第二話
第二話です
「お友達.com」
名前の通り孤独な人間が友達を募集するだけのインターネット上の掲示板。
朝起き、仕事に行き、寝るだけの
味気ない日常を送っていた42歳の男は無口なこともあいまり友達と呼べる存在が一人もいなかった。
男は友達が欲しかった。とにかく友達が欲しかった。
「42歳。男です。倉庫で働いています。誰か友達になってくれませんか?」
男はそのような実直な友達募集の書き込みを「お友達.com」に書き続けた。
しかしながら男に返事をよこす人間は一人もおらず、
男は絶望していた。
しがない42歳の男と友達になりたい人なんて居るはずないのかと。
しかしながら男は「お友達.com」を見続けていた。
それは一種の未練とも取れるものだった。
気がつけば男は仕事から帰るやいなやパソコンの電源をつけ「お友達.com」のページをすぐさま開くのが習慣になっていた。
男は「お友達.com」を毎日見ているうちにある傾向に気がつくようになった。
若い女性の友達募集に対しては返事が沢山来ており、男の友達募集に対しては返事がほとんどまったくと言っていいほど返事が来ないということだ。
そして、女性の書き込みに対する返事のほとんどがあわよくばという男の下心丸出しのものだということに。
インターネット上の顔が見えない関係ですら本当のことを言ったら全く相手にされないのか。
男は孤独から抜け出したかった。
男は考えた。
「俺も、女のふりさえすればインターネット上では誰かに構ってもらえるのではないか」
男は決断した
「21歳です。美紀といいます。美容師の見習いをやっています。最近彼氏と別れて寂しいので誰か相手してください。」
男は「お友達.com」に書き込んだ。
そうするとあれよあれよと言う間に男達から返事が来た。
「19歳男です。大学生です。彼氏となんで別れちゃったんですか?」
「会社員をやってる24歳です。こっちの方に出てきて友達が居ないのでよかったら友達になりませんか?」
男は次々と来る男達からの返事に不思議と気分が高揚した。
それが男に対する返事ではなく、「美紀」に対する返事にも関わらずだ。
「うーん、ちょっと喧嘩しちゃって。相性が悪かったのかなあ。」
「会社員なんですか。どういう仕事してるんですか?」
男は「美紀」として「お友達.com」で知り合った男達と毎日のようにやり取りをするようになった。
友達も娯楽も全くない男は居場所を見つけた気分でいた。
「お友達.com」
ここで若い女のふりをしていれば誰かが相手をしてくれる。
男はどんどん「お友達.com」にのめりこんでいった。