009 さあ、狩りの時間です。
「見つけた。」
空間にエーデルフェルトの世界地図が映し出されていた。その地図の一点に紫色の光点があった。
「あなたは今、そこにいるのですね、斎賀五月。どうやって隠蔽していたのかわかりませんが、[隠蔽]を解かなければならないような強敵に相まみえたのが運の尽きです。」
セレスティアは女神とは思えない悪そうな笑みを浮かべてそう呟いた。
五月がセレスティアを騙して逃亡してからの10日間、聖皇国の第三騎士団による〖誓いの丘〗を中心としたローラー作戦によっても、五月の行方は杳として知れなかった。
セレスティアは怒りを蓄積するタイプだ。五月への怒りは日を追う毎に高まっていった。五月に様々な制裁を加える自分を想像することで辛うじて怒りを抑えることができていたと言ってもいい。
(以前の分も合わせて思い知らせてやるんだから)
光点は10分で消失したが、どこへ向かっているかはわかった。光点は〖誓いの丘〗から北西の位置を示していた。五月が目指しているのは、おそらくアナトリア王国だろう。
「さあ、狩りの時間です。」
セレスティアは、ラフィエステに神託を与えるために、目の前に大きな鏡を顕現させた。
◆ ◆ ◆
神殿の法円陣に女神セレスティアが顕現していた。
ラフィエステは、頭を下げて申し訳無さそうに、
「すいません、セレスティア様。わたくしが無能なばっかりに・・・。」
「頭を上げて、ラフィ。あなたはよくやっていますよ。相手が狡猾だったのです。でも、もう安心です。勇者の居所がわかりました。」
「本当ですか、セレスティア様!?」
「ええ、勇者はアナトリア王国方面に向かっています。ですので、あなたの力で速やかに勇者を捕縛するのです。」
「もう一度、機会をお与え下さいまして、ありがとうございます。次こそは、勇者を捕らえてみせます。」
「期待していますよ、ラフィ。」
そう告げるとセレスティアは消えた。
ラフィエステは神殿を出ると、付き従う護衛騎士の一人に命じた。
「勇者パーティーメンバーを招集しなさい。」
「畏まりました。」
そう返すと命じられた護衛騎士は足早に去って行った。