045 圧倒的な強者
「スイッチ」
イツキがそう呟くと、ホールに自動音声が響き渡る。
『勇者・大賢者をアンインストールします』
5分後、
『勇者・大賢者のアンインストールに成功しました。次に、先程スタックに退避した英雄・魔道剣聖を通常エリアに戻した後、アンインストールします』
30秒後、
『英雄・魔道剣聖のアンインストールに成功しました。引き続き、勇者・大魔道剣聖のインストールを開始します』
「させませんよ」
ベルゼビュートが高密度ビームの連続射撃[ビームガトリング]を放つ。
ロダンがそれをモーニングスターで弾く。
「ウォーーーーーン!」
ベルゼビュートが攻撃に集中できないように白夜が繰り返し飛び掛かる。
いずれも元魔族と元魔獣なので、魔族の攻撃を見切っている。
だが、ロダンの防御をすり抜けた1発のビームがイツキを撃ち抜こうと迫る。
弾が当たれば、[スイッチ]が中断されてしまうどころか、インストール中の職種情報が失われて、二度とイツキは大魔道剣聖になれなくなるだろう。
イツキの命運もここまで、と思われた。
その時、
シュンッ!
1発の魔弾がビームを弾いた。
魔弾が撃ち出された方向でトアがサムズアップしていた。
ようやく5分経過し、
『勇者・大魔道剣聖のインストールに成功しました』
イツキの姿が大魔道剣聖に変わった。
身に着けているものは、ところどころに金の装飾のあしらわれた純白の勇者の鎧とやはりところどころに金の装飾のあしらわれた純白のマント。
その背には聖剣カルドボルグ。
「イツキ君、君は…………勇者だったのか!?」
デュークから驚きの呟きが零れた。
エーデルフェルトでは黒髪・黒い瞳は珍しい。異世界からの召喚者とその子孫だけに現れる特徴だ。だが、それも血が薄まるにつれて黒髪又は黒い瞳のいずれかしか引き継がれない。現代のエーデルフェルトで両方が揃った存在は、1000年前の勇者直系の司教帝だけだ。
イツキがさっき職種変更した時、黒髪・黒い瞳のイツキが勇者ではないのかとデュークは疑った。『勇者・大賢者』という音声が聞こえて来たから。しかし、大賢者が勇者だったという記録はない。だから半信半疑だった。
それに対して、今目の前で起きていることは何だ?
『勇者・大魔道剣聖』だなんて、もう疑う余地が無いではないか。
1000年前の勇者と同じ職種。
1000年の間、誰もが目指し誰もがなることのできなかった職種。
手には勇者にしか持つことができない聖剣カルドボルグ。
だから、イツキもまた、まごうことなき女神に選ばれし勇者。
それ以上の驚きと疑念もある。
デュークがアナトリア王国王宮の写し絵で見た、1000年前の勇者サイガサツキにイツキが瓜二つの容姿と出で立ちであること。
もしかして、イツキはサイガサツキが再臨した姿なのではないか、と。
ナナミが手で口を塞いで黙って固まっていた。
「まさか、イツキが勇者、サイガサツキ様だったなんて…………ああ、ああ、あの時のようにまた命を助けられるなんて…………」
涙を流すサリナに、イツキが心外だとばかりに抗議した。
「俺はサイガサツキではなくサイガイツキです。確かに勇者ではありますが、最近、女神に召喚されたばかりの新米勇者です。それに、サリナさんを助けたのは今回が初めてですよ」
一方のベルゼビュートは納得したように、
「やはり、勇者でしたか? 普通の冒険者風情がヒュドラを倒せるはずもありませんでしたから疑ってはいたのですが、やはりそうでしたか?」
「予想はしていたって口ぶりだな? 主戦派魔族にとって勇者は天敵。常にその可能性を予測し警戒する。それは当然のことだと思うよ。だが、おまえは勇者かもしれない俺を魔族領に誘った。なぜだ?」
「もちろん、脅威の排除が目的です。言葉巧みにあなたを魔族領に誘い込み、そこでサキュバスを嗾けるか女性体に転じた私の魅了により骨抜きにした後、時間を掛けて嬲り殺しにするつもりだったのですよ。あなたの妹さんの邪魔さえ入らなければうまくいったはずだったのですが。つい、悪い癖が出て妹さんに手を上げてしまいました。結果としてあなたの不興を買ってしまったようです」
主戦派魔族の重鎮が人間である自分に友好的なことにイツキはずっと違和感を抱いていた。
だから、この説明はイツキの中にストンと落ちた。
「だとすれば、白亜に感謝だな」
ベルゼビュートの独白はまだ続く。
「私はね、人間が絶望に泣き叫ぶ姿を見るのがこの上なく好きなんですよ。特に大切にしている家族や恋人を引き裂いて無残に殺す。そんな時、まさに至高の喜びを感じるのですよ。あなたの大切にしている妹さんをボロ雑巾のようにしたのも同じ理由ですよ」
デュークが歯軋りしサリナが憎悪の目を向けるのを涼しい顔で眺め、
「そうそう、この話をすると、皆さんそんな感じになりますね。でも、私には敵わない。それがいいんです。強者の特権というものですよ」
と、イツキを見たベルゼビュートが不審な表情を浮かべる。
「おや? こんな話を訊いても、あなたは表情一つ変えないのですね」
「そう見えるかい?」
「ええ、あなたからは怒りのオーラが感じられない。限りなく自然体だ」
イツキは溜息をつき、
「そうだね。さっきまでは、魔族領に行ってもいいかな、と思ってはいたんだよ。俺のパーティーの半分は魔族と魔獣だ。そして、白亜は俺の大切な家族だ。彼女も含めた3人と1匹が安心して暮らせるならどこだっていい。穏やかな生活が送れるなら、人族の国だろうが、魔族領だろうが、大した違いはないだろう、ってね。だが、おまえは白亜を無残に殺そうとした。おまえのその下劣な嗜好も今訊いた。誘いに乗らなくてよかったよ」
「そうですか。残念です。交渉は決裂ですね。では、私は諦めてこの場を去るとしましょう」
ベルゼビュートが立ち去ろうとするのをイツキが呼び止める。
「おいおい、何を言ってるんだ? お楽しみはこれからじゃないか」
「なんですって?」
「このまま帰す訳にはいかないんだよ。言っただろ。『白亜は俺の大切な家族だ』って。だから。その白亜を殺そうとしたおまえには俺の『教育的指導』を受けて貰わなければならないんだよ」
「素直に帰らせてはくれないと? いいでしょう。ならば、あなたをその大切な人の前で無残に殺して差し上げましょう」
そう言ったベルゼビュートが再び右手を高く翳した。
白亜を襲った無数の刃が再度空中に浮かび上がる。
ベルゼビュートが右手を振り下ろすと同時に、空中に浮かび上がった無数の刃がイツキに襲い掛かった。
「イツキ君! 避けるんだ!」
デュークが叫ぶ。
しかし、イツキは防御姿勢すら取らなかった。
完全なノーガード。
何故なら、イツキには勇者の加護[絶対防御]があるから。
襲い掛かってきた刃はイツキに傷一つ負わせることなく全て弾き返された。
「!」
予想外の結果にベルゼビュートが絶句する。
信じられない光景に、トアが呻く。
「嘘だろ? 何で撥ね返せるんだよ」
攻撃を気にも留めないイツキがそのままベルゼビュートに向かってゆっくり歩いていく。
驚愕に目を見開くベルゼビュートが左手を翳す。
何も起こらなかった。
「バカな! 重力魔法が効かない!?」
一歩一歩近づいてくるイツキに右手を翳して[ビームガトリング]攻撃を浴びせる。
だが、イツキはノーガードで全て撥ね返した。
「じゃあ、こちらも反撃するとしようか」
今度はイツキが歩きながら右手をベルゼビュートに翳す。
ベルゼビュートのものより遥かに強力な[ビームガトリング]。
ベルゼビュートの結界が破られていく。
「何なのです!? あなたは何なのですか!? くっ! あなたは一体何なんだ!!」
「丁寧語が崩れて本性が露わになってきたね」
無表情に告げるイツキ。その歩みは止まらない。
互いに[ビームガトリング]、そして更には[ビームキャノン]の応酬。
「これはもう一対一でするような戦いじゃない」
「勇者と魔族領五公主の戦いだ。常人の僕らには伺い知れないことだよ」
デュークやガゼルの感想を他所に互いの距離が近づいていく。
近距離になればなるほど互いの攻撃の威力は激しさを増していく。
しかし、イツキは受けた攻撃を全てノーガードで撥ね返し無傷。
「くっ!」
一方のベルゼビュートの結界は完全に破られ、その身体に次々と被弾していった。
イツキの攻撃手段は右手からの[ビームガトリング]とたまに左手から撃ち出す[ビームキャノン]のみ。
一方のベルゼビュートもイツキにダメージを与るべく、攻撃を多彩に切り替える。
[アイシクルガトリング][ファイアガトリング][アイシクルキャノン][ファイアキャノン][ヘルファイア][エリアストームウインド][ロックキャノン]。
様々な攻撃を浴びるイツキだが、ノーダメージだ。
繰り出された[ブラックホール]すら、イツキの髪1本削り取ることが出来ない。
「何故だ!? 何故、無傷でいられるんだ!? 人間ごときが何故――――っ!」
「それはね。俺が陳腐な君達魔族が逆立ちしたって敵わない圧倒的な強者だからだよ」
ベルゼビュートが強者だと言うなら、その攻撃をものともしないイツキはそれを上回る圧倒的な強者ということになる。
やがて、イツキがベルゼビュートの真正面に立った。
「魔法攻撃は、勇者の俺には効かないよ」
「ならば、これでどうです?」
ベルゼビュートが剣を顕現させる。
「この剣の名はダーインスレイヴ。血を求めて止まない魔剣です」
「魔族だから魔剣か。でも、そんな剣、使い切れるの?」
「侮らないで頂きたい。私は魔族の中でも剣技に秀でた選ばれし者」
「そうかい!」
イツキが背から抜き放った聖剣。
何故か、ベルゼビュートに刃では無く剣の腹で一撃入れる。
受けた一撃を魔剣で押し返したベルゼビュートがそのままの勢いでイツキ目掛けて魔剣を打ち下ろす。
重戦士並みの重い打撃に、
(『剣技に秀でた』というのもまんざら嘘ではないようだ)
とイツキは思った。
イツキの剣がベルゼビュートの身体に打撲を、ベルゼビュートの剣がイツキの身体に切り傷を、それぞれ増やしていく。
イツキの[絶対防御]も血を求めて止まない魔剣ダーインスレイヴには通用しないようだ。
それでも、イツキはベルゼビュートを刃で斬らない。
あくまで剣の腹での打撃のみ。
「剣で打撃だけとは、わたしを舐めているんですか!?」
「今のところ、殺すつもりは無いからね。殺したら『教育的指導』にならないじゃないか」
「後悔しますよ!」
剣を交えながらの会話。
「埒が明かんな」
そう呟いたイツキが次の一手に出た。
イツキの動きが変わる。
「なんですか、これは!?」
ベルゼビュートが変化に気付く。
イツキは武蔵坊弁慶だった頃の白亜にしたように連撃の速度を上げていった。
少しずつ、少しずつ。
ベルゼビュートがどこまで耐えられるか探りながら。
「おや? 気付いたかい? 俺の連撃の加速ギアは6速。ここまで、Lo、2nd、3rdとギアを上げて行ったんだけどね。ここまでは耐えられるんだね」
連撃を繰り出しながら、余裕すら見せるイツキの言葉に、
「何を意味の解らないことを言っているのですかっ!?」
ここまで試されていたのだ、と気付いたベルゼビュートに余裕は無い。
打撃は確実にベルゼビュートのHPを奪い続けている。
しかも剣で受け損ねて身体に打ち込まれる打撃は痛みの急所ばかりを狙ったものだ。
「意味わかんないかぁ。しょうがないね。だが、『教育的指導』は始まったばかり。さあ、次工程にご案内だよ。もう一段ギアを上げてみようか。4thだ」
更に連撃の速度が上がる。
ベルゼビュートは次第に圧されていき、受けが破綻し始める。
耐えてはいるが、痛みは限界に近い。
「やるねえ。じゃあ、更に次工程に進もうか。進段。5thだよ」
イツキが更に連撃の速度を上げる。
「ぐっ! がはっ! あなたは…………本当に…………人間なのですか!?」
ベルゼビュートの受けが遅れ始める。
そこにさっきまでの余裕は無い。
一方のイツキは余裕だ。
「なぜ!? ひと思いに殺らないっ!?」
「これは『教育的指導』だからね。ほらほら、受けが遅れているぞ」
ベルゼビュートは、
「クソッ! ダメだっ! もう持ち堪えられんっ!」
やがて、ベルゼビュートの受けは完全に破綻した。
白亜は3速まで持ち堪えたが4速目で破綻。
五公主の一角だけにベルゼビュートは4速まで持ち堪えたが5速目で破綻。
既に肩で息しているベルゼビュートは体中痣だらけだった。
「アイアンクラッド!」
ベルゼビュートが珍しく魔法名を叫んだ。
その瞬間、イツキの剣戟は全て撥ね返されてしまった。
対物理攻撃完全防御魔法を使ったのだ。
「剣での立ち合い中に魔法を使うなんて興覚めなことしてくれるじゃないか」
「魔族は手段を択ばないものなのですよ」
「よっぽど痛かったんだね。まあ、そこまで追い込まれてるって言うんなら、ここで土下座して謝りなよ。そうしたら許してやってもいいよ。魔族領に帰るっていうのも…………まあ、認めてやってもいいかな」
笑ってそんなことを言い出したイツキに誰もが驚いた。
主戦派魔族の、それも五公主を見逃してもいい、と言っているのだ。
「俺の目的は魔族を倒すことじゃなく、魔王の【暴虐】を阻止すること。それ以上でもそれ以下でもない。無駄な殺生はしないよ」
それを訊いたベルゼビュートが一言、
「そうですか。ですがね」
不意にイツキの後ろに[エクスプロージョン]を放った。
確実に白亜達を狙った一撃。
ドーンッ!
ブォ――――ッ!
ゴォ―――――――ッ!
イツキの背後に炎の柱が現れ、業火と立ち上る煙がその壮絶さを表していた。
イツキは油断していた。
思い込んでいた。
ベルゼビュートが自分とだけ対峙するはずだと。
「私にもプライドってものがあるのですよ。『許してあげます』『はいそうですか』って訳にはいかないのですよ。だから、これは意趣返しです。あなたの大切な人をもう一度殺してあげました。どうです? 大切な人を守れなかったあなた、今どんな気持ちですか? わたしはこの上ない至福を感じていますよ」
してやったり、と陶酔するベルゼビュート。
だが、それも長くは続かなかった。
「イツキ君! こっちは大丈夫だ!」
デュークの声にイツキが振り向くと、煙が晴れ始め、仲間が無事だったことが確認できた。
サリナが満身創痍ながら防御結界を発動し、その中でデュークが盾を構える2段構え。
破られた結界からの炎を盾で防いだデュークも火傷を負っていたが命には別条なかった。
「ちっ。冒険者風情が」
ベルゼビュートが舌打ちをする。
さっきまで笑っていたイツキが無表情にぽつりと言った。
「白亜を2度も殺めようとしたのか。やっぱ、おまえ、見逃せねぇわ」
イツキが聖剣カルドボルグを背中に背負った鞘に収め、抜刀姿勢を取る。
「だからさ。…………ここで死ねよ」
動かなくなった今がチャンスとばかり、ベルゼビュートが魔剣で斬り掛かる。
「させるかぁ―――――――――――――――――――っ!!!!」
イツキにはその動きがスローモーションに見えていた。
ベルゼビュートの魔剣の切っ先がイツキを捉えようとした瞬間、
「奥義! 絶影!」
イツキが抜刀し、音速を超える速さでベルゼビュートの間合いに入る。
今度は剣の腹ではなく刃の斬り込み。
目に見えない剣戟が立て続けにベルゼビュートの身体を捉える。
目に見えない速さの連撃。
「アッ! ガッ! グッ!」
斬り込みの角度も可変。袈裟懸け、横薙ぎ、掬い上げ。
あらゆる方向からの超速の剣戟によりベルゼビュートは深手を負い膝をつく。
「今から猟奇犯罪者ベルゼビュートの刑を執行する」
イツキがその首を刎ねる。
刎ねられた首が勢いよく宙を舞い、そして、床に落ちる前にイツキにバラバラに切り刻まれた。床に落ちたのは、細切れになった破片だけ。
首の無いベルゼビュートが崩れ落ちて動きを止めた。
そして、次第に灰となって崩れていき…………七色に輝く魔核と魔剣ダーインスレイヴを残して消えた。
奥義に気力を使い果たしてその場で蹲って動けなくなったイツキ。
奥義[絶影]は相手を倒す必殺技であるが、その音速を超える剣速は振るう側の生命力を推進力にしている為にHP量の減り方も半端ない。
イツキがステータスを開いて確認したHP残量は2。
一般人のそれも重病人のHP残量しか残っていなかった。
だが、イツキには勇者の加護[超回復]がある。
泥のような疲労感も今この時だけの話だ。
「あとひと頑張りするとしますか」
そう気合を入れたイツキがよろめきながら立ち上がった。
そのまま、ベルゼビュートの消えた場所まで歩いて行き、魔核と魔剣を拾い上げた。
◆ ◆ ◆
魔核と魔剣を拾った俺が振り返ると、みんながこっちを見ていた。
信じられない、といった顔だ。
「全て終わりました」
そして、[スイッチ]で大賢者に職種変更する。
そして、皆の元に歩み寄り、
「エリアスーパーリカバリー」
範囲治癒魔法で仲間全員のHPとMPを超速で全回復させる。
「さっきのリザレクションもそうでしたが、これも超級神聖魔法なのです! 神の御業なのです!」
ナナミさんが感動していた。
「お帰り、兄者」
白亜が起き上がって迎えてくれた。白亜からは驚きは感じられない。こうなるとわかっていたようだ。
「もう起き上がっていいのか?」
「それくらいならば…………」
血が足りないせいか、白亜の顔色はいつにも増して白い。
「じゃあ、戻りますか。みんな俺の周りに集まって下さい。」
そして、白亜を抱き上げる。
「待つのじゃ、兄者!? こんなのは恥ずかしいのじゃ!」
お姫様抱っこだからな。
手足をバタバタさせて抵抗する白亜の耳元に顔を近づけて、そっと囁く。
「大人しくしないと、後で人に言えないような凄い事するぞ」
「~~~~~~っ!」
顔色を真っ赤に替えた白亜が黙り込んで硬直した。
ああ、そうだ。
転移する前に[探知妨害]と職種変更と[容姿変換]と[隠蔽]をしておかないと。
まあ、長時間[隠蔽]が解けていたから、女神にはしっかり居所がバレているだろう。
それでも、[容姿変換]さえしておけば、聖皇国の追手や賞金稼ぎくらいは誤魔化せるはず。
HPは超回復しているから、エマージェンシーモード分くらいはある。
「探知妨害。更に賢者にスイッチ!」
いつもの電子音声。
『勇者・大魔道剣聖をアンインストールします』
5分後、
『勇者・大魔道剣聖のアンインストールに成功しました。引き続き、英雄・賢者のインストールを開始します』
30秒後、
『英雄・賢者のインストールに成功しました』
「容姿変換。隠蔽。探知妨害解除」
女神の探知を断つ。
「じゃあ、戻りますよ。転移」
俺達はギルドのエントランスに転移した。
こうして、俺達の長きに渡るダンジョン攻略は終わったのだった。




