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004 魔法とは

この世界には大きく4つの大陸がある。聖皇国のある中央大陸は周りを広大な海に囲まれている。中央大陸の西と東と北にはそれぞれ、西大陸、東大陸、北大陸がある。西大陸と東大陸は狭い地峡を介して北大陸と繋がっている。中央大陸の南には群島はあるが大陸は無い。この世界も地球のように丸いのだとすると、西大陸を海路で西進すると東大陸に辿り着くのだろう。北大陸の中央は地球の北極圏にあたる場所で、寒冷化が厳しく氷に覆われた地だ。西大陸、中央大陸、東大陸は南下する程暖かくなり、南海岸周辺は地球における赤道直下のように常夏だ。この世界の大陸は北半球に偏っている。地球の南極にあたる場所は南海の彼方。南海の果ては未到達。南半球に発見されていない新大陸があるか否かも不明。


この世界には普通の動物の他に広く魔獣や魔物が生息している。人間の他、亜人、魔族も存在する。人間や亜人の生活圏は北大陸以外の大陸。中央大陸中部と南部を治めるリザニア聖皇国、中央大陸北西部を治めるモラキア通商都市連合、中央大陸北東部を治めるアズガルド王国に分かれている。西大陸は西大陸南部を治めるカラトバ騎士団領、西大陸北部をエルフ族が治めるアナトリア王国の2カ国。それに西大陸東部の〖誓いの丘〗の周囲250kmの円形の飛び地が聖皇国領だ。東大陸は、統一国家ノイエグレーゼ帝国。北大陸は魔族領だ。



〖誓いの丘〗を離れた俺は、できるだけ聖皇国から離れた場所を安住の地とすべく街道を西に向かっていたが、移動を始めたのが午後3時くらいだったので、3時間も歩くと夜になってしまった。〖誓いの丘〗からは10kmくらいしか離れていない。

でも、一応容姿変換しているから女神本人でもない限り、バッと見で俺が斎賀五月(さいがいつき)とはわからないはずだ。


元の世界から俺の腕に装着されていた腕時計を見る。

午後6時5分か。

俺は街道から北に逸れた森に入り込むと、ちょっとした更地を見つけたのでそこを今夜の拠点にすることにした。[無限収納]からテントを取り出して張る。テントは勇者基本キットの一部だ。

勇者基本キットは便利。テント、調理器具、携帯食料、魔法大全など、屋外で生活する為に必要なものがセットになっている。テントには対魔結界まで施されている。これなら夜も外敵の襲撃を気にせず安眠できるだろう。


まずは光源と晩飯。俺は暗くなる前に周辺から石と枯れ枝を集めて即席の竈を作る。竈の中の枯れ枝に火魔法[イグニッション]で火をつけると、暗くなり始めた周囲が仄かに明るくなった。

調理器具からフライパンらしきものを選んで、干し肉を載せて竈で焼く。香ばしい匂いがしてきたので枝で作った箸で焼けた干し肉を掴んで口に運んだ。


「旨い!」


思わず独り言が出てしまった。

元の世界の昼休みから何も食ってなかったから、こんなもんでも旨く感じるんだよな。


粗末な晩飯が終わると、俺は[無限収納]から魔法大全を取り出す。

そういえば、この世界の言葉を俺は理解できるのか?


そう思いながら魔法大全を開くと、書かれている文字が読めた。

文字は日本語では無い。

何故読める?


[無限収納]からペンを取り出して、魔法大全の余白に文字を書いてみる。

意識しないで書いた文字はエーデルフェルト共通語のリザニア語だった。

何故無意識だと、リザニア語?

今度は意識して書いてみる。

『セレスティアの阿呆』

日本語で書けた。

英語は書けるかな。

『This is a pen.』

書けた。

まあ、日本語や英語は俺が知っている言語だから書けて当たり前なんだよね。

じゃあ、俺の知らない言語は?

サンスクリット語で『世界』と書いてみる。

『विश्वम्』

書けた。書けてしまった。

これが、勇者スキルのひとつ、言語情報なのか。

これ、元の世界に戻っても有効なら、通訳や翻訳者で食っていけるよね。

すまじき宮仕えをしなくてもよさそうだ。



改めて魔法大全を読む。

まず、『第一章 魔法概論』。

要約すると、こんな内容だ。


魔法とは、魔力を想定する事象に変換して現出させる行為。

事象を構成する為の要素と事象に至らせる為の過程を構築し、求める結果を導き出す。

そこに魔力を流し込めば、事象は想定どおりに現出する。

これらの全工程を文章化したものが『術式』であり、全工程を実行する手段が『術式の詠唱』である。

事象の構成要素・事象に至らせる為の過程の構築・求める結果の全てを脳内でイメージできるなら、『詠唱』は不要だ。所謂、『無詠唱』。

魔法の規模は魔力の充填量によって変わり、魔法の威力は魔力の充填速度によって変わる。


以降、『第二章 火属性魔法』、『第三章 水属性魔法』、『第四章 氷属性魔法』、『第五章 風属性魔法』、『第六章 土属性魔法』、『第七章 光属性魔法』、『第八章 闇属性魔法』、『第九章 神聖魔法』、『第十章 無属性魔法』、『第十一章 禁呪』と続く。


俺が〖誓いの丘〗に降り立って真っ先に魔法大全を取り出して慌てて憶えたのは、[イグニッション]、[隠蔽]、[幻影]、[錯覚]、[鑑定]だったが、魔法大全をよく読むと[イグニッション]は火属性の生活魔法、[隠蔽]と[幻影]と[錯覚]は闇属性の防御魔法、[鑑定]は無属性の補助魔法に分類されるようだ。


相当暗くなってきたので、竈の火では読み辛い。

このままでは目を悪くしてしまいそうなので、『第六章 光属性魔法』にある光属性の生活魔法[ライト]を発動した。

イメージできるので、もちろん無詠唱。


空中に光の球が浮かび、あたりを明るく照らす。

LED蛍光灯並みの明るさだ。

これなら、楽に読める。



『第二章 火属性魔法』にページを戻す。

第二章の見開きに代表的な火属性魔法の一覧が記載され、次ページ以降にそれらの特性と術式が記載されていた。


一覧を見る。


火属性の攻撃魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『ファイアボール(火球)』

『ファイアバレット(炎弾射撃)』

『ファイアカッター(炎の刃)』


火属性の防御魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『ファイアウォール(炎の壁)』

『ファイアシールド(炎の防殻)』


攻撃魔法や防御魔法にはまだまだあったが、次行こう、次。



『第三章 水属性魔法』にページを進める。

第二章同様にやはり見開きに代表的な水属性魔法の一覧が記載され、次ページ以降にそれらの特性と術式が記載されていた。


一覧を見る。


水属性の攻撃魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『ウォーターボール(水球)』

『ウォーターバレット(水弾射撃)』

『ウォーターカッター(水の刃)』


水属性の防御魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『ウォーターシールド(水圧防殻)』

『ウォータードームシールド(ドーム型の水圧防殻)』


攻撃魔法や防御魔法にはまだまだあったが、火属性同様、後日だ。



『第四章 氷属性魔法』にページを進める。

それまでの章同様にやはり見開きに一覧が記載され、次ページ以降にそれらの特性と術式が記載されていた。


一覧を見る。


氷属性の攻撃魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『アイシクルブリッド(氷弾射撃)』


氷属性の防御魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『アイスシールド(氷防殻)』


攻撃魔法や防御魔法にはまだまだあったが、特性と術式と合わせて後日改めて。



『第五章 風属性魔法』にページを進めて一覧を見る。


風属性の攻撃魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『ウインドカッター(風の刃攻撃)』


風属性の防御魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『ウインドシールド(エアカーテン防殻)』


攻撃魔法や防御魔法にはまだまだあったが、特性と術式と合わせて後日改めて。



『第六章 土属性魔法』にページを進めて一覧を見る。


土属性の攻撃魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『ストーンバレット』(石弾射撃)


土属性の防御魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『ロックウォール(岩壁)』


攻撃魔法や防御魔法にはまだまだあったが、特性と術式と合わせて後日改めて。

あ、でも、ひとつ面白そうなのがあった。


『奈落(落とし穴の現出)』


うん。憶えておこう。



『第七章 光属性魔法』にページを進めて一覧を見る。


光属性の攻撃魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『ビームバレット(高密度ビーム射撃)』

『レーザーカッター(高密度レーザーの刃)』


光属性の防御魔法は・・・無いのかよ。

攻撃魔法と生活魔法だけってこと?

まあ、いい。

基本的なもの以外の攻撃魔法は特性と術式と合わせて後日改めて。



『第八章 闇属性魔法』にページを進めて一覧を見る。


闇属性の攻撃魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『ハンドオブダークネス(闇の手)』

『パラライズ(相手を麻痺させる魔法)』

『ポイズン(対象を毒汚染する魔法)』


防御魔法で基本的なものは、以下のとおり。


『隠蔽(対象[自分を含む]を他者から隠蔽する魔法)』

『幻影(相手に幻影を見せる魔法)』

『錯覚(自分を認識・探索しようとする相手に錯覚させる魔法)』


闇属性の攻撃魔法はえげつないな。

防御魔法には、今後役に立ちそうなやつがあったぞ。


『結界(結界を張る魔法)』

『ディスペル(魔法術式無効化)』


うん。これも憶えておこう。

次行こう、次。



『第九章 神聖魔法』にページを進めて一覧を見る。


治癒魔法が主体だな。


『ヒール(初級治癒魔法)』

『エクストラヒール(中級治癒魔法)』

『ハイヒール(上級治癒魔法)』

『メガヒール(特級治癒魔法)』


あ、攻撃魔法もあるぞ。


『セイントアロー(聖なる浄化の矢)』

『プリフィケーション(完全浄化魔法)』


基本的なもの以外の魔法は特性と術式と合わせて後日改めて。



『第十章 無属性魔法』にページを進めて一覧を見る。


無属性魔法で主なものは、以下のとおり。


『アクセル(動きの加速)』

『エクストラクション(お目当ての物を取り出す魔法)』

『グラビティ(重力魔法)』

『アンチグラビティ(反重力魔法)』

『強化(対象物の強化)』

『鑑定(対象のステータムを鑑定する魔法)』

『時間加速(対象の時間のみを進める魔法)』

『転移(一度行った場所ならどこでも瞬間移動できる魔法)』



これまで見て来た一覧で、超級魔法に該当するやつは[ステータス画面]で確認したら、ほとんどグレーアウトしていた。

グレーアウトしているヤツは大賢者職種にしか使えないんだろうな。

女神に居所がバレるから試せないじゃん。



最後に『第十一章 禁呪』にページを進めて一覧を見る。

かなりヤバいやつばかりが並ぶ。

もちろん[ステータス画面]上ではほとんどグレーアウト状態。

こいつらも一部を除き、大賢者職種にしか使えないものばかり。

まあ、禁呪だしなあ。


しかし、この本の著者は物凄い大魔法使いというか大魔道士だったんだろうな。

もしかして、大賢者だったりして。

本の最終ページを開く。

なになに?

著者名は『大魔法使い シルク』。

自分で『大魔法使い』とか、どんだけ自信の塊なんだよ。


刊行された日付は、『統一聖皇国歴835年7月22日』。

セレスティアによれば、現在は聖皇国歴982年。

確か、アナトリア王国建国以降、世界中で多くの国が独立・建国して統一聖皇国がただの聖皇国になったことから、改元されて聖皇国歴になったんだっけ?

統一聖皇国歴867年が聖皇国歴元年だから・・・1013年前の本。


何でそんな歴史的価値がありそうな古書が、勇者基本キットの中にあるんだ?



そっと、魔法大全を閉じる。


エーデルフェルトは、いわゆる剣と魔法の世界だ。

魔族や魔獣や魔物が跋扈しているし、盗賊が跳梁跋扈しているから治安も悪い。

文明も元の世界の中世レベルだから、現代社会に生きて来た俺には不便この上ない。

そんな状況下で、魔法は俺の役に立ってくれるだろう。

この本を勇者基本キットに入れておいてくれたことだけはセレスティアに感謝だな。



今日はいろいろあり過ぎて疲れたよ。

いきなり、異世界召喚されるし。

いろいろ考えさせられることもできたし。


もう、眠くなってきた。

寝よう。


俺は野営地周辺10mに憶えたばかりの[結界]を張ると、テントに入る。


「おやすみ・・・」


横になると、すぐに意識が薄れていった。




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