プロローグ 出会い別れ出会い
ども、お久しぶりの方はお久しぶり。初めましての方は、はじめまして。
前作のデータの入ったUSBが寒中水泳のためお亡くなりになり、色々な設定等が無くなってしまったので、取り敢えずこちらを書きながら、別作品も更新できたらなと考えております。
突然だが、俺の以前の名前は『大上 一刀』と言った。
日本のとある地方都市の生まれで、その地方には日本ではあまり多くない『狼男」伝説があるところだ。そんな日本生まれ日本育ちの俺だが、祖母はバルト・スラブ系民族の血を引いた日本人とのハーフで、俺には少しだけ異国の血が混じっていることになる。
そんな俺だが、端的にいうと日本で死んだ。珍しく大型台風が直撃をしたあの日、俺は婆ちゃんや爺ちゃん、それに近所の知り合いを避難所まで連れて行った後、自分の荷物を持って避難所に移動していた。
その時点で、川は氾濫寸前であまり悠長に構えていることは出来ない状態だった。
そんな、避難所に移動している俺の耳に、必死な女性の声が聞こえてきた。
俺はその声が聞こえてきた方に走って行くと、そこには身重な女性が、川の中に残っている子供に向かって泣きながら呼びかけている姿があった。
俺はその光景を見て状況を理解し、持っている荷物をその場に置くと荷物の中からロープを取り出し地格の電柱に巻き、その反対側を自分の体に巻きつけた。
「俺が行きます! 貴方は川から少し離れて!」
突然の俺の声に、女性は驚いたようだが、少し迷った後川から離れた位置へと移動してくれた。
俺は流れが急な川の中に入り、ゆっくりと歩みを進めていく。幸いなことに少女が取り残されている場所までは、手すりを伝っていけるが、気を抜けば急流に流れを持って行かれそうになる。
だが、あまり悠長にもしていられない。先程からも、徐々に水嵩が増してきているのだ。
「わーーーーーん!?」
「大丈夫だよ。おじさんに掴まって」
どうにか少女のところまで辿り着いた俺は少女を抱き上げしっかりと掴まるように促すと、少女は泣きながらも俺にしっかりと掴まってくれた。
俺は、来た時よりもさらに身長にきた道を戻っていく。
そして…。
「もう大丈夫だよ」
川から抜けだした俺は少女を女性の方に行くように促す。身重な女性なところには女性の旦那であろう人物と、何人かの男性が集まっていた。
これなら大丈夫だろうと、俺は自分にまいてあるロープを解こうとした。
「あぶない!」
それは誰の声だったろうか、その声が聞こえた次の瞬間、俺は濁流に飲み込まれ意識を失った。
それが、俺が覚えている大上一刀としての最後の記憶だった。
そして、俺の人生はそこで終わるはずだった…。
『子連れな狼』
今俺は『ウェア』として第二の人生を送っている。大上一刀として意識を失った後、俺は次に気がついた時には草原にいたのだった。
その草原は俺が住んでいた地方にはないほど広い草原で、ところどころには日本では見たことのないような植物があった。
俺は突然のことに混乱したが、突然頭のなかに情報が流れ込んできた。その情報は今俺がいる世界のこと、そして俺自身の事だった。
俺がいる世界は『ヤコブ』と言う名前であり、文化レベルは中世ヨーロッパほどだが、魔法や錬金術と言った技術が発展しているため、かなり便利な世界だということがわかった。
そして俺は、人間ではなくなった。
名前 未定
種族 神狼
加護 神狼の加護
特技 努力・観察・鑑定
称号 心優しき人狼
というのが俺のことだそうだ。
神狼とは狼男のことだそうなのだが、この世界では狼男はある種の伝染病だということになっている。狼男に噛まれたり傷つけられた時、その傷から感染するのだそうだ。
但し、俺の種族『神狼』というのは、古代にいた種族で神の祝福を受けたものであり、間違っても病気などでなれるものではないようだ。
特性として、狼人間になることが出来、その場合の能力は人間の時の比ではないようだが、人間の姿をしている時でもかなりの高スペックではあった。
誰が何故、俺をこのような世界に連れてきて、何故知識を与えるのかは分からないが、どうやら俺はまだ生きることが出来るようだ。
そして、この世界で生きていくにも名前が必要だと考えた俺は、悩みに悩んだ末『ウェアウルフ』から『ウェア』と言う名前を思いつき、そう名乗ることにした。
そして、世界をのんびりと見て回りながら、俺は自分がどんなことが出来るのかを試しながら、様々な国、場所を見て回った。
そんなことが50年を過ぎた頃、俺にも『友』と言える存在が出来た。
様々な国で、様々な種族の知り合いが出来、生活もそれなりに充実してきたのだが、そんなある日あまり良くない話が飛び込んできた。
それは、エルフの親友が住んでいる街が、魔物の襲撃にあって壊滅したというものだった。
俺は、その真偽を確かめるために全力でその街を目指して移動を開始した。そして、俺が街についた時、そこには廃墟が広がっていた。
「彼は最後まで、街と家族を守って…」
臨時に作られた避難所に、彼とその奥さんは眠っていた。その顔はどこか満足気であり、そしてどこかつらそうにも見えた。
「この人の最後の言葉です。もし、貴方がこの場に来たのなら、俺達の子供を頼む‥、そう言っていました」
そう告げる女性は、布に包まれた一人の赤子を抱きかかえさせてくれた。その子は紛れも無く彼の子供で、俺もよく知っている赤子で…、俺が名前を付けさせてもらった赤子だった。
「あ~?」
その赤子、ティンクと名づけた赤子は、俺の顔をぺたぺたと触りながら小さく声を上げている。
多分だが、自分の両親が死んだこともわかっていないだろう。
「今日から…、今日から俺が君の家族だ」
この子が大きくなって一人で生きていけるまで、俺がこの子の家族になろう。
俺が、この子を見守っていこう。
それが、この世界ではじめて俺に居場所を与えてくれた、この世界ではじめて俺の友になってくれた、親友への唯一の弔いだと、俺にはそう思えたからだ。
「ティンク、今日から俺が君の父親だ」
「あー! あー!」
こうして、俺とティンクの物語が始まることになった。
ども、作者です。
とりま、のんびりゆっくり更新していければなと。更新自体はゆっくりで、文は短いとダメダメですが、なんとかがんばれればなと思っております。