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王道冒険×推理「LAST DAWN」  作者: d.2026


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第16話「悪夢」

リクは笑った。歯を見せる、あざ笑う。


「やるじゃねえか。」


「でもお前ら、実践経験すくねぇだろ?」


言い終えるより早く、リクは懐からもう一本抜いた。二刀。


腰のベルトには投擲用の小刀。手癖がいい。場数の匂いがする。


「来るぞ!」


レンが叫ぶ。


リクは霧へ溶けるように身体を滑らせ


――投げた。


キラリ。


一つはレンへ。もう一つはアイへ。


レンは弾いた。火花が散る。


アイは身を引く。


だが刃は“外れる”


――わざと外して、地面に突き刺さった。


次の瞬間、刺さった小刀から細い糸が伸びる。


「罠――!」


糸がアイの足首へ絡む。動きが止まる。


「アイ!」


レンが振り向いた、その隙を、リクは逃さない。


低く飛び込む。


狙いは喉じゃない。


脇腹。腕。太もも。


削って、鈍らせて、最後に落とす。


(こいつ……“殺す”より“勝つ”が優先だ。)


レンは受けない。受けたら沈む。


かわして、踏み込んで、刃を振るう。


だがリクは正面から受けず、半歩の横移動で剣の外へ抜けた。


「遅ぇよ!」


短い刃がレンの腕を裂く。


薄い痛みが走り、血が滲む。


それでもレンは目を逸らさない。逸らしたら、次はもっと深い。


(焦るな。勝ち筋はもう掴んでる)


レンは一歩、重く踏む。体勢が崩れたように見せる。


リクの目が光った。


「もらっ――」


来た。


レンは腰を落とし、剣先を地面へ走らせる。


刃は石畳すれすれ。


蒼雷が、霧の湿りで濡れた水膜を伝って伸びる。


「チッ……!」


リクの足が止まる。


ほんの刹那。


その刹那を、レンは“合図”に変える。


「アイ、糸を切れ!」


「うん!」


アイは風で糸を断ち切り、息を整える暇もなく術式を組む。


「風属性第Ⅰ階梯魔法:フォーガ!」


不可視の衝撃がリクの肩を叩き、体勢がわずかに崩れる。


リクは倒れない。


だが着地が乱れ、足音が一つ増える


――そこが読める。


「くそっ、連携かよ!」


リクは苛立ちを笑いで隠し、今度はソラへ小刀を放った。


ソラは避けない。


顔面に小刀が直撃する。


ソラは刃を噛んで止めた。


そのまま噛み砕く。


「なんやえらい安もん使ってるんやな。」


ソラの声は軽い。


だけどその軽さは、嵐の前の静けさだった。


リクの舌打ちが霧に溶ける。


「……なら、視界ごと奪う」


煙玉が石畳に叩きつけられた。


ボン。


濃い煙が噴き上がり、霧と混ざって世界を黒く塗り潰す。


呼吸が苦い。


目が痛む。


「見失うな!」


レンは耳へ意識を寄せる。


足音。呼吸。布擦れ――


背後。


刃の気配。


レンは反射で振り向き、受けた。


キン、と金属が鳴る。


至近距離。


リクの息が、煙越しに熱い。


「筋は悪くねえな。」


リクは剣を足で蹴って弾き、レンの視線を下へ落とさせた。


その隙に


――煙の中から二本の刃が、アイへ飛ぶ。


「アイ!!」


レンが飛び出す。


痛みを無視して、身体を差し込む。



「レン!!!!!」


レンはリベリオンで小刀を弾くが、一本は軌道が変わり切らず、腕を負傷する。


「……っ!」


リクが踏み込む。二刀の連撃。


短い刃が、命の線をなぞるように閃く。


レンは押される。削られる。


(このままだと、いずれ鈍る――)


その時、ソラの声が闇を割った。


「レン。下がらんでええ。……締めるで」


筆が走る。


墨の文字が、煙の中で赤黒く光る“予兆”になる。


リクはそれを見た瞬間、ぞわりと背筋を震わせた。


「……ッ」


逃げる。判断が早い。


――だからこそ、逃がさない。


レンは地面を斬る。蒼雷を石畳へ流す。


水膜が稲妻の道になる。


リクの足が止まる。


止まった“その瞬間だけ”、ソラの文字が完成した。


「一筆入魂:悪夢あしきゆめ


赤黒い閃光が霧を貫き、リクを撃つ。


「……っ!?」


リクの眼球が不規則に跳ね、表情が凍る。


次の瞬間、悲鳴が港に突き刺さった。


「ぐぅあああぁぁあああ!!!!!」


恐怖の幻が、骨の髄を掻きむしる。


リクは地面に爪を立ててのたうち回る。


涙とよだれ、鼻水が混ざり、顔が崩れる。


ソラは淡々と筆を止めた。


「何や早いの、ストップ」


悪夢の文字が消える。


悲鳴が、糸を切られたみたいに止んだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、、、」


リクは両手をつき、咳き込み、肩を震わせる。


さっきまでの凶悪さが剥がれ落ち、残ったのは


――生々しい恐怖だけ。


ソラが首を傾げる。


「ほな、第2セットするか?」


「い、、、いやだぁぁぁあああ!!!」


「分かりました!!!話します!!!だから許してくだざい、、、!」


そこからリクは吐き出した。


リクが所属するのはホワイトウォッシュという犯罪組織。


理由は知らないが、ゾーイという上の人間から二人を拉致するよう指示を受けたこと。


ゾーイは別件で漁師を拉致し、十三番倉庫で拷問をしているので、そこまで連れてくること。


シンを取り巻く悪意の正体が、霧の向こうから輪郭を見せ始めた。


「なるほどな。ほな自分らは用済みや」


「ちょっと寝といてもらおか」


ソラは手刀で三人の意識を奪い、物陰に三人を隠した。


「ねぇ、今拉致されてる漁師って、、、」


アイの声が震える。


レンは腕の傷を押さえ、短く頷いた。


「可能性はあるな。本来落ち合う場所にも来ねぇし」


「まぁ拷問されてんなら急いだ方がええやろな」


ザガンが拉致され、暴行を受けている――その事実が、アイの背筋を不快な予感で撫でる。


「行こう、レン、、、レン?」


呼びかけても、レンはすぐに返事をしなかった。


霧の向こう側。


巨大な影。


レンの視線は、そこに縫い付けられていた。





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