第6話「いらっしゃい」
彼らが降り立ったのは、街の外縁、潮騒と霧が混じり合う静かな場所に佇む一軒の店だった。
看板には『霧の灯』と刻まれている。
「ここはクリフヘイヴンどころか、ベルナードで一番のおススメでな、霧の灯って店やねん。」
「へぇー、何か隠れ家って感じっすね!」
レンがお腹を鳴らしながら答える。
思えば昼頃から追いかけられ、今は深夜3時頃か、今までアイとレンは何も食べていなかった。
空腹を感じ始めたアイが、地に足をつけて安堵のため息を漏らそうとした、その時だった。
ガアアンッ!!
店の重厚な扉が、内側から爆発したかのような勢いで跳ね開いた。
強烈な熱気が外気の寒気を吹き飛ばす。
「おんどれソラァァぁぁぁぁあ!!!!!」
「こんな時間にガキ連れて何しに来やがった!!」
豪火のごときオーラを放ちながら飛び出してきたのは、大柄で筋肉質な女性、ルタオ・フェディルンだった。
彼女が持つ深紅の髪よりも赤いオーラが彼女の足に収束する。
彼女は挨拶代わりと言わんばかりに、着地したばかりのソラの腹部へ、重戦車のような前蹴りを叩き込んだ。
衝撃波がソラを穿つ。
「がはっ……!?」
ソラの身体が面白いように吹き飛び、背後の壁に激突する。
しかし、ルタオは止まらない。
彼女が右拳を握り締めると、強烈なオーラが収束する。
ソラとアイの皮膚は、目の前で空に届く爆炎が立ち上がるかのような熱気を感じた。
「爆裂炎拳!」
ルタオの拳が、一千度を超える爆炎を纏ってソラに放たれた。
衝突点が爆ぜ、熱ではなく圧倒的な圧で空気が壊れる。
その衝撃波は周囲の霧を一瞬で蒸発させ、夜の闇を烈火の色に塗り替えた。
レンとアイは、その目の前で繰り広げられた圧倒的な暴力の前に、ただ言葉を失い立ち尽くすことしかできなかった。




