046 なにやってんのよ
今度こそ、居所が判明したわ。
アナトリア王国北東部最大の城塞都市ホバート近郊に出現したダンジョン。
斎賀五月はそこに居た。
今回は[隠蔽]が解かれたまま。
だから、途中からではあるが状況をリアルタイムに現場映像で確認できた。
大賢者から大魔道剣聖に職種変更するところからだけど。
どうやら、五月はホバートを拠点として冒険者を始めたらしい。
しかも、パーティーまで組んでいる。
パーティーメンバーは、司教帝が勝手に召喚した小娘と・・・・えっ?
デュラハンとフェンリルぅ~???
主戦派魔族と魔獣じゃない!
なにやってんのよ、あいつは。
なんで主戦派魔族や魔獣を仲間にしてるのよ!?
勇者としての自覚、無いんかい!?
ああ、そうだった。
五月は突拍子もないやつだった。
五月が魔属領五公主主戦派のベルゼビュートを倒してしまった。
圧倒的だった。
一応、勇者らしいことはちゃんとやってるのね。
じゃあ、なんであの時、わたしを騙して逃亡した?
意味がわからない。
五月は、戦いが終わると大賢者に職種変更して、他の冒険者パーティーの回復を始めた。
そして、いきなり、白亜とかいう小娘をお姫様抱っこした。
抵抗する小娘の耳元で囁いた内容も拡大音声でしっかり聴いたよ。
『大人しくしないと、後で人に言えないような凄い事するぞ。』
『人に言えないような凄い事』って何!?
小娘! あんたも顔を真っ赤にして黙り込むんじゃない!
あんたら、いったいとういう関係なのよ!
五月も五月だ。わたしには塩対応だったくせに!
なんか、モヤる。
突然映像が途切れ、空間に映し出された地図上から紫色の光点が消えた。
[探知妨害]か[隠蔽]を掛けられたらしい。
でも、五月の居所はわかった。
その勇姿も・・・いやいや、ゲフンゲフン、・・・勇者の責務を果たす様も確認できた。
だからって、許した訳じゃない。
五月。あんたには言いたいことが山ほどあるんだからね。
前世の分も合わせてきっちり清算して貰わなければ、わたしの気が収まらないのよ。
でも、今はラフィちゃんに任せよう。ラフィちゃんに連絡しよう。
あの子が何とかしようと手を尽くしてくれる。
最後の奥の手を使うのはその後だ。今じゃない。
そう、今はまだその時ではないのだから・・・・・・