第三話
男はいつものごとくけだるい仕事を終え「お友達.com」に向かっていた。
もちろん42歳の男としてではなく21歳美容師見習い美紀としてだ。
「こんばんは。彼氏と別れちゃったんですか?僕も最近彼女と別れちゃったんですよ」
「へえーそうなんだ、それじゃあ私達仲間だね(笑)」
「そうですねー振られちゃって辛いです」
「あ、そういえば君は名前はなんて言うの?」
「雄二って言います、昔はゆうちゃんとか呼ばれてました」
「じゃあ私もゆうちゃんって呼んでもいいかな?」
「全然問題ないですよ僕も美紀さんって呼んでいいですか」
「いいよー。ところでゆうちゃんは仕事何してるの?」
「自動車の整備工場で働いてますよ」
「じゃあ車とか好きなのかな?」
「別にそんなことは無いですよ」
「あ。もうこんな時間だそろそろ寝ないと」
「そうですね。また話しましょう」
「こちらこそよろしくー」
パソコンの電源を切ると男はいつものように煙草を吸い至福のときを過ごした。
翌日も何も変わらない倉庫の仕事が待っているだけの男には何物にも変えがたい時間であった。
翌日、けたたましい目覚ましの音に男は起こされた。
男はぼんやりとした頭で目覚ましを止めると煙草を一本吸い朝食の準備を始めた。長年の一人暮らしのせいか料理の腕前はそこそこであった。
白米をオカズのウインナー等で食すと歯を磨きヒゲを剃り仕事へ行くために着替えをした。この生活スタイルは気がついたら男に染み付いていた。
ルーチンワークと化した仕事はいつもどおりこなし家路についた。
このような単調な毎日を過ごすうちに自然と男は心の奥底で刺激を欲するようになっていった。だがその欲求の存在には男自身も気がついてはいなかった。
男の刺激を欲する感情が爆発する日はそう遠くなかった