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サジムの鎮魂歌

作者: 空木弓

物語の時代イメージは中世の東欧&亜細亜。伝説の不思議な生き物が実在すると思わなくなりつつある頃のお話。


 

  (一)


 セオジル・マイナフは息を呑んだ。

 (サジム)は確かにいたからだ。

 バロス国のアビエニスカ王がサジムを捕えたという噂を疑っていた己を恥じた。


 目の前にいるのは、腰近くまである長い黒髪をうなじの辺りでまとめている、金色の目の男だ。

 白目のない、金色だけの目。

 洞窟の中に広がる湖の畔で、大きな岩に片膝を立てた格好で座っていた。

 洞窟の天井は、城の塔がすっぽり入るのではないかと思うくらい高かった。その所々からは太陽の光が細く射し込んでおり、セオジルが訪れた午後の早い時刻には、日が沈んでまもない頃の明るさがあった。土の色は黒に近い色に見えていたが、湖の色も岩の色も、緑がかった青色に見える。

 そんな緑がかった青い景色を背に、サジムが身につけているのは、この世界の南方でよく見る着物だった。水色に見えるが、外で見たら白なのかもしれない。薄汚れているような、かなり着古した風である。セオジルはその着物に懐かしさを覚えた。故国にいた頃には似たような服を着ていたからだ。

 この者の目に人のような黒目と白目があったなら、かなりの美男子だろうとセオジルは思った。年の頃は二十才になるかどうかくらいに見える。

 しかし、人との違いは目だけではなかった。実際に会ってみたら、明らかに人と違う。

 己の目で見るまでは、人にサジムの振りをさせているのではないかと疑っていたセオジルだったが、この姿は人に真似できるものではない。

 身体全体からなんともいえないオーラが立ちのぼっているのだ。気を抜くと、ふらふらと引き寄せられそうな気がした。

 気をしっかり持つんだと自身に言い聞かせながら、セオジルはゆっくりサジムに近づいていった。

 白目がないから、サジムがどこを見ているのかわからない。感情も読み取れない。セオジルが名乗っても、「お会いできて光栄です」と話しかけても何も返さず、目以外の顔つきも全く変わらなかった。

 アビエニスカ王からは、サジムを喜ばせる音楽を奏でろと命じられていた。しかし、一体どんな音楽をサジムが気に入るのか、見当がつかない。

 サジムの座る大岩から三人が座れるほどの間を空け、セオジルは立ち止まった。


 セオジルは生まれ育った国を十七才の時に滅ぼされてからは、各地を巡り、その土地の有力者のために詩や歌を作っては、その詩歌を自ら朗読したり奏でたりすることを生計(たつき)として暮らしてきた。竪琴は故国にいた頃には気晴らしでしかなかったが、音楽はどの土地でも、どんな身分の人々にも歓迎されたから、今では生計の要だ。そんな暮らしがかれこれ二十年近く続いている。

 しかし、サジムのことは各地に伝わる物語しか知らない。実際に見たのはこの時が初めてだった。実在すると思っていなかった。

 各地に伝わるサジムの物語は、大体こんな内容だ――


 若い狩人が山奥に迷い込み、ようやく見つけた小屋に一晩泊めてくれと頼む。その小屋には親子らしい白髪の男と若い黒髪の女がいる。その女の目は黒目だけで白目がなく、狩人はぎょっとするのだが、白髪の男の目には狩人と同じように白い部分があるので、娘は稀にあるという「異形」で産まれたのだと思い、二人が勧めるままに小屋の片隅で眠る。

 しかし眠りについて間も無く、狩人は息苦しさを感じて目覚める。

 この後は二通りあって、一つは黒だけの目に青白く光る長い身体を持つものに締めつけられているのをかろうじて逃れる話と、夢うつつに黒目だけの女と契る話である。

 どちらも相手は忽然と消える。小屋も白髪の男も消えてしまい、狩人は山の中、あるいは洞窟に一人いることに気づく……

 そのあとは何事もなく山をおりるが、狩人は間も無く行方知れずとなる。


 細部に違いはあれど、共通しているのは、白髪の男と黒髪に黒目だけの女、狩人が黒目の青白く光る蛇のような長い何かを目撃すること、最後には行方しれずになることである。

 そうした話を語り伝える人々は、黒目だけの女がサジムなのだと言う。サジムと関わると人は無事ですまない、だから山奥には行くな、白目のない人に出会はったら気を付けろということが物語の教訓らしい。

 不思議と女がサジムに襲われる、あるいは女がサジムと契る話をセオジルは聞いたことがない。もっとも、娘が行方不明になり、それが神隠しや化物の仕業だとする話は各地に伝わっている。そのうちのいくつかの『神』や『化物』はサジムかもしれないと、セオジルは思っていた。

 では白目のある白髪の男は何なのか。

 それについてセオジルが尋ねると、不思議なことに答えは千差万別だった。あの男も実はサジムなのだという土地もあれば、サジムに捕えられ、獲物を呼び込むために使われている人だとも言う土地もあった。他にも夜行性の白い梟がサジムに姿を変えられたのだとか、亀の化身だとか、熊の化身だとか、山奥や川、湖に棲む様々な動物が正体にされている。

 結局のところ、サジムの姿は青白く光る長い何かと、目以外は形がはっきりしていないことにセオジルは強い興味を持っていた。共通しているということは、元になった何かがあるということだ。それをセオジルは嵐や雷といった、生き物以外のものではないかと考えていた。

 詩人、音楽家であると同時にセオジルは冷徹な観察者でもあるのだ。己の目で見たことしか信じない。それだけにバロスに捕えられたサジムがいるという噂を確かめずにいられなかった。捕えたというアビエニスカ王にも興味を抱いた。


 しかし、初めて謁見したアビエニスカ王は、思いの外、俗物だった。

 玉座にでんと座る王は、体格だけはよく、身に付けている王冠や衣服は確かに立派だったが、セオジルの目には借り物のように見えた。そして、王の目にはセオジルへの侮りが見えた。

 これまでにいくつもの王国を旅し、その国々の王や重臣に会ってきたセオジルの経験からは、アビエニスカ王が一番の小物に感じられた。

 セオジルは内心ではがっかりした。サジムを捕えたというのだから、もっと凛々しい、毅然とした王を想像していたのだ。

 いや、中身は見かけと違うのかもしれない。そう考えてセオジルは畏まっていたが、話せば話すほど、王に威厳も品位も感じられなくなっていった。

 セオジルに他国の様子を尋ねておきながら、答え始めると、すぐに横やりを入れてきて自身の自慢話をする。そんな繰り返しが何度もあった。

 聞く気がないなら、尋ねなければいいとセオジルは思う。

 自惚れ屋の身勝手な小心者。

 それがセオジルが下したアビエニスカ王の人物評だ。どうしてこんな男にサジムを捕まえることができたのだろうかと訝らずにいられなかった。

 セオジルが唯一王に感謝する気になったのは、サジムに会うことを許された時だけだ。



 アビエニスカ王にサジムを閉じ込めている洞窟へ入ることを許されてからは、これまでに見聞きした話の中にサジムの好みを知る手がかりはないかと思い返したが、何も見つけることができなかった。


 囚われたサジムは王と言葉を交わしていないというから、果たして自分と口を聞いてくれるだろうか。セオジルは内心ではびくびくしながら、竪琴を爪弾き始めた。

 サジムは岩に腰かけた状態から全く動かない。

 セオジルは素直な気持ちを曲に込めた。

 驚きと戸惑い、美しさと怖さを感じていることを音にした。

 噂ではアビエニスカ王の二人の王女は、二人ともこのサジムに一目惚れしたという。

 王はサジムに近づけまいと、二人の王女を西の山向こうの離宮に閉じ込めていた。

 セオジルはそうしたことも頭の中で反芻しながら、竪琴を奏で続けた。

 ふっとサジムが目を伏せた。

 金色の目が隠れても、身体から立ち上るオーラ、気は変わらない。いや、むしろ強くなったかもしれない。

 竪琴の音色に耳を傾けているのだと、セオジルは更に竪琴を爪弾き続けた。優しく、優雅に。

 各地の森の鳥達はセオジルの竪琴に合わせるかのように囀ずる。音楽は種を越えた繋がりを生む。そう信じてセオジルは奏で続けた。

 どれくらい弾き続けただろう。疲れて指が思うように動かなくなってきた。

 セオジルは下手な演奏はするまいと、曲を締めくくった。

 ――サジムは気に入ってくれただろうか……


 セオジルが演奏を止めても、しばらくサジムは動かなかった。目を伏せたままだ。

 そしてその身体から立ちのぼる気は強いままだった。

 セオジルはどうしていいかわからず、竪琴を脇に抱えてその場に立ち尽くした。ただサジムを見つめていた。

 どれくらいそうしていたのか。

 ついにサジムが動いた。再び顔を上げて金色だけの目を見せると、セオジルを手招き、その手でサジムが座っている大岩の近くにある、一回り小さな岩を指差した。そこへ座れということらしい。

 セオジルは指示に従った。心臓は大きく打っていた。サジムはこの拍動を見抜いている。そう思った。

 セオジルが岩に腰掛けた途端、サジムが口を開いた。

「良い曲だった。アビエニスカに命じられたのか?」

 王を呼び捨てだ。サジムは人に従わない。そういうことだろう。

「ええ。ですが、私自身、あなたにお会いしたいと思っていました。各地を回り、その地に伝わるサジムの伝説を聞き取ってきましたが、サジムとは何なのか、わからずじまいです」

 金色の目のサジムの口の端が少し上がった。笑ったようだ。

「ガビにサジムは理解できない。無駄な努力は止めることだ」

「ガビ?」

「おまえ達のことだ。おまえ達は自らを『ヒト』と呼んでいるらしいが、我々、サジムはガビと呼んでいる」

 響きのよくない呼び名だとセオジルは思った。

「あなたのお名前は?お名前をお聞かせください」

 知らず、セオジルは王に対するような言葉遣いになっていた。若い見た目によらず、金色の目の男に王以上の気品や風格を感じるからだ。

「ダルガンと呼ばれている」

「『呼ばれている』?」

 本当の名ではないということなのかと、セオジルが思わず口にした問いをダルガンと呼ばれるサジムは無視した。

 尋ねたいことが山ほどある。セオジルは次の質問を投げた。

「この土地でお生まれになったのですか?」

「この世界に生まれた」

 尋ねたいのはそういうことではないと言おうとして、セオジルは思い止まった。サジムと人とでは「世界」の捉え方が違うのかもしれない。サジムは「この世界」以外の「世界」を知っているのかもしれない。

 知りたい。彼らがどんな世界を見ているのか。この世界も彼らには自分たち、人とは違って見えているかもしれないのだ。

 ――彼らが見ている世界を知りたい。

 セオジルは強く思った。しかし、どう尋ねればいいのかわからない。

「あなたがアビエニスカ王に捕えられたというのが、信じられないのですが……」

 ダルガンの口の端がまた少し上がった。

 ――笑うということは?

「すぐにこの国を去れ。巻き添えを食らいたくないならな」

 そう言った後もダルガンは口の端をわずかにあげていた。

「ここを去らなければいけない訳を教えてください。というのも、私は昨日ここへ着いたばかりなのです。あと数日……十日くらいはこの都で過ごしたいと思っているのです」

 ダルガンという名のサジムは顔を湖に向けた。

 もうおまえに用はない。そう言われた気がして、セオジルはよろよろと立ち上がった。ふと、足元に赤い宝石のような小石が落ちているのに気づいた。拾おうとした時、冷たい声が洞窟に響いた。

「早く行け。私の気が変わらないうちに」




  (二)



 王宮へ戻ったセオジルは王にサジムの様子を尋ねられた。

 サジムと話をしたと聞きくと、王は驚いた。

「わしには一言も口を開かぬ。何故、おまえには喋ったのだ」

 王の怒りを感じたセオジルは、竪琴のせいでありましょうと返した。

「王様のご命令どおり、竪琴を弾いたのです。サジムが気に入るように願いながら」

 自分の命令に従ったことがよかったのだというセオジルの言葉にアビエニスカ王の機嫌が良くなった。セオジルに明日か明後日にまたサジムに竪琴を聞かせるよう命じ、宮殿から下がらせた。


 宮殿を出たセオジルは、強い疲労を感じた。サジムの前でも王の前でも強い緊張感があったのだ。重い足取りで宿へと戻った。

 宿泊している二階の角部屋に戻ると、もう動けなくなった。

 セオジルは一眠りしてから食事をしようと、服を着替えることもせず、ベッドに横たわった。


 次にセオジルが目を開けると、金色の目があった。

 金色だけの目だ。

 セオジルは思わず悲鳴をあげた。

 とたんに口を塞がれた。冷たい手だった。

 なぜか洞窟にいたダルガンというサジムが宿にいるはずのセオジルの目の前にいたのだ。

 ――これは、夢?

 〈静かにしろ。おまえの命を取ることはしない。おまえの竪琴の音色は美しかったからな〉

 口は動いていないのに、声が聞こえた。

 冷たい手が顔から離れた。

 セオジルは手の冷たさに顔が凍りついた気がした。

「た、竪琴をもう一度お聞かせしましょうか」

 なんとか声が出た。

 〈要らぬ〉

 ダルガンは短く答えた。

「どうしてここに?」

 〈警告するためだ。日が昇ったら、この街を出ろ。おまえはこの国のガビではないし、まだ死にたくはないだろう?〉

 ダルガンの金色の目がセオジルをまっすぐに見ている。そう感じたものの、やはりその目に感情を読み取ることはセオジルにできなかった。

「ど、どういうことです?何が起こると言うのです?」

 〈ここにいるガビ共が当然の酬いを受けるだけだ〉


 次にセオジルの意識が戻ったときには、窓の外が明るくなっていた。

 セオジルは半信半疑のまま荷物をまとめ、朝食を食べに階下へ降りた。旅立つかどうかはまだ決めかねていた。

「昨日、お城へ行きなさったよね?」

 宿の主人が好奇心丸出しの顔で尋ねてきた。人懐こさを感じる男である。年齢はセオジルより少し下だ。セオジルはこの主に好感を抱いていた。

 しかし、昨日、城へ行くと告げた時には興味なさそうだった。この変わりようはどうしたことか。

「ああ、行ってきたよ。アビエニスカ王にお会いすることもできた」

 サジムにも会えた……と言おうとして、言葉は喉で固まった。

「王女様にはお会いにならなかったんですか?」

 セオジルはかぶりを振ってから言った。

「王女様はお二人とも山の向こうの離宮にいるのだろう?そう教えてくれたのは、あんただ」

「ところが、山向こうの離宮を抜け出ていつの間にかお城に舞い戻っていたらしいんです」

「それが大問題なのか?」

「お城にも見あたらないんでね」

 セオジルは勘違いではないのかと軽く返した。

「実は離宮にいるのだろう」

 宿の主人は強くかぶりを振った。

「お城で王女様が身につけていた赤い耳飾りが見つかったんです」

 赤い耳飾りと聞いて、セオジルは座っていた岩のそばに落ちていた赤い小石を思い出した。

「その赤い耳飾りが見つかったのは、もしかして……」

 宿の主は真剣な面持ちで頷いた。

「サジムを閉じ込めている場所だったというんです」

 主は周りを見回し、囁き声になった。

「サジムに食われたんでしょうかね?」

 あのサジムが人を食うとは、セオジルには思えなかった。今までに聞いた伝説でも人を食べてはいない。

 ――しかし、今朝方に聞いたことからすると食べることはしなくても……あれは夢だったのだろうか?

 段々自信がなくなってくる。

 そもそも、夜中にこの宿へやって来れるということは、閉じ込められてはいないということだ。となると、サジムは自ら進んで、何らかの思惑があり、幽閉されている振りをしているということになる……

〈ここにいるガビ共が当然の酬いを受ける〉

 あのダルガンというサジムはそう言った。

 ――その酬いを受ける者共に、目の前にいるこの男も含まれているのか?一体何の酬いを受けるのだ?

 サジムを捕えたことかとも思ったが、昨夜の出来事を考えると、その気になればいくらでも逃げられる気がする。洞窟でのサジムの様子にも困った風は全くなかった。

 セオジルはどう考えればいいのか分からなくなった。

 サジムの言うことに従うべきか、否か。

 窓の外を見ると、人が何人も行き交っている。

 ようやく思いつき、主に尋ねた。

「ひょっとして、アビエニスカ王は以前にもサジムを捕えたことがあったのではないか?」

 主はきょとんとした顔つきになり、それから考え込む顔になった。

「あったかなぁ……あったら、噂になったはずですがねぇ……」

 その時、近くにいた主の妻、女将が振り向いた。丸顔の、宿の主より二つ年上の姉さん女房だ。

「十年くらい前に噂があったじゃない」

 主が女将に向いた。

「あれはサジムじゃなかったろう」

「でも見たことのない獣を王様が仕止めたって話だったじゃない」

「サジムじゃなかったろう?」

「でも見たことのない生き物だったのよ?」

 夫婦が延々同じやり取りを繰り返しそうだったので、セオジルは割って入ることにした。

「見たことのない生き物とは、どんな生き物だったんだい?足は何本あったのだね?」

「噂によると、身体の一部に毛の生えた四本足の、蜥蜴のような生き物だったそうです」

「……イタチの仲間では?」

 主は大きくかぶりを振った。

「毛が生えていたのは頭と尾だけで、胴体は魚のようにヌメヌメとしていたんですよ。あ……いや、そういう話でした」

 セオジルは茶を啜りながら考えた。

 ――その頭と尾に毛の生えていた、見たことのない生き物はサジムの子供、或いは仲間だったのだろうか?その子供か仲間を殺されたことを根に持って十年後に復讐を……

 と考えているうちにも、セオジルは自分の考えに首を傾げた。


 しばらく迷ったが、セオジルはとにかく一旦はアビエニスカ王の城下を離れることにした。

 東方の隣国に急用ができた、近いうちにまた来ると主に告げ、セオジルは城下町の出入口である門へと向かった。

 途中で何度か城へ振り向いた。変わった様子はない。

 ひょっとしたら、嘘をつかれたかもしれない。そんな考えも浮かんだ。

 しかし、今さら引き返すこともしづらい。

 ――隣国で数日過ごしたら、戻ってこよう。

 心が決まった。

 セオジルは隣国との境でもある山頂で、今一度とアビエニスカ王の城のある方向を見た。

 城は変わらずそこにあった。

 ただ、先ほどまではなかった灰色の雲が城の上に広がっていた。雲はこちらに向かっているように思えた。

 雨が近づいているのかと、セオジルは急いで山を降りていった。隣国の都までは三日かかる。




 (三)



 隣国の都で五日間過ごし、セオジルはバロスへと戻った。

 十日ぶりに山頂から見たバロスの城と都は前と何も変わりながないように見えた。

 しかし、山の麓に降り、町を囲む壁が見えてきた時、とうとう異常を見つけた。壁には何の変化もなかったが、壁の上に兵士の姿がなく、いつもは閉じている大門が大きく開け放たれていたのだ。

 セオジルは慎重に門へと歩いていった。

 門を通り抜ける前に一度立ち止まった。

 見えている建物や道はほんの十日ほど前に見た様子と変わってはいない。だがどこにも人が見えない。

 道にやたらと何かが小山を作って落ちている。近づいてみたら、すべて人が身につけていたと思われる物だった。ある場所には帽子と服、靴に鞄。別の場所には髪飾りに服と靴。まるで身につけていた人が溶けてなくなったか、蒸発したような感じだった。

 荷車や馬車も放置されていた。馬車に繋がれていたはずの馬はいない。

 突然目の前を何かが走り抜けた。猫だった。首に何もつけていなかったから、おそらく野良猫だ。

 セオジルは宿泊していた宿へと向かった。

 宿へ着くまでの道にも、衣類の小山があるだけで、人影は全く見ることがなかった。

 宿の建物は前のとおり存在していた。しかし窓から中を覗くと、やはり人影がない。そっと扉を押した。

 居酒屋でもある一階には、作りかけの料理があったが、作っていたはずの主も女将も姿が見えない。呼んでみた。返事はない。

 よく見たら、作りかけの鍋の前の床に、最後に女将を見たときに着ていた服と同じものが落ちていた。

 セオジルは全身に震えがきた。

 ――みんな、どこへ消えたんだ?

 セオジルは宿を出て道の左右を見た。視線の先に城が聳えている。

 セオジルは城へと走った。



 城に着いてみると、やはりあれだけ兵士や女官達がいたのに、誰もいない。身につけていた物だけが散乱している。

 本当に誰もいないのか、王もいないのかと、セオジルは王と謁見できた部屋へ駆け込んだ。

 そこでセオジルが目にしたのは、玉座に置かれた王冠と豪華な衣装だった。それらを身に付けていた人はやはり見あたらない。

 セオジルは城のあちこちを見て回った。馬は王宮の庭に何頭もいた。馬銜も鞍もつけられていない馬達は、のんびりと草を食んでいた。しかし、人の姿はどこにもない。

 残るはサジムがいた洞窟だ。

 セオジルは洞窟へは早足で向かった。胸の鼓動が激しい。息苦しいほどだった。


 前と違い、洞窟の入り口にあった扉は開け放たれ、兵士はいなかった。

 セオジルは洞窟に入ってからは慎重に歩を進めた。数歩、歩いた時に、チャプンという水のはねる音が小さく聞こえた。水滴の落ちる音ではない。何かがいるのは間違いない。

 ――あのダルガンというサジムがまだいるのだろうか?

 そろりそろりと洞窟の奥へ向かう。道は入り口から緩やかに曲がっていて、湖はすぐには見えない。

 やがて湖が見えてきた。

 湖畔の大きな岩の上には……

 何もいなかった。

 しかし、セオジルの視界に動くものがあった。

 よく見ると、岩の傍にそれはいた。

 頭と尾だけに毛の生えた生き物。長い胴体はつるりとした魚のような肌に見える。

 ――あの宿の主夫婦が言っていた、十年ほど前にアビエニスカ王が捕らえたという謎の生き物だ!

 宿の主から聞いたとき、セオジルはイタチに近い姿を想像したが、実際に見たらトカゲの頭に(たてがみ)、尾の先に房をつけたような生き物だった。

 その時、またチャプンという音がした。

 音がした方を見たら、頭と尾だけに毛の生えている生き物が一匹、湖から陸へあがろうとしていた。さらに湖の中にも頭がいくつか見える。

 ――人が消えて、こいつらが現れた……

 セオジルは背筋が寒くなった。

 ――こいつらは一体何なんだ?サジムの仲間なのか?

 そこではたと思いついた。

 ――十年ほど前にアビエニスカ王がこの生き物を捕まえたのは、この場所なのでは……

 セオジルは改めて洞窟を見回した。

 再び湖畔の大岩を見たとき、そこにあのダルガンというサジムがいた。頭と尾にだけ毛の生えている生き物を優しく抱いていた。


 何の物音もしなかった。ダルガンは忽然と現れた。

 セオジルは驚きのあまり声が出なかった。

 ダルガンの顔がセオジルに向いた。

「なぜ戻ってきた?」

 セオジルは口の中がからからになったと感じた。

「な……なぜって……」

 なんとか声を出せた。

「気になるではありませんか。一体何があったのです?どうして人々の姿がないのです?」

 ダルガンは抱えている生き物の頭を撫でた。生き物は気持ちよさそうに目を細めた。

「その生き物は、なんという生き物なのでしょう?初めて見ます。あなた達、サジムの仲間なのですか?」

 セオジルの声は震えていた。緊張のせいか、自分の声なのに遠くからの声に聞こえた。

「この子達のことを我々はワジレと呼んでいる。仲間といえなくもないな。少なくともガビよりは我々に近い」

 ――ワジレがガビよりサジムに近いとは、今、見せている姿は本当の姿ではないということか?

 セオジルは先ほどの問いを繰り返した。

「一体何があったのです?どうして人々の姿がないのです?」

「バロスの都に住むアビエニスカのガビは、王と共に命を終えた。それだけのことだ」

「そ、それだけのことって……アビエニスカ王が十年ほど前にワジレを殺した報いを城下の人々、全員が受けたというのですか?そんな……報いを受けるのは、アビエニスカ王だけでよいではありませんか!」

「この国のガビ共がやったことを真似ただけだ」

「この国の人たちが皆殺しを行ったというのですか?」

「そうだ。何も悪いことをしていないこの子達の仲間を、ここに住んでいたワジレを皆殺しにした。気味が悪いから、ここが城の敷地内だからという理由でだ。城が建つ、はるか昔からこの子達はここに棲んでいたのに、だ。飢え死にを防ぐために食料にするというのでもなく、ただ、ただ殺戮した」

 言い終えたときのダルガンからは怒りのオーラが出ているとセオジルは思った。


 ダルガンが抱いているワジレがクウと鳴いた。セオジルの予想外にかわいらしい声だった。ダルガンの怒りのオーラはその声を聞いた途端に消えた。ワジレの額にあたる部分にそっと口づけた。

 セオジルは全身がしびれたように感じ、動けなくなっていたが、どうにか口だけはきけた。

「そ、それも、アビエニスカ王が命じてやらせたことでしょう。そうして手を下したのは、兵士か王の家臣でしょう。町の人々は全く関与していないのに……」

「ここにいたワジレ達も何もガビに悪いことをしなかったのだよ。なのに皆殺しにされた。そのことをお前はどう思う?」

「そ、それは……酷いことをしたと思います。しかし、町の人、全部を殺してしまうなんて……」

「私にはこの子達のほうがガビより大事だ。ガビなぞ、この世界から消えてなくなった方が良いと思うくらいだ。しかし、さすがにそこまで残酷なことはしない。ガビとは違うからな」

 ――ガビ……我々、人のことをそんなに悪く言わないでくれ……

 セオジルはそう思いながらも、これまでに目にしてきた人のしでかした良くないことがいくつも頭に浮かんできた。


 セオジルの故国が滅ぼされた理由は、領内に良質の金属が取れる豊かな山があったからだ。同国の者達は、皆殺しにはされなかったものの、大半が殺され、残りは捕えられて奴隷の扱いを受けているという。逃げのびた者はわずかだった。

 当時、十七歳になったばかりのセオジルは、ほぼ毎日父親と山に入って狩りをしていたおかげで難を逃れた、そのわずかに逃げ延びた者の一人だ。父親は逃亡の途中で亡くなり、母と妹は麓にあった我が家で殺された。

 セオジルの故国を襲撃し、征服したのは、バロスの兄弟国である故国の北方にあったトロヤだ。トロヤの王の妹がアビエニスカ王の妃である。トロヤを援護していたバロスに対して遺恨を感じていないといえば嘘になるが、セオジルが憎いのは王族であり、町の者達ではなかった。


「宿の主夫婦までどうして……」

 その思いが強くなる一方だった。そして、彼等の最期が気になった。

「く、苦しんだのですか?ここの人達は、最期……」

 ダルガンの顔がセオジルに向いた。その目からはやはり感情を読み取ることができなかったが、全身から冷ややかな気が立ちのぼっているとセオジルは感じた。

 ダルガンはすぐにワジレの方に顔を向け直した。

「一瞬のことだから、苦しむ間も短かっただろう」

「あ、あなたが………あなたが殺したのですか?」

「気をもらった。仲間内で分けた。我らは無益なことはしない」

 口にした時はわからなかったが、ダルガンの答えを聞いた時に、違うと言ってくれることを期待していたと、セオジルは気づいた。

「あなたに『気』を取られると、人は消えるのですか?あんな風に跡形もなく?」

 ダルガンは再び抱えているワジレから顔を上げ、セオジルに向けた。その金色だけの目を見た途端、セオジルは全身が凍りついたような気がした。

「おまえも心の底ではバロスを、アビエニスカを憎んでいたのに、気にするのか?」

「た、確かにアビエニスカ王のことは憎んでいました。ですが、この都に住む人々までは憎んでいなかった。私と同じ弱い立場なのですから。その人達にアビエニスカ王と同じ目に遭わせるなんて、そんな……酷すぎる!」

 ダルガンは抱えていたワジレを地面にそっと置いた。それから、またセオジルに顔を向けた。その顔がぼやけていく。

「おまえは覚えていないようだな……せっかく見逃してやろうと思っていたのに……」

 声が頭に響いた。セオジルは金縛りにあったようにどうにも動けなかった。

 ぼやけたダルガンが青白く光り始めた。

 その光が広がっていく。

 まもなくセオジルは光に包まれた。




  (四)



 セオジルの痺れた頭に、父親について故国の山をトロヤの追っ手から逃げていた時の光景が甦った。

 追っ手の足音に、父子は必死に逃げていた。

 慣れた山から見知らぬ山へと父子は逃げた。草木を掻き分けて逃げていた親子の前に忽然と洞窟が現れた。

 父親は迷わず洞窟へ入った。洞窟は何故か真っ暗ではなかった。仄かな明るさがあった。

 やがて湖が見えてきた。その時には追っ手の足音が洞窟に響き始めた。

 父親はセオジルを大きな岩の影に潜ませた。

「そこを動くんじゃねぇぞ」

 長年狩人として生きてきた父親は、弓を構えた。追っ手を射るつもりだ。

 父親がつがえている矢は、家を出た時にはセオジルが持っていた矢だ。父親は矢を使い果たし、セオジルは自身が背負っていた矢を弓の名人である父親に渡したから、その時に身につけていた武器は小刀だけだった。トロヤの兵士が持つ大刀にはとても敵わない。

 祈る気持ちで父親の背を岩影から見ていたら、セオジルの脚に何かが触れた。ぎょっとして足元を見た。そこに見たのは、青白く光る何か。しかも、もぞもぞと動いている。

 まもなく光に目が馴れたのか、青白い光をまとっている何かの実体が見えてきた。長い胴をした、蛇のような生きだった。しかし、蛇にしては胴が太い。セオジルはそんなに太い胴を持つ蛇は見たことがなかった。

 セオジルは思わず立ち上がり、悲鳴をあげそうになった。その時、その光る生き物の、蛇とは異なる角と毛の生えた頭が目に入った。次には目が見えた。白目のない、赤い宝石のような目だった。

 その目を見た途端、セオジルは動くことも声を出すこともできなくなった。パクパクと口を動かしただけだ。

 蛇に似た生き物はするすると、動けないセオジルの足元から巻きついてきた。すぐに足全体がその生き物に巻きつかれて動かせなくなった。

 ――父さん、助けて!絞め殺される!

 口は開いても声は出ず、セオジルは心の中で叫んだ。

 まもなく蛇のような生き物の頭がセオジルの肩にたどり着いた。

 セオジルはこのまま首を絞めつけられると恐怖に気が狂いそうになった。

 しかし、蛇に似た生き物は肩からは巻きつかず、その頭がセオジルの顔の真正面に延びてきた。まるでセオジルの顔を見つめるようだった。

 いや、間違いなく赤い目がじっとセオジルを見つめていた。その目に少なくとも悪意は感じられなかった。

 蛇のような生き物の放つ青白い光が強まり、セオジルの視界がぼやけ始めた。身体に巻きつく蛇のような胴体の感触に感じていた気持ち悪さも消えていった。


 次にセオジルが見たのは、やはり赤い目だった。その目は蛇に似た生き物と同じだと思ったが、目以外の姿は違っていた。

 驚いたことに、長い髪も肌も青白い若い女だった。年はセオジルと変わらないように見えた。一糸も纏わない姿でセオジルにピタリと肌を寄せている。その温かく柔らかな感触に、セオジルは気持ちが高ぶるのを押さえられなかった。

 セオジルは女と肌を合わせたことがなかったから、初めての成り行きに心臓の鼓動が身体全体に響くようだった。無我夢中だった。


 次に気がついた時、セオジルは一人で地面に横たわっていた。やはり夢を見たのだと思った。服がボロボロになっていたのが謎だったが、よろよろと立ち上がり、周囲を見回した。

 入口の方に父親が仰向けに倒れていた。慌てて駆け寄った。

 父親は胸から腰の間に三本の矢を受けて息絶えていた。

 そして、もっと洞窟の入口近くにはトロヤの鎧を着た男が二人倒れていた。二人とも鎧からわずかに出ている目と首に矢を受けていた。人の技とは思えない見事さだ。

 悲しみがセオジルを襲った。父親は自身を盾にしてセオジルを守り抜いたのだ。

 そして、蛇のような生き物はどこにも見当たらない。

 セオジルはあの生き物を見たのも、赤い目をした女も、夢だったのだと思った。父親が命がけで自分を守ってくれていた間にあんな夢を見たことを恥じた。忘れたいと思った。


 忘れたいと強く思う気持ちがその出来事を、夢を、すっかり忘れさせていたらしい。セオジルはこんなに長い間忘れていた自分に驚いた。

 ついに思い出してしまったセオジルは、当時と同様に、悲しみと恥ずかしさに心が大きく乱れた。

 そして、気づいた。

 ――あの赤い目の女は、サジム……

 次には言い伝えにある、サジムと契った男の顛末を思い出した。

 ――俺もあの伝説の中の男達のようにこの世から消えるのか?今まで無事だったのは、すっかり忘れていたから?

 目を開けているつもりだったが、見えているのは霧の中にいるように、白だけの世界だった。

 やがて白い霧の向こうに二つの金色の光が見えてきた。

 〈思い出したようだな〉

 ダルガンの声が頭に響いた。

 〈お前が契った赤い目の女は私の母だ〉

「えっ?」

 〈母の犯した罪により、私はお前の命を奪わなければならない。母のためにこれまで先延ばしにしてきたのだが……私自身のためにお前には消えてもらう〉

「ち、ちょっと待ってくれ!私が誘惑したわけではないぞ。私は身動きできなかったんだ!」

〈アビエニスカがここにいるワジレを皆殺しにしたのと同じ理由だ。お前がこの世界に存在すること自体、都合が悪いのだ〉

 あまりの理不尽な理由にセオジルが感じたのは、不思議なことに怒りよりも悲しみだった。

「どうして、そんな……あんまりだ……」

〈その通りだ。ガビが絡むと、理不尽なことばかり起きる〉

 ダルガンの声にも悲しみが感じられた。

 金色の目が大きくなった。

〈苦しみは短い。最期にも母がお前に夢を見せるだろう〉

 セオジルは身体を動かすことも、声を出すこともできないまま、 まもなく金色の光に包まれた。

 金色の光が弱まったと感じた時、セオジルの目にあの赤い目の女が見えた。あの時よりも少しだけ年を取って見えた。女はセオジルに抱きついてきた。

〈私と一緒にこの世界から消える。それだけのことよ。安心して……〉

 その女の顔にセオジルはダルガンの面影を見た。

 それがセオジルとして最後に見た姿と聞いた言葉だった。




 ダルガンはセオジルの脱け殻となった、服や靴を暫く見つめた。それから、おもむろにその傍らに落ちている竪琴を手に取った。先ほどまで座っていた大岩に再び腰掛け、竪琴を爪弾いた。

 〈これで一番大きな課題をこなしましたね。あともう少しですよ〉

 先ほどまで抱えていたワジレがダルガンに話しかけてきた。

 ダルガンはワジレに顔を向けた。

「死ぬことのできる身体になるためには実の父親の生気を奪わなければならないなんて、そんな定めは誰が決めたのだ?それが一番腹立たしい……」

〈ガビとの交わりがサジムの身体を狂わせるからです。でも、あなたが死を望まなければ、避けられたこと……つまりは、あなたが望んだことです。この世界での五百年ほど前に同じ定めを受けたデオガは、今も喜んでこの世界をさ迷っているのですからね。いったん、あの男を逃がした時にはお気持ちが変わったのかと驚きましたが……〉

「私はデオガとは違う。この世界にいつまでもいたくはない……なのに、父親が死んでしまえば、永遠にこの世界をさ迷うことになるなど、あまりに厳しい掟ではないか。ガビの寿命はサジムよりずっと短いのだから。そして、罪を犯してしまうほど、母は確かにセオジルを愛していたのだ。父子を洞窟へ誘導したのは、セオジルを助けたかったからだ……その言葉に嘘はなかった……」

〈サジムにとっては世の摂理です。あの男が戻ってきてくれてよかった。迷っているうちに仲間に殺されてしまっては、どうしようもない。ガビは仲間同士で殺しあうのが大好きですからね。それにあなたは最期に夢を見させてあげた。なんと、優しいこと。仲間に殺されるよりずっと穏やかな最期〉

 ダルガンはワジレが話しかけている間も竪琴を奏で続けていた。その曲は、セオジルがこの洞窟でダルガンのために即興で奏でた曲だ。

「理不尽なことばかりだ……」

 やがてダルガンの金色の目から雫がこぼれ、両頬を流れ落ちた。それからは、次から次へと雫が頬を流れ落ちていった。

 ダルガンはひたすら竪琴を奏で続けた。爪も指も傷んで綺麗に弾けなくなるまで奏で続けた。



 翌朝、洞窟に細く太陽の光が差した時、洞窟にはワジレだけがいた。他には脱ぎ捨てられたような人の着物と靴。

 ダルガンと竪琴はどこにも見当たらなかった。






  ―― 完 ――





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― 新着の感想 ―
壮大な世界観とサジムと呼ばれる存在の謎に引き込まれました。特にセオジルが体験する出来事が伝説や自身の過去と複雑に絡み合い、衝撃の事実が明らかになっていく展開には私も彼の視点に立って翻弄されました。ダル…
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