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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第3章「部活と悩みと俺の意志」
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第14話「差し出された手」

 翌日。いつになく自然に目が覚めので、とても気持ちよく起きることが出来た。


「ふあぁぁ…。快眠だったみたいだ…」

 自分の睡眠に評価を付けるのが俺の日課なのだが、ここ最近ずっと「不眠」という評価ばかりだったため、「快眠」という評価はとてもレアだったと思う。


 だが、俺の快眠だったという余韻は一瞬のうちに打ち消された。目覚まし時計が示していた時刻は8時12分。俺の家から学校まで歩いて20分。走って15分と言ったところか。学校には8時30分までに行かなければならない。今から顔洗って、歯を磨いてなどいろいろと支度してもせいぜい5分から10分は使ってしまう。つまりは…遅刻してしまうのだ。


 慌てて制服に着替える。左のポケットには携帯音楽プレイヤーを、右のポケットには携帯を…って充電切れてる!?


「マジかよ…しゃーない携帯は置いていくか」


 俺は、急いで階段を駆け下りた。母さんはなんで起こしてくれなかったんだよ。


 リビングに入るとテーブルの上にこんな置き手紙があった。


 お母さんは町内会の集まりで公民館に行ってきます。


 お昼代ここに置いとくネ!

           母より


 そうだったーー。母さん今日町内会の集まり行くって言ってたじゃん。じゃあ戸締りも俺がやんなきゃなんないのか。俺はとりあえずテーブルに置いてあったお昼ご飯代を財布にしまい、洗面所で顔を洗い、歯を磨いた。時刻は8時20分。俺は、玄関を勢いよく飛び出し、物置から去年の夏に親父が乗ってパンクして以来載ってなかった俺の自転車を引っ張り出してきた。いくらパンクしていようと歩くよりは早いはずだろう…きっと。


「頼むぜ…マイ・バイセコー」


 サドルに腰掛けペダルを勢いよく回し始める。車輪のホイールが間接的にアスファルトに当たり、進むのが遅い。それでも必死に漕ぎ続ける。


 風を切っているのが分かった。かすかに頬邪を伝わる風が心地いい。時計は8時27分弱を示していた。校門が徐々に近づいてくる。そこには、松前がいたがお構いなしに校門に突っ込んだ。結果としては遅刻にはならなかったが、俺はまた松前に連れられて生徒指導室に向かうことになった。


 その後、朝自習の時間の全てを生徒指導室で過ごした。何を怒られたかと言うと1つ目に自転車を駐輪場に止めず、校門にいきなり突っ込んできたこと。2つ目に学校に登録されていない自転車であったこと。3つ目に自転車がパンクしていること。以上の3点について、きっちりと怒られてしまった。薫先生は俺と一緒に謝ってくれた。本当に感謝しているとしか言いようが無い。


「全く君は何をしているんだ?」


 廊下を歩きながら薫先生が訪ねてきた。それについて正直に俺は答えた。すると、薫先生は小さな声で、クスクスと笑い出し、やがて大きな声で笑い出した。


 ちょっとそれは失礼なのでは…?


「ああ、すまん、すまん。あまりにしょうもない理由で馬鹿馬鹿しくてな…」


 それから教室に着くまでずっと笑っていた。

 教室に入る前に薫先生は、笑いすぎて涙目になった目をこすりながら俺に言ってきた。


「ふぅ…これからは気をつけるように」


 教室に入り朝のホームルームが始まった。

 俺が鞄から教科書やノートを取り出していると、後ろから須藤に肩を叩かれた。

「おい、遥斗」


「なんだよ?」


「やっぱ柏崎は大空さんのこと狙ってるぜ」


 また、その話か…。


「お前もその話好きだな」


「お前のライバルだもんな」


 須藤はおどけるように笑ってみせた。

「だから、興味ないって」


 嘘だ…本当はそんな話聞きたくないのだ。柏木と大空が仲良くなるのは、大空にとって良い事なのだろうが、俺はそれがどうしても腑に落ちない。


「そうか?」


 どうやら須藤は諦めたらしく話をやめてくれた。


 朝のホームルームが終わり休み時間になった。特にやることのない俺は机にうつ伏せ、寝たふりをして時間がすぎるのを待った。人間の耳というものはとても優秀で、聞きたくもないのに音が聞こえてしまうのだ。リア充どものうるさい声が、まるで、ラジオのノイズのように耳障りだ。そんな騒音の中に聴き慣れた声が混じっているのに気付いた。


 俺は伏せていた顔を上げ、声のする方へ見た。そこで、起きていた出来事とは。


「そうなんだ…」

「木葉ちゃんは休みの日とかどうしてるの?」

「休みの日?私の休みの日なんか聞いてもつまらないよ~」


 大空と柏崎が会話していたのだ。大空は辛そうな顔をしていた。その表情は前にもどこかで見たことのある表情だった。

 もしかして、毎日こんなことやられてるから疲れきった顔をしているのか?


 今度こそ助けなきゃ…いや、待て。何を助けるというのだ?大空と柏崎はもしかしたら仲が良くて、助けて欲しそうに見えてるのは俺だけなんじゃないのか?そんな思考だけがグルグルと頭の中を周り、久々に大空のことで気持ちが悪くなった。こんなこと出会って以来だ。



 次の休み時間に俺は大空に呼び出された。

「なんだよ…話って?」

 大空の重たい顔つきに少々戸惑ってしまう。

「さっき私と柏崎くんの会話見てたでしょ?」

「え?ああうん。目に入ったからちらっとな」

 大空は溜め込んだものを吐くかのように言い出した。


「私さ、明日柏崎くんに遊びに誘われたの」

「遊びにって…つまりデートってことか?」

 恐る恐る訊ねる。


「わかんない。でも、遥斗はどうして欲しい?」

 どうして欲しいかだって?なんだその質問。

「どうして欲しいって、どうしたいかはお前が決めるもんだろ?」

 はぁーと小さく溜息をついた大空はさらに入れに言う。


「そうだもんね…。遥斗は助けてくれないもんね…。思い出の続きとか言ってもさ。結局は…」


 そのセリフに俺は引っかかるものがあった。気づけば怒りという名の感情が言葉になって現れていた。


「お前だってよく分かんねぇんだよ。友達欲しいって言ったり、いざ仲良くしてくるやつがいれば俺にどうして欲しいかって聞いてくるし、意味分かんねぇよ」


 取り返しのつかないことを言ってしまった。本当はそんなこと心にも思っていないのに。気付いた頃には、もう遅かった。大空の瞳には大粒の涙のようなものが浮かび上がってきていた。


「おおぞ…」

「ばか…」

 俺が声を掛ける前に大空は、俺に背中を向け教室に戻ってしまった。

 俺はまた大空が差し出した手を掴めなかったのだろうか…


こんにちは水崎綾人です。

木葉と遥斗との間でまたもや暗雲が立ち込めてきましたね。

部活に入部したことでほのぼのするかと思ったら柏崎がやって来ました。遥斗はどうするのか?

次回第15話もお楽しみに!

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