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隣の彼女は幼馴染み!?  作者: 水崎綾人
第1章「幼馴染みがやって来た!」
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第1話「奴は突然やって来た!」

 俺のクラスに転校生がやって来た。


 俺の名前は奥仲遥斗。自分で言うのもなんだが、非リア充なのは間違いない。


 もし、うちのクラスにヒエラルキーがあるとするならば、限りなく下位の方だろう。


 高校で転校生が来るのはアニメや漫画の世界の中だけだと思っていた俺は心底驚いた。


ガラガラと教室の扉が開きこのクラスの担任前宮薫先生が入ってきた。薫先生の後ろには明らかにこのクラスの生徒ではない人間が後をつけてクラスに入ってくる。薫先生は言う。


「えー。このクラスに転校生がやってきました。じゃあ、自己紹介よろしくね」


 薫先生は言うと、今まで下を向いていた転校生の女子は顔を上げこちらに目を合わせてきた。

 その瞬間俺の中の時間は完全に停止した。

 なんであいつが…。

 どうして?


 俺がそう思ったのにもちゃんと理由がある。

 それは昨日のことだった




 俺は不快な寝汗とともに目を覚ました。

 時計を見ると時刻は十一時四十五分。完全な遅起きだった。


それでも一応腹に飯を入れておこうとリビングに向かうために階段を下りていくことにした。


 階段を下りていくと下の方から母さんの声がした。

「あっ。遥斗。丁度いいところにきたわ。さっきお隣に引っ越してきた大空さん。それであちらが大空さんの娘さんの木葉ちゃん。昔一緒に遊んだことがあるんだけど覚えてない?」


 俺の目の前には、物腰の柔らかい優しそうな女性と明らかに今風の女子高生的な格好で、腰くらいまである綺麗な茶髪の可愛らしい女の子が玄関に立っていた。


 どうやらこの人たちが隣に引っ越してきたらしい。


 苗字は大空と言うのか…。珍しいな。

「え?あ、いや…」

 昔遊んだことがあるのか?全然覚えてないな。


 俺は右手で頭を掻き、軽く考えながら遠い記憶をたどる。昔っていつだよ、ってか全然覚えてないや。木葉…このは…コノハ?全く思い出せない。


 こういう時は、素直に話すのが一番。

「す、すみません…覚えてないです」

 精一杯の笑顔ではぐらかす。

 大空の母は言う。

「あはは、そうでしょうね。もう10年くらい前ですもんね」


 それに倣って母さんも口を開く。

「そうですよね、あれからもう10年ですかぁ」


 俺たちの間にしんみりとした空気が流れる。

大空木葉なる人物はどこを向いたらいいのかわからないのか、斜め下ばかりをずっと見ている。


 俺は、こういう空気がどうも苦手だ。この場から脱する策をあれこれ脳内で考えた。

 その結果、大空木葉に話しかけると言う無謀な策が一番いいと決断が出た。


 なぜなら、大人は大人、子供は子供というように同じジャンルで会話が出来れば空気の悪さもある程度は解消出来ると思ったからである。


 俺は、話しかける前にバレないように大きく息を吐いたり吸ったりした。


 自然と手汗がにじみ出る。正直、イケイケそうに見える女子は苦手なのだ。


 だが、迷っている暇はない。今はこの空気から逃れることの方が先決だ。


 俺は意を決して大空木葉に話しかけた。

「あ、あの…よろしくな」

 精一杯の声かけだった。

 だって仕方ないじゃん。女の子に話しかけるのって物凄く緊張するんだぜ、と心の中で叫んだ。


「あ、うんよろしく」

 と、何ともそっけない返事が帰ってきた。

 うわー感じ悪っ。俺が大空木葉に受けた一番最初の印象だ。


 この時俺は思った。

 出来ればこいつとは関わりたくねえ…と。




 そんな俺にとっては最悪な出会い方をした相手が今、目の前にいるのだ。


 彼女は、黒板に綺麗な時で「大空木葉」とゆっくりと丁寧かつ正確に書いた。

 続いて自己紹介に移る。


 彼女は綺麗ではっきりとした滑舌で

「初めまして、大空木葉です。神ケ谷市に住むのは幼稚園の頃以来で、久しぶりにこちらに来られてとてもワクワクしています。皆さんと早く仲良くなりたいので、これからよろしくお願いします」


 パチパチと拍手が大空へと鳴り響く。

 クラスの男子は雄叫びを上げるごとく叫び出した。おそらくは、先程の大空のコメントにときめいたのだろう。クラスでも結構イケイケ男子の柏崎が大空のことを狙っているのはひと目で分かった。


 また、女子は女子で「あの娘可愛い」などと盛り上がっている。

 仕方あるまい。高校で転校生など珍しいのだから。


 自己紹介を終えた大空に薫先生は、席を指し示す。


「じゃあ、大空の席はそこの空いている席に」

 と、なぜ空いているかこのクラスの生徒である俺もよく知らないが、大空は空いている席に座った。


 こうして、俺の夏休み明け最初の学校生活が始まった。




 キーンコーンカーンコーンと4時限目の授業終了の鐘が鳴り響いた。

 いつもは弁当を持ってきている俺だが、今日は母さんのミスで持ってきていない。


 珍しくコンビニで昼食を買った。サンドウィッチをコーラを飲みながら食べる。何とも不思議な味だ。


 ハムがコーラのおかげでシュワシュワしている。


 ふと、大空の方に視線を放ると、大空は隣、近所のやつと仲良く話し、その周りには人だかりが出来ていた。

 物凄く人気で、まるでアイドルか何かのようだ。




 帰りのホームルームが終わり、いよいよ下校の時間になった。

 この時間帯は割と面白いものだと俺は思っている。


 部活に入っていないものは、友達と遊びに行くとか行かないとかで話していたり、部活があるものは急いで活動場所に向かう。


 さっきまで同じ授業を受けていた者が各自で全く違う行動をするのだ。


 そうこう言う俺は、鞄に教科書やペンケースなどを放りこんでいる途中だ。


 部活に入っていない俺には、下校すると言う選択肢しか与えられていなかったが、ダメもとで、俺のすぐ後ろの席の須藤に話しかけた。


「なあ、お前今日部活あんの?」

 須藤は剣道部なのだが、部が弱小すぎて練習時間と練習日数が少ないのだ。


 だから、もしかしたら…と思っていたが、帰ってきた反応はその全く逆どころでは無く、むしろ斜め上だった。


「悪い。今日部活はねんだけど彼女との記念日でさ、これから彼女のとこ行かないと」

 とてつもなくリア充臭い内容で断られてしまった。


 そんな、須藤に対する返答は一言で足りる。

「リア充爆発しろ」

 俺は、やむを得ず教室を後にした。廊下にはイケイケな連中らがうようよいて不快だった。


 聞きた気なくても話していれば自然と耳に入る。

 俺の耳にもイケイケ連中らの会話が入ってきた。


「このあとボーリング行かね?」

 どうして、この手の連中はボーリングやカラオケなどに毎日行きたがるのか。


 高校に入学した当時、俺もイケイケなリア充ライフを夢見たことがあった。


 しかし、俺はリア充にはなれなかった。

 なぜなら、彼らは毎週のようにカラオケだ、ボーリングだと行きたがる。


 これではお金がいくらあっても足りなくて仕方がない。


 彼らが一体どこから遊ぶ金を仕入れているのだろうかと疑問だった。

 そんなことを思いながら俺は、玄関近くまで歩いてきた。

 下足箱付近で上履きを脱ぎ、下足箱から外履きを取り出す。


 外履きに履き替える際、玄関の窓の向こうに見覚えのある人物が玄関の外の壁に寄りかかっていた。


 まるで、誰かを待っているかのように。

 その人物は、ここ最近で俺に大きな印象を与えた人物だった。


 

 大空木葉だ。



 外履きに履き替えた俺は足早に玄関を後にした。

 昨日の一件以来俺は彼女に苦手意識を持っているからだ。


 大空の横を通り抜け、さらに歩く速度を早める。

「ねえ」

 あの手の女子は表向きは明るいことを言ってこっちを安心させるが、裏ではどんな悪口を言っているか分からない。だから協力絡まない方が身の為なのだ。


「ねえってば」

 つーか、このあとどうしようかな?あのリア充須藤には断られちゃったしな。どこか寄って帰ろうかな。


「ちょっと、ねえってば!」

 その声とほぼ同時に何かが俺の右腕を力強く引っ張った。


 それによりバランスを崩した俺は、僅かに転びそうになった。


 いったい誰に引っ張られたのかと思い後ろを見ているとそこには…。

 俺が関わりたくないと思った人物。

 転校初日からクラスで人気になっている人物。


 そう。大空木葉がいたのだ。

「ちょっと、聞こえてたのに無視してたの?」

 大空は少し上目つかいでこちらをにらんでくる。


 ここで初めて先程から発せられていた声が、自分に当てられたものだと知った。


「ねえってば」

 ぼーっとしている俺にまたお大空が声を発する。


「聞いてるの?」

「ああ、どうした?」

 ぎこちないながらもしっかしと応答してみせた。


「待ってたのよ」

「誰を?」

 聞くと大空は俺の方を指さした。

 なんと、驚くべきことに俺のことを待っていたというのだ。


 俺は、何がどうなっているのか全くわからなくなってしまった。

 その時だった。俺は何を思ったか中学時代のことを想い出した。


 あれは中学2年生の頃。同じクラスで好きだった女の子がいた。


 彼女は、クラスでもトップクラスに可愛い娘で、イケイケなグループに属していた。

 ある日、ひょんなことから彼女と放課後の二人きりになる機会があった。会話は予想以上に弾み、楽しい時間が流れていると思っていた。


 すると、その女の子が何故だかいきなり俺に告白をしてきたのだ。


 今考えると意味のわからない展開なのだが、当時の俺は、その娘のことが好きだったため、舞い上がってしまい自分もずっと好きであったと勢いで告白してしまった。


 すると…。

 彼女はケラケラと笑い始めたのだ。俺は、何がおかしいのかよく分からなかったが、すぐに笑った理由が分かった。

「お前となんか付き合うわけ無いでしょ。まじウケるわぁ」


 その翌日に分かったのだが、彼女からの告白は彼女の加わっているグループの計画したドッキリだったという。


 そのドッキリにまんまとはまった俺は、残りの中学校生活を哀れみと嘲笑を受けながら過ごしてきたのだ。


 だから、俺はもう騙されたくない。そんなアニメみたいな素敵ラブコメ展開など現実には存在しないのだから。


 だから俺は大空にこう訊ねる。

「誰が立てたドッキリ計画だ?ドッキリ大成功のプラカードはどこだ!?」

 思いの丈を全てぶつけた。恥ずかしいことに若干声が裏返ってしまった。


 大空の表情が、俺の不審な行動のせいか本当に引き気味だった。

「そんなことされてるの?」

 本気で心配しているような視線と言動が心に突き刺さり無性に痛い。


「いや、何でもない。忘れてくれ…」

 自分に情けなくなり、消え入りそうな声で大空に発した。


 そのまま、帰ろうと大空の方から帰路の方へ向き直すと、また腕を引っ張られる。

「私は、そんなことしないから」

 真剣な表情ではっきりと口にしたそのコバは、心にくるものがあった。


「だいたい、友達もいないしね私」

 大空が発した「友達がいない」という言葉が気になった。


 あれだけ自分の周りに人が集まってくれば俺なら、友達だと思ってしまう。

 よく分からないままに俺は大空に礼を言った。


「それで、俺を待ってたってなんか用でもあんのか?」

 ずっと疑問に思っていたことを訊ねる。

「このあと暇?」


 と、大空は俺の予定を伺ってくる。この聞き方はどことなく危険な匂いがする。

 だが、俺には断るだけの理由がないし、結局は大空と帰り道が同じなので大空の誘いに答えた。


「ああ、暇だけど」

「このあとちょっと付き合ってよ」

 と自分の胸の前で手の平を合わせお願いのポーズを取る。


「ね、ね、ね、幼馴染からの頼みだと思って、ね?」

 昔、大空と出会っていた記憶がない俺からすれば、幼馴染みからの頼みと言われてもどこか腑に落ちないところがある。


 このまま、校門前で話していると、変な噂が立ちそうなので、俺は校門を出て歩きながら考えることにした。大空も俺の横についてくる。


「分かった、分かったよ」

 大空の頼みを承諾することにした。

 


 はあ…これから疲れそうだ。


今回生まれて初めてネット小説を書かせていただきました。と言うよりは小説事態を初めて書きました。暖かい目で見ていただけると幸いです。


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