンパレードだからだ。

 幼稚園の頃からこんなことをされてきたためか、小野豆地嫌いな食べ物は無くなった。


 そんなことを思いながら、弁当を食べていると、唐突に薫先生がしゃべりだす。


「土曜日にさ実家帰って地元の友達とあったんだよ。その友達はもう結婚してるから余裕なんだか知らないけど、私に『薫ちゃんいい人居ないの?』なんて聞いてくるんだ。あの時は泣きそうになったな。私がどんな思いで27年目の冬を過ごしているか分からんの買って思ったよ」


 薫先生はなぜか俺の方の箸を向けてぼやいた。


 俺が何したって言うんすか。

 俺は唐揚げを口に運びながらそう思った。

「先生27歳なんですね」

 大空が軽い口調で弁当を食べながら言う。

「ばっ、大空!」


 俺が大空に声をかけた時にはもう遅かった。

 薫先生の顔は半泣き上体になっていた。

 前にも一度須藤が冗談半分で年のことを言ったら、こうなった。


 あのあと、須藤は反省文を書かされたという。

「え、何?」

 ビックリして肩を浮かせた大空は俺のことを凝視してくる。


 が、俺の視線の隅には箸を持ったまま、うつむいてる薫先生がいた。

「いいもん、一生独り身でいてやらぁ」

 拗ねた子供のようになってしまった。

 独身という事実がこんなにも薫先生を苦しめていたとは。


「だ、大丈夫ですよ。先生美人さんですから、すぐに結婚できますよ」

「大丈夫だよ先生。本当にダメな時は遥斗くんが貰ってくれるってよ」


 小野と莉奈先輩が交互に薫先生を励ます。

 莉奈先輩の励まし方は絶対に間違っていると思うが。


 薫先生は涙をレディースのスーツの裾で拭い、弁当を片付けて職員室に帰ってしまった。

 大空は何があったか理解出来ていないようだった。


「あ…の。あれは一体…?」

 まだ状況を分かっていない大空に説明する。

「お前、薫先生に迂闊に年齢と結婚のことは聞いちゃダメだ。独身と言う事実と、増えていく年に絶望してああなってしまう」


 真剣な眼差しで聞く大空。俺が何か言うたびに頷いている。


 根本的に素直なのだ。

 俺たちも弁当を食べ終わり、特になにもすることが無いのでそのまま解散となった。




 その日の放課後。

 俺と大空は再び部室に向かった。

 昼休みも部室に来たのでなんだか変な気分だ。


 早速、部活をすることになったが、今回は『文化祭のテーマ』について決めると言う。

 どうやら、昼休みに先生に言われてこれにしたのだろう。


 小野を中心に小さな学級会のような形態を取る。

「では、文化祭のテーマの意見を挙げてください」

 俺たちは、頭を悩ませた。


 文化祭というものは何度か経験してきたが、テーマなんて決めたことがない。これは、とても難しいと思った。

「はい!」

 莉奈先輩が手を綺麗に挙げる。

「はい、莉奈さん」

 小野が莉奈先輩にあてる。

 莉奈先輩は元気に椅子から立ち上がり、答える。


「グロッキー文化祭」

 当然のごとく却下された。

「文化祭で何グロッキーなことするんですか?」


 小野が冷静にさばく。

 莉奈先輩が再び手を挙げる。

「莉奈先輩」

「はい、汗と涙出かけた文化祭」

 莉奈先輩のボケを聞くだけで2時間以上かかった。

 

 最終的に決定したのが、大空の考えた案の

「それぞれの思いが呼んでる神ケ谷の祭り」

 だ。今まで出てきた案の中ではまだいい方だった。


 この案を提出したところ薫先生は「う~ん、やっぱり文化祭実行委員で決めるよ」と言われたそうだ。

 つまり、大空の考えたテーマは不採用ということになる。




 気が付けばもう日が暮れていた。そろそろ部活も終わりかと思った時だった。

「セクハラくん」


 唐突に小野に呼ばれたのだ。

 俺は驚いた。昨日会った時からどこかおかしく、今日あっても避けられているような感じを受けたからだ。


「ど、どうした?」

「お話があります。ちょっと」

 と言い、手招きされた。どうやら、ここで話すわけでは無いようだ。

 部室を出て廊下に出た俺と小野の間には冷たい空気が流れた。


 それは、気温が低いからそう感じるのでは無く、本当に空気自体が冷たい気がした。

「お、小野」

「セクハラくん…あの…昨日はすみませんでした」

「はい?」

 予想外の言動に俺は間の抜けた声を出してしまった。


 小野は頭を下げている。

「いや、ちょっと…頭をあげろよ。まずなんで誤ってるんだ?」

 ゆっくりと小野の口が動き出す。

「だって…昨日…その、デートを邪魔しちゃって…」

「あ、あれはデートじゃないんだ」

「でも、あの小さくて可愛い娘って彼女さんですよね?」

 小さくて可愛い娘というのは楓のことだろう。


 俺は、右手を顔の前で左右に振った。

「違う、違う。あれは妹だ。妹に頼まれて一緒に出かけてただけだ」


 嘘はついていない。全て本当のことだ。

「妹さん…ですか。って、妹さんと腕を組んで歩いていたんですか?」

「ご、誤解するなよ、別に如何(いかが)わしいことはしてないからな」

 必死に誤魔化そうとしているように見えるかもしれないが、何度でも言おう。全て本当のことだ。誤魔化しているわけでは無い。


「本当ですか?」

「ああ、もちろん」

 大きく頷いて見せた。

「てことはまだチャンスはあるんですね…」

「何か言ったか?」

 顎に手を当て何かを言ったようだったが、小野の声が小さくて聞き取れなかった。


 彼女は「いいえ」と答えたが、なぜか気になった。

「あ、そうだ。遥斗くんとお呼びしてもいいですか?」


 不意なことだったので驚いた。本当、今日は沢山のことに驚いている。


 しかし、俺にとっては『セクハラくん』よりは名前で呼ばれたい。『セクハラくん』では、見知らぬ人に誤解されそうで怖いのだ。


「ああ、そうしてくれると助かる」

「分かりました」

 小野は、綺麗な笑顔で微笑んでみせた。


 再び部室に戻り、帰る準備を始める。

「どこいってたんだい!遥斗くんみやびー」

 莉奈先輩が大声でこちらにやって来た。

 どうやら、莉奈先輩は小野のことを『みやびー』と呼ぶらしい。


「廊下で話があっただけです。それより、莉奈先輩は帰る準備しないんですか?」

「君たちを待っていたんだよ!可愛い後輩だもんね」


 両手を腰に当て、ポーズを取る。

 その時だった。小野が突然反応した。

「遥斗くん。莉奈さんのことを名前で呼ぶなら、私のことも名前で呼んでみてください」

「ほぇ?」


 今日の小野はどこか変だ。というか、最近変だ。何かあったのだろうか。

 そう思っている間も、ずっと俺の方を見てくる。


 小野だけかと思ったら、今度は大空のこちらに来て

「じゃあ、私も名前で呼んでよ」

 名前で呼ぶのが流行ってるのかどうかは分からないが、どことなく緊張する。

「―わ、分かったよ…雅…、木葉…。これでいいか?」


 言うと、二人は首を上下に首肯した。

 俺には、何がどうなっているのか分からなかった。

「うん、うん。みんな仲良くて本当によろしい」


 ただ莉奈先輩だけはいつもと変わらくて逆に安心した。


こんにちは水崎綾人です。

ここ最近疲れがたまってしまって大変です。結構、この話は文章がいつもより拙いかもしれません。すみません。

最後まで読んでいただけた方は分かると思いますが、ついに遥斗が木葉と雅を名前で呼ぶようになりました。これは大きな進歩ではないでしょうか。そもそも、なぜ、雅が遥斗のことを『セクハラくん』と呼ばれなくなったのでしょうか?

次話もお楽しみに~

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