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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第4章「先輩、妹、部員に幼馴染み」
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第23話「ひょんなことから遥斗は実妹の楓とデートをする 後編!!」

 まず楓と向かったのはファッションショップだった。


 なんでも新しい服が欲しいらしい。


「え~と。何にしようかな?」


「お前まさか、買う気じゃないよな?」


 楓はキョトンとした表情でこちらを見る。

 まるで、「え?買うんじゃないの」とでも言うような顔で。


「ちなみに経費は誰持ちで?」


 恐る恐る聞いてみる。

 すると、楓はニコっと微笑み、じっと俺の方を見つめてくる。


 これはつまり、俺が負担するという、物言わぬ合図なのだと悟った。


「分かったよ…あんまり高いやつは買えないからな」


「はーい」

 と右手を元気よく宙に上げ返事をして、早速服を探しに行った。


 俺はその後を一生懸命についていった。

 楓は次々と服を持ってきた。


俺は、あまり女子の服装には詳しくはないから、よくは分からないが物凄く短いショートパンツも持ってきていたため、驚いた。


軽く10着くらいはあるように見える。


「お前それ全部買うだなんて言わないよな?」

「えへへ…流石にそれは悪いと思ってるよ」


 実の妹が常識の範囲内の思考を持っていて良かった、と今本気で思った。


「じゃあ、試着してみたらどうだ?」

 楓はその手があったかと言わんばかりに、右手で拳を作り、左手を平にし、なるほどのポーズをとる。


「じゃあ、お兄ちゃんは私の試着姿見ててね!」


「分かった、分かった」

 軽く手を振り、楓が試着室に入るのを見送った。


 数分後。


 試着を終えた楓は、ゆっくりと試着室の薄いカーテンを開け、ヒョイっと顔を出した。

「お兄ちゃんいる?」


「ああ、いるよ」


 そう声を掛けると楓は安心したような表情で微笑んだ。


「どうだ?ちょっと見せてみてくれよ」

「うん」


 言うと楓は、カーテンを開き全身を見せる。

 その姿は、なんというか、正直可愛いと思った。


 細やかで華奢な身体をピンクを基調とした、可愛らしい衣服が包み込んでいた。下は、ヒラヒラのすごいスカートが、これまた楓を可愛く演出してくれていて、我が妹ながら脱帽のレベルだ。


 ここまで可愛く見えると、本当に自分の妹なのかと心配になってくるまである。

「どう?」


「え、ああ、すっごく可愛いと思う」

 楓はさらにニコっと微笑んで、試着室のカーテンを閉めた。


 そしてまた数分後。

 元の服に着替えた楓は俺に試着していた服を差し出した。


「これにする!」

「いいのか?お前が持ってきた服あと8着くらいあるぞ」


 楓は首を左右に振り俺の言葉を断った。

「お兄ちゃんが褒めてくれたから、これでいい」


 と差し出された服を俺は手に取り、レジへ運ぶ。


 見事に8,867円のお買い上げだった。これは1万円札でのお支払いとなった。


 確かに個々では安いが、一気にこれだけの出費になると実に痛い。


「ありがと、お兄ちゃん」


「どういたしまして」


 ひきつった笑顔で答える。


 幸い、俺は外出するとき多めに財布に入れてくるので、金欠にはなっていないがこれが続くと正直きつい。


 今、俺の財布の中には、普段のお小遣いと、お年玉、貯金したお小遣いとが入っている。合計すると2万円弱はある。


 なぜこんなにあるかというと、理由は簡単。

 ただ単に使う用事がないのだ。使うと言えば、ラノベを買ったり、たまに行く学食費くらいだ。




 俺と楓が次に入ったのは、ゲームセンターだ。


 俺は、あまりゲームをやらないため、この手の店にはあまり入ったことがない。


 あたりを見渡すと、クレーンゲームや、ドライブゲーム、音ゲーなど様々あった。


「どれやりたいんだ?」


 楓に訊ねる。が、返答がない。こういう場所はゲームの音で声がかき消され、相手に聞こえないと言うことが多々ある。

「楓、楓」


 と、俺は楓の肩を軽く叩きコンタクトをとる。


「ひゃあ!」


 と悲鳴を上げ楓は身をすくめた。

「え、え…と」


「なんだ…お兄ちゃんか。良かった。痴漢だと思ったよ」


 どうやら俺は痴漢だと思われたらしい。複雑な心境である。


「それでどうしたの?お兄ちゃん」


「どれやりたいんだ?」


 いつもより大きな声ではっきりと喋った。

「アレやりたい」


 と楓が指さしたのは、アニメなどでは定番のクレーンゲームだ。


 ラブコメ主人公たちはクレーンゲームが以上に高いという何ともハイスペックなのだが、俺はラブコメなんてものは人生で1回も経験したことが無いため、そんなスキルは存在しないのだ。


 そのため、楓にとってやることは出来ない。なので、ここは楓本人の技量に任せる他ない。


「じゃあ、俺両替してくるから待ってて」

「うん。分かった!」


 俺は、ゲーム機があるコーナーから少し外れ、両替機が置いてあるところを目指した。


 手持ち2万弱。しかし、あまりお金は崩したくない。両替機に千円札を投入するのに若干悩んでしまった。


 が、楓を待たせるわけにもいかず、俺の千円札は一瞬で百円玉10枚に変わった。

「おう、待たせたな」


 もときたクレーンゲームのコーナーに戻ると、楓が待ちくたびれたような態度でこちらを見ている。


「もう、遅いよ」


「ああ、悪かった。ほら」

 と楓の手に取り敢えず百円玉を握らせ、ゲームをやるように促した。


 コイン投入口に百円玉を投入し、ゲームが始まる。


 ゲーム機からは、どこかメカメカしいポップなBGMが流れ、ボタン操作をするようにと指示ランプが点滅する。


 1番のボタンで左右移動、2番のボタンで前後移動となっている。


 楓は真剣な眼差しでボタンを操作する。位置決めを終えたクレーンは、徐々に真下に下りていく。


 楓が狙っているのは、どうやら、可愛らいいくまのぬいぐるみらしい。


 とうとう、クマのぬいぐるみの真下にまで来たクレーンは、見事にくまの少し手前を掴もうとしていた。


そしてまた、クレーンは上昇する。

 クレーンには、くまのぬいぐるみは掴まってはいない。


「ざ、残念だったな」


「ぅ…ぅ……。もう一回!」


 少し顔を赤らめながら楓はそう放った。

 最初から一回でやめるわけがないと思っていたので、想定の範囲内ではあった。


「仕方ない。ほら」


 楓にもう百円渡した。


 再びコイン投入口に百円玉を放り、ゲームが始まる。


 また、メカメカしいポップなBGMが流れ、指示ランプが点滅する。


 ゆっくりと楓がボタンを操作する。


 右に、右に、後ろに、後ろにと、さっきより意識して後ろに設定したようだ。


 2番のボタンから手を離すと、クレーンが下降を開始する。


 ウィーンと音を立て、徐々に下がっていく。


 俺たちの方からはベストな位置に見えたのだが、今度はぬいぐるみの後ろをクレーンが掴もうとし、取れなかった。


 楓の目は、もうクレーンゲームの魅力にハマっており、やめる気配は無かった。


「あの…楓さん?」


 つい敬語になってしまう。

 楓は静かにこちらを向き、聞き取れる最低限の声でこう言った。


「もう一回」


「はい」


 俺は、さっき両替した百円玉残り8枚全てを楓に託した。


 恐らく、これだけやって取れなければ楓も諦めるだろうという微かな希望を信じて。




 それから25分後のことだった。

 ついに楓に託した8枚の百円玉が全て無残にゲーム機の中へと消えていった。

 俺はそれを、遠い目で見てきた。

 楓はクレーンゲーム機の前に立ち尽くし、絶望に浸っているように見えた。

 一秒でも早くこの場から脱さないと、また千円札を両替しなければいけないような気がした俺は、楓にゲームセンターから出ることを提案した。

 その時だった。

「楓。そろそろ――」

「今度は、お兄ちゃんがやってよ!」

 などと、とんでもないことを言ってきたのだ。

 さっきも言ったが、俺にはクレーンゲームで完璧に景品を取れるような恵まれた才能はない。つまり、クレーンゲームで景品を得ようだなんて不可能に近いのだ。

 しかし、涙ぐんだ目で見つめられては断れない。これは、フェアじゃないだろと思いつつ、俺は財布に目を落とした。


 財布の小銭入れには、さっき楓に買ってやった服のお釣り133円が入っていた。


 これ以上、両替機で千円札を崩したくない俺にとって、この百円玉の存在は非常に助かった。


 逆に言えば、この百円玉1枚で取らなければ、また千円札1枚が両替機の中に吸い込まれていくことになる。


 ゴクリ。と、生唾を飲み込み、財布から百円玉を取り出す。


 楓が苦戦したクレーンゲーム機のコイン投入口に俺も、コインを投入する。


 クレーンゲーム特有のメカメカしいBGMが鳴り始め、指示ランプが点滅する。

 もう10月も下旬だというのに、頬を汗が伝うのが分かる。


「楓。お前が狙ってるのって、あのクマのぬいぐるみだよな?」


「うん!」


 楓の狙っているものを再確認し、ボタンに手を掛ける。


 楓が今まで失敗してくれていたお陰か、割と取りやすそうな場所にぬいぐるみは来ていた。


「よし…行くぞ!」

 自分に気合を込めるかのように声を上げ、1番のボタンを押した。


 1番のボタンは左右移動だ。ぬいぐるみがある平行線上にクレーンを移動させる。


 次に、2番のボタン操作だ。2番のボタンは前後移動。これでぬいぐるみと垂直な位置にクレーンを置くことができれば良いはずだ。


 俺は、2番のボタンを押し、クレーンを移動させる。


 ウィーンと動くクレーンに真剣に目をやる。

 

 今だ!


 と、心の中で叫び、ボタンから手を離した。

クレーンは止まり、そのまま垂直に下降していく。


 垂直に下降したその先にはクマのぬいぐるみがあった。


 クレーンはクマのぬいぐるみの腕と顎の部分を固定しそのまま上昇を開始する。


 だが、クレーンゲームというのは最後まで分からないのだ。


 クレーンが上がりきったところで一旦停止するが、そこに行った時に起きる振動で景品が落ちるという事例は数多く聞いたことがある。


 緊張しながらも、俺と楓はクレーンを見つめる。


 なんとか最初の関門はクリアした。が、関門はまだある。それは前後移動で前に戻ってくる時に起こる振動だ。


 これによっても景品はよく落ちる。


 俺と楓の緊張は絶えない。


 なんとか、ここも凌ぐことが出来た。


 しかし、景品が少しずつではあるがクレーンからズレ落ちてきているのは確かだ。


 クレーンがもとの位置に戻ろうとするたびずれ落ちていく。


 そして、あと一歩でもと来た場所だというところで、景品であるクマのぬいぐるみはクレーンから外れ落下した。


 俺たちは息を飲んだ。


 が、落ちた景品は取り出し口に通ずる穴とぬいぐるみの山の間に落ちかすかにバウンドをした。


 そのバウンドにより、クマのぬいぐるみは見事に穴の方に入ったのである。


 これはもう、奇跡のようなものだった。


 俺は、慌てて取り出し口を開けると、そこには楓が悪戦苦闘した、あのクマのぬいぐるみがあった。


 俺はそれを取り、楓に手渡す。


 すると、楓はそのぬいぐるみを両手で受け取り、満面の笑みで


「ありがとう」


 と口にした。

 それには俺もどこかこそばゆいものがあり、頬を掻いて言った。


「どういたしまして」



 ゲームの音でうるさいながらも確かに俺たちの声は通じ合っていた気がした。


こんにちは水崎綾人です。

 ついに楓とのデートも後編です。ファッションショップからのゲームセンター。どちらも遥斗にとっては大きな出費ですね。ここで第23話内で遥斗が出費した額をちょっと出してみますか。

まず、ファッションショップで8,867円。

そして、ゲームセンターで1,000円、100円。

合計すると、9,967円です。約10,000円ですね。高校生にしては物凄い出費です。遥斗の貯金があってこそ出来たことです。

 さて、もうそろそろで第4章も終わりになってきます。次回は一体どうなるのか?

 次話もお楽しみに!

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