第11話「五裏霧中」
静寂が店を支配する。
カップを置く音だけが、妙に重い。
ソラが鋭い視線をレンとアイへ向けた。
「せやな、腹も膨れたところで、本題を聞かせてもらおか。お二人さん……」
「なんで騎士団に追いかけられとったんや?」
レンは一瞬、言葉に詰まる。
だが、ルタオの料理がくれた活力と、ソラが自分たちを救ってくれたという事実が、重い口を開かせた。
「……俺たちの仲間、シンが突然捕まったんだ。」
声は悔しさで震える。
シンは孤児院でレンとアイと共に育った、家族も同然の少年。
「シンとアイ、俺の3人は小さい時からずっと一緒だった。」
「やんちゃな俺、泣き虫なアイ、俺たちをいつも引っ張ってくれた、しっかり者のシン」
レンは歯を食いしばる。
「シンは孤児院が好きで、俺たちやシスター達が好きで、、、」
「この街、クリフヘイブンが誰よりも好きだった。」
「だからあいつは16歳になっても、職員として孤児院に残ることを選んだ。」
「それくらい、みんなのために行動するのが大好きなやつで、皆シンを尊敬していた。」
「1週間前、院長からのお使いで街 へ買い物に行ったシンが突然逮捕されました。」
アイが涙を堪えながら付け加える。
「理由は分からず、本当に突然で、、、」
「騎士団の拘置所に言っても何も教えてもらえなくて」
「だから、私たちは法師様に訴えようと裁判所へ向かってました。」
「すると突然騎士団が『逮捕する』と言って追いかけてきて……。」
レンの拳が震える。
「訳も分からず、逃げてたんだ。」
「逃げて、逃げて、、、」
「でももう無理だってなった時、ソラさんが助けてくれたんだ。」
話を聞き終えたソラは、〈雲断〉を指先で弄びながら、面白そうに目を細めた。
「騎士団が突然、、、なんだい、、、きな臭いね。」
ルタオが呟く。
霧の街、クリフヘイヴン。幻想的な美しさの裏側に隠された謎が、今ゆっくりと浮かび上がろうとしていた。




