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王道冒険×推理「LAST DAWN」  作者: d.2026


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第1話「開く扉」

昔々、ある所で、一人の冒険者が言った。



「大空の深さの先に、夕焼けを越えた彼方に、夜明けの広がりの果てに、未知の輝きがある。」



言葉は火種になった。


足跡は地図になった。


世界中の冒険者が宝を求めて踏み出し、国々は道を整え、港は膨らみ、交易は熱を帯びた。


発見が積み重なるほど世界は眩しくなり、いつしか“永遠に続く平和”さえ見えた。








だが、輝きが極まるとき、影もまた濃くなる。




時は流れ、世界は再び、変革の入口に立っている。


この物語は、ある街から始まる。







霧が視界を曖昧に溶かしている。


中央大陸の東端、貿易国家ベルナードの隅にへばりつく断崖の街



クリフヘイヴン



海と寒気が呼び込む深い白が、常に街を覆い、石畳も家々の輪郭も、夢の中みたいに滲ませてしまう。



街灯の光は、遠くまで届かない。


薄く引き伸ばされた線のように霧へ吸われ、地面に落ちる前に溶けていく。


その幻想を切り裂くように、石畳を叩く足音が響いた。



「逃がすな! そいつらを捕らえろ!」


霧の奥から現れたのは、胸に“剣と霧”の紋章を刻んだ騎士が三人。


甲冑が霧を弾き、息が白い煙になって広がる。


逃げるのは、少年と少女だった。


黒髪の少年――レンは、肩で息をしながらも前へ前へと走る。


少し後ろを走る少女――アイは、転びそうになりながら必死に足を動かしていた。


レンが振り返る。


霧越しに、剣の冷たい光がちらつく。


「……っ、来るぞ」


声が震えないように、レンは唇を噛んだ。


怖い。



それでも止まれない。止まったら終わる。


二人は迷路のような裏路地へ飛び込んだ。


レンは道端の木箱の山を蹴り崩す。


乾いた音。板が割れる。箱が転がる。


映画のワンシーンのように、崩れる荷物は男たちの足を止めた。


崩れる荷物が追手の足を止め、距離が少しだけ開く。


レンはアイの手首を強く引いた。


「こっちだ!」


右へ、左へ。


霧の路地は同じ景色を繰り返し、方向感覚を奪ってくる。


なのに――騎士たちは迷わない。


まるで、霧の向こうに“目印”でもあるみたいに。





前方に鉄格子の門が見えた。


レンが門を押し開け、二人で滑り込む。


アイが入ったのを確かめると、レンは門を静かに閉め、落とし棒をかけた。


息を殺す。


耳が痛いほどの静けさ。


――通り過ぎてくれ。


そこは、かつて塀付きの一軒家があったらしい場所だった。


だが堅牢だったはずの石壁は崩れ、骨だけを残した廃墟になっている。玄関だっただろう壁の陰に、二人は身を寄せた。


霧で覆われた空の下、呼吸が白く浮かぶ。


アイの肩が小刻みに揺れている。


レンは、彼女を抱きしめるようにして隠した。


温度を分けるみたいに、腕に力を込める。


――どうか、そのまま。


祈りは、霧に吸われていった。





そして、




重い足音が、門の前で止まる気配。


レンの背筋が、凍った。


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