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数分後に婚約破棄ですので、もう諦めて朗らか平民ライフを送ろうと思っていたのに、隣国の王子に攫われました

作者: せいら
掲載日:2026/06/26

ーガシャン!!

高級な食器が音を立てて、床に飛び散る。

「「きゃっ!!」」

数人が悲鳴をあげる。

構わず私は

「早く片付けなさい!

こんなにまずい下世話なものをこの私に出した方が悪いのよ」

と言い、優雅にその場を去る。

これが私の、当たり前の日常。


「アメリア・ヴィルヘルミナ様!

ご卒業おめでとうございます!」

数人が駆け寄ってくる。

当然よね、公爵令嬢にして王太子の婚約者ですもの。

それくらいして頂かないと。

「ええ、あなたたち、私が居なくなっても、優雅で気品溢れる令嬢でいるのよ」

「ええ、もちろんですわ」

この時の令嬢たちの顔が引きつっていることをこの時の私は知る由もないなかった。

「… ア、アメリア・ヴィルヘルミナ様!

ご、ご卒業おめでとうございます…」

この子はソフィア・ハーヴェル。

殿下と仲が良くて癪なのよね。

「あなたも一緒に卒業じゃなくて?

煩わしいから視界に入らないでちょうだい。

話しかけないで!」

「す、すみません」

今日は魔法学園卒業パーティ。

殿下との婚約が正式に発表される、はずだった。


パーティにて

ここは上品な食事が出るから好きなのよね。

さあ、今日は私が主役よ!

殿下との婚約お披露目パーテイーでもあるんだから!

「アメリア様!こちらもお飲みください!」

そう渡された赤紫の飲み物を1口飲むと、視界がぐらつき、気を意識を失う。

これ、ワインじゃない!

そして思考はショートした。


夢を見ていた。

汚く狭い部屋で、夜遅くに画面を見ながら何かをしている少女。

なにこれ?

いいえ。知っている。

ここは、私の部屋!!

そしてここは、乙女ゲーム、『セレスティア・ラブクロニクル』の世界!

そして、アメリア・ヴィルヘルミナは悪役令嬢!

このパーティーで断罪されるんだわ!!

「いやあああああ!」

思い出すの遅すぎでしょ?

よくある転生ものなら、もっと早い時点で気づいて作戦を立てる時間があるはずなのに。

…もう考えても無駄ね。

数分後に私は断罪され、国外追放され、平民になる。

もう逃げられないもの。

前世の記憶を今まで知らなかったとはいえ、ソフィアをいじめてきたのは私自身。

もう諦めて、朗らか平民ライフを送ろう。


「アメリア・ヴィルヘルミナ!

今日このときを持って、貴様との婚約を破棄する!!」

たった今婚約者でなくなった、エドワード・ローゼンハルト王太子殿下がの声が、会場中に響き渡る。

会場内の貴族はざわつく。

公爵令嬢様が婚約破棄された!?

みたいに。

…で、ですよねー!!

わかってましたわ。そんなこと。

ここで変に、

「なぜですの!

理由を聞かせてください!」

などと言っても恥をかくだけ。

急に人格変わったとは思われてしまうけれど、もうこの国にはいられないのだし、どう思われてもいいわ。

どうせソフィアに犯罪まがいの嫌がらせをどーたらこーたら言われるだけでしょう?

「どうした?

ショックで言葉も出ないか。」

「いいえ、殿下。

了解致しましたわ!

ソフィア様とご婚約なされたのでしょう?

おめでとうございます。

私のことは国外追放にしますわよね?

もうここから去ってもよろしいかしら?」

「…は?

何言ってんの?」

ソフィアが怪訝な顔をする。

「どうしたんだ急に!

今までの高飛車なアメリアはどこに行った?」

私は不敵な笑みを浮かべて、

「どうしたもこうしたもありません。

殿下なんかにヤキモチを妬いているのが恥ずかしくなっただけですわ」

「な、なんだと!?」

はいはい、もういいですか?

平民になったらどんなことするか、計画を立てたいのですけど。

もう権力には、頼れないから。

そう、思っていたのに。

「待て!」

そこには、それは美しい王子様が立っていた。

美しい銀髪に、透き通るようなサファイヤの瞳。

乙女ゲームの世界だもん。

人外のような美しい人がいてもおかしくないよね。

なんて呑気に考えていると。

「アメリア嬢、是非我が国に来ていただきたい。」

「…へ?」

しまった!

間抜けな声が出てしまった〜!

ど、どうして私を?

今までわがままな悪役令嬢だったのに。

あ、でも、乙女ゲーム的には優秀な設定の方がやりがいがあるからか、成績は優秀ではあったのよね。

だからかしら。

「なぜそんな女が欲しいんだ。

わがままで今までまソフィアをいじめていたんだぞ。」

「そ、そうですわ!

アメリア様ったら、酷いのよ!」

不自然なくらいにソフィアが焦っている。

何故かしら?

貴族の言葉遣いも抜けている。

「彼女の魅力が分からないのか。

まあいい。

後悔すればいい。」

そう吐き捨てて、私の手を引き、会場を二人であとにした。


馬車に揺られる。

二人っきりで気まずいわ!

沈黙破っちゃうもんねっ

「あ、あの!

なぜ、私を助けてくださったのですか?」

「…そうだよな。

ちゃんと伝えなくては」

…???

どういうこと?

意味が全くわからないわ

「俺の名前はシリウス・グラディエル、転生者だ」

…え?

私と同じ、転生者?

「この世界は前世にあった乙女ゲームだ。

俺はそのプレイヤーだった。

…なんて言っても伝わるわけないか。」

「いいえ!

私も転生者ですもの!

分かりますわ!

身近に転生者がいたなんて!

心強いですわ!

でも何故、悪役令嬢とわかっていながら私を助けたんです?」

「見てられなかったからだ。

推しが断罪されるのを。」

…推し?推し!?

「アメリアが推しだったんですの!?」

「ああ、断罪されてなお、気高く美しい彼女が1番好きだった。」

「…マニアックですわね」

「なんだと!」

そして二人して、笑う。

とても幸せだった。

「…同じプレイヤーなら、どこかであっていたかもしれませんわね。」

「そうだな

だとしたら運命だ」

数秒の沈黙。

それを、彼が破る。

「どうする?」

「選べ」

「このまま“断罪される役”として終わるか」

「それとも——俺と一緒に、“物語の外”に出るか」

その瞬間、背後から声がした。

「待ってください!」

ソフィア・ハーヴェル。

え?

馬車に乗ってるのに追いかけてきたの?

すごい執着心だわ。

イケメンが好きとか?

王太子殿下がいるのだから、もういいでしょうに。

涙を浮かべているのに、その目は揺れていない。

「私は……ヒロインですのに!」

だが彼は振り返らない。

「その役はもう終わった」

そして、彼は私の手を離さないまま言った。

「私、あなたと共に、物語の外に出ます!」

私は人生でいちばん明るい笑顔で誓う。

すると、彼は今までにないくらい優しい笑顔で言っ。

「じゃあ、行こう」

その瞬間、私は理解した。

これは断罪の物語じゃない。

その手は、もう二度と離れなかった。

そして私はようやく、“物語の外側”へ連れていかれる。

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