第9話「獣王と星屑」
驚きは、まだ終わらない。
続いて運ばれてきたのは、
「深海の獣王のコンフィ」
肉厚な白身魚のソテー。
表面には焦げ目一つない
――なのに、ナイフを入れると“カリッ”と香ばしく、内側は白く瑞々しく輝く。
「これは炎魔術と水魔術を融合させた『調理の極致』や」
ソラがさらっと言う。
「表面を瞬間的に焼き固めつつ、完璧な温度制御で旨味を一滴も逃さず蒸し上げとる」
レンが一口。
弾力は獣肉のように力強い。
だが噛みしめた瞬間、とろりとほどけ、深海に潜む幻獣の魚を思わせる濃密な味が爆発した。
続けざまに三皿目。
「星屑の魚醤パスタ」
多彩な魚介から抽出された旨味が、魔法料理術で深く練り込まれている。
フォークで巻き取るたび、微細な魔力が輝くチーズが宝石のように煌めいた。
一口ごとに、濃厚な香りと共に身体の奥底から力が湧く。
ただ空腹を満たすのではない。回復を促す“魔法のパスタ”だ。
レンとアイは夢中でフォークを動かした。
極限状態だった肉体に、料理に宿る魔力が染み渡り、心身が生き返っていく。
それを見守るルタオの口角が、ほんのわずかだけ、満足げに上がった。




