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回復しかできない私は、 魔王継承権三位を選んで穏やかに生きたい  作者: 谷口 由紀
第一章  崩壊と覚醒

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閑話  第三位

玉座の間を出たあとも、脳裏にはあの眩い光が鮮明に残っていた。


子どものように小柄な体躯の女から溢れた、淡い緑色の柔らかな光。

あれが、他種族の「回復を『与える』力。



魔族の回復は他者から奪うものだ。


弱き者から力を吸い上げ、己の傷を埋める。

それが理だ。

それでこそ生存競争だというもの。


だがあの女は違った。

ふらつきながら必死に両手を合わせる。

自らを削り、他者へ与える。

与えるたび削られるものに気づいたはずなのに。


愚かだ。


実に効率が悪い。


長くは持たない。

あの程度の力では、すぐに壊れる。


そう結論づけたはずなのに。


獣王の爪が男の胸を裂いた瞬間、女の表情が変わった。


恐怖ではなかった。

絶望でも、怒りでもない。


あれが「神」とやらが存在していた時代の真なる祈り、とでもいうのだろうか。


守るという意志だけで、

自分を燃やすような祈り。


全く理解はできぬ。

そもそもヒトなどという絶滅した存在を理解する必要もない。


それでも。

あの光だけが、妙に焼きついている。


「……くだらん」


誰に聞かせるでもなく呟く。


与えることで生き延びる種など、この世界では長くは続かない。


だが。


もし、あれが続くとしたら——。



思考を断ち切る。

必要のない想像だ。


彼は歩き出す。

それでも。


あの祈りの姿だけが、何故か、思考の隅に残る。


理由はない。

必要もない。


——ただ、消えない。



彼は頭を振り思考を止め、壁際の長椅子を眺める。



女は緊張の糸が切れたのか、この部屋に転移してすぐその場で気を失った。

床に放置しても問題はない。

問題ないのだが。

それでも無意識に長椅子へ移していた。


今もなお規則正しい呼吸音が聞こえるから、生きてはいるようだ。


今はただ、捨てることができなかったこの厄介な存在をどうすればいいか、持て余している。

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続きが気になります! 更新楽しみにしてますね。
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