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109 原因はおまえ

「じゃあ、俺に反乱軍の立て籠もる城を落とせと?」


シルクは五公主会議で、魔族領とアナトリア王国が同盟を結んだことを報告した。

五公主会議でそれが正式に承認され、各種条約が批准され、即日発効した。

これを不服とした主戦派の支配する魔族領東部と南部が蜂起。これに和平派支配地域の頼子貴族の一部も呼応した。

魔族領が内戦状態に突入したのだ。


これに対して和平派の対応は早かった。

和平派は自らを正統魔族軍と称し、蜂起した主戦派を賊軍と断じて、その鎮圧に乗り出した。

アナトリア王国との平和条約締結を決めた時に、こうなることを予想していたのだろう。

賊軍蜂起1週間後までには、隠れ主戦派だった頼子貴族はあらかじめその領地内に秘かに送り込まれていた正統魔族軍の特殊部隊に鎮圧された。


残るは五公主主戦派の支配地域。


アスタロトは他領に侵攻することなく領境を結界で封鎖し自領に立て籠った。アスタロトの支配する広大な東部地域は自給自足が可能だったので採れた戦略だったと謂えよう。


一方の北大陸南部ベルゼビュート領の抵抗は凄まじかった。

現在、ベルゼビュート魔公爵領の支配者は空位。

にも拘わらず、頼子貴族達は団結し、中央地域や西部地域の領境を超えて進撃した。当初、正統魔族軍はその勢いに押され続け、いくつもの拠点を失っていった。だが、ベルゼビュート軍の勢いは長くは続かなかった。2週間続いた進撃は補給の限界点に達したところで停止し、その後は正統魔族軍に押し戻されていった。内戦が始まって1ヶ月後までには、ベルゼビュート軍は自領内数ヶ所の拠点に追い込まれていた。

しかし彼らは、度重なる降伏勧告も無視して抵抗を続けた。

それは現在も続いている。


「でも、領主不在の地域が何でそんなに激しく抵抗するんですか?」

「元々、人間の支配地域に小競り合いを仕掛けてきたりテロを行って来たのはベルゼビュートの指示を受けた頼子貴族達だ。彼らは魔族によるエーデルフェルトの支配を諦めていない連中だ。彼らにとって魔族領とアナトリア王国との同盟関係など、受け入れられるはずが無いさ。だから、そんなことをした和平派を彼らは許せなかったんだろう」


アインズ支部長の説明を訊きながら思う。

イデオロギーに凝り固まった連中はやっかいだ。

自分達の信じることに固執してそれ以外の在り方を否定し行動に移す。

元居た世界でもそうだった。

20世紀以降だけでも有り余るくらい例がある。


民族浄化

社会主義革命の輸出

民主主義体制や資本主義体制の押し付け

宗教原理主義による支配

歴史修正主義を理由とした侵略

環境原理主義に基づく社会活動の制限


連中のやっかいなところは、自分が正しく、自分と見解を異にする者は全て悪と断じて行動することだ。

何が正しいかなんて、人の数だけ有ると言うのに。


「でも、ベルゼビュート領の兵力は正統魔族軍より明らかに少ないんでしょう? そもそも兵力に差があるんだから他領に侵攻したらダメでしょ? 自領を固めて、いっそ独立でもしたら良かったんですよ」


そう、今は雌伏してチャンスを待ては良かったんだよ。


「まあ、そう言う訳にはいかなかったんだろう。なんせ彼らのスローガンは『国賊ガヤルドを倒せ!』だからな」


シルクを倒せ?

まあ、平和条約を締結した当事者だし、それどころか同盟まで結んじゃったからなあ。

恨まれるのも仕方ないか。


「アナトリア王国と同盟を結んだ当事者だから、彼らにとってはシルクは国賊なんでしょうよ。まあ、俺の元居た世界でも国王や大統領がやり玉に挙げられるなんてしょっちゅうだったし。議会や官僚が決めたことなのにね。ほんと、偉い人は大変だなあ」


それを訊いたアインズ支部長が俺の顔をマジマジと見て溜息をついた。


居間には、いつの間にかみんなが集まっていて、俺の膝の上にはリーファ、左右には白亜とサリナが座っていた。俺の後ろにはシャルトリューズさんが控えている。


「あのな、イツキ」

「はい?」

「魔族領が内戦状態に陥った原因はおまえなんだよ」

「へっ?」


この人、何言ってるの?

俺が原因?

意味がわからない。

それともなにか?

この世の出来事は全て勇者が責任を負わなくちゃならないってか?

エーデルフェルトの勇者にはそんなルールがあったのか?

『ありがたい女神セレスティア様』から召喚時に説明を受けてないんだが?


そう謂えば、日本にも居たな。

責任押し付けられて詰め腹切らされたキャリア官僚とか企業の管理職とか。


いやだなあ。

やっぱ、勇者を返上してしまおうかな?

白亜とリーファを連れて東西中央大陸の南に広がる海の果てにあると言われている新大陸でも目指そうかな?

そうすれば、全てのしがらみから解放されて自由になれるかな?


「痛てっ!」


脇腹を思いっきり抓られた。

右横を見ると、サリナがどす黒い笑みを向けてきた。


「『白亜とリーファを連れて』どうするって?」


あ、これ、ヤバイやつ。

俺、声に出ちゃってた?


「そこにわたしの名前が無いのはどういうことかなあ? イツキはわたしを捨てようと思ってるのかなあ? どうなのかなあ? ぜび、イツキの本心を訊かせて欲しいなあ? 答えによっては――――」


サリナが左手を翳す。

その薬指に嵌ったリングがギラリと光る。


俺がアーティアファクトを送った相手には魔力パスが繋がっている。

俺の膨大な魔力を使いたい放題。

今のサリナは大魔法使いだった頃のシルクに匹敵する魔法の使い手。

そんな彼女に本気で極大魔法や禁呪を行使されたら、勇者の加護[絶対防御]に守られた俺でも一瞬で討滅されてしまうだろう。

つまりサリナは今、


『あなたの生殺与奪はわたし次第』


だと言外に告げているのだ。


「まあ、今はアインズ支部長の話を訊こうよ。うん、そうしよう」


冷や汗を流しつつ左横を見たら、白亜がほっこりとした表情でお茶を飲んでいる。

自分は置いて行かれないから大丈夫だと思ったんだね。

現金なヤツめ。

これだから女の友情ってヤツは!



「内戦状態の原因は俺ってどういうことです?」

「ガヤルド殿が五公主会議で言ったんだよ。『人間の勇者サイガイツキと婚約した』ってな」


はっ?


「もう一度お願いします」

「ガヤルド殿が五公主会議で『人間の勇者サイガイツキと婚約した』と宣言した」


ちょっと待ってくれ。


「それはもう凄かったらしいぞ。勇者イツキがどんなに素晴らしい人物なのかを4時間に渡って滔々と語り続けたそうだ。もう、『魔族領ではガヤルド女魔公爵の心を射止めた男』って噂で持ち切りなんだとよ」


おいおいおいおいおい! 冗談じゃねえぞ!

何言ってくれやがった! 何言ってくれやがった!


「ちなみに、魔属領の市中にはおまえの肖像画も出回ってるぞ。容姿変換前と容姿変換後が並んだ肖像画。珍しいよな」


アインズ支部長がカバンに刺さった筒から絵を取り出してテーブルに広げた。


「良く似ておるのお。イツキが前に教えてくれた『写真』みたいじゃな」

「使用前・使用後かね? イツキ殿?」


白亜とロダンがなんか言ってるが、そんなことはどうでもいい。

俺は自分の肖像画に唖然としていた。

なぜ、こんなものが?

しかも、どうして容姿変換前と容姿変換後の両方なんだ?


「ねえねえ、アインズ? これ貰える?」

「まあ、別に構わんが」

「あと何部手に入るの?」

「ホバート支部にあと4部ある。アップルジャック殿が5部持ってきた」

「全部頂戴?」

「俺だってアップルジャック殿に売りつけられたんだ。タダでは渡せんぞ」

「OK! 6掛けでどうよ?」

「せめて8掛けにしろよ」


サリナがアインズ支部長と商談を始めている。

肖像画なんて1枚あれば充分だろう?


それにしても誰がこんなもの描かせた?


「誰がこんな肖像画を…………」

「十中八九お嬢様でしょうね」


シャルトリューズさんが当然の如く言う。


「なんでだよ?」

「『この男はボクのものだから手を出さないように』という独占欲の発露でしょうか」


そんな発露いらない。


「よかったですね、旦那様。これで魔族領でも有名人ですよ(リア充ざまあ)」


シャルトリューズさん。

これ見よがしに心の声を口に出すのは止めて欲しい。


それにしてもこれは酷い。

大人しく辺境で穏やかに暮らしたいのに。

どうしてどいつもこいつも俺を表に引き摺り出そうとしやがるんだ!

お忍びで魔族領を旅するのも悪くないと思ってたのに、もう魔族領を歩けないじゃないか!



「話は戻るが、どうしてイツキとシルキーネとの婚約が内戦の原因になるのじゃ?」


白亜が本題に戻してくれた。


「ベルゼビュートが勇者に討滅されたことはベルゼビュートの頼子貴族達にも伝わっている。イツキは謂わば、主君の憎き仇だ。その仇とガヤルド殿が婚約した。ガヤルド殿はいずれは魔族領を統べると言われているお方。当然、その配偶者もだ。ベルゼビュートの頼子貴族達は、間接的であれイツキが魔族領の支配に係わることに我慢がならなかったんだろう」


白亜の疑問に答えたアインズ支部長が俺の顔を見ると、


「だから、責任取っておまえがベルゼビュート領を平定してこい」


と言った。


それが俺への応援要請ってことか。


「なあに、お前にとっては他愛も無い相手だ。ちょっと行って捻じ伏せて来るだけの簡単なお仕事だ」

「俺、一介の冒険者なんですけど?」

「『一介の冒険者』はカラトバ軍100万を壊滅させたりしない」


アインズ支部長もあの場に居たのか。


「見てました?」

「ああ、凄い光の柱だったな」


しっかり見られていたらしい。

これはもう逃げられそうにないなあ。


「まあ、おまえが穏やかに暮らしたいのも解ってる。無茶を言ってるつもりもない。おまえならできることだからな。だから、今の生活を守りたいなら、綺麗処侍らせたハーレム生活を送りたいなら、とっとと片づけて帰って来い」



その時、


「リア充爆発しろ」


背後から呟く声が聞こえた。

俺が声の出所を追って視線を向けた先にはシャルトリューズさん。


「どうかされましたか? 旦那様?」


真面目な顔で訊いてきた。


いやいや、シャルトリューズさん。

あなた今、『リア充爆発しろ』って言ったよね?


「あのさ、今、リア充――――」

「旦那様。アインズ様とのお話に集中して下さい。お客様に失礼ですよ」


失礼なのはあなたの方ですよね?

俺の扱い酷くない?

いいよ、話を続けるよ。



それにしても、疑問は残る。

訊けばベルゼビュート領に展開する正統魔族軍は5個軍団16個師団20万だという。

4個軍団12個師団15万が中部から、1個軍団4個師団5万が西部から、それぞれベルゼビュート領に進撃。一方のベルゼビュート軍は1個軍団3個師団4万が防衛戦を繰り広げている。

一般的には攻める側は守る側の3倍の兵力が有れば足りると言われている。

明らかに正統魔族軍優性の状況だ。

俺の出る幕無いんじゃないの?


俺がぶつけてみた疑問に、


「それがそうでもない」


アインズ支部長が、苦々しい顔をして答えた。


「ベルゼビュート領の領都レーゲンスブルグ近郊に立て籠った敵を打ち崩せない状況だ」

「20万の兵力で4万の敵を制圧できないんですか? 5倍の兵力ですよ」

「領都が要塞化されていたらしい。正統魔族軍は、そのレーゲンスブルグ要塞の攻略に手古摺っている。多くの死傷者も出ているらしい。正統魔族軍とベルゼビュート軍の損耗率格差は125:1だそうだ」

「それって、正統魔族軍がタコ殴りされてるってことじゃないですか。正統魔族軍の司令官や参謀連中は無能の集まりですか?」

「そう言ってやるな。連中も手を変え品を変え努力はしているみたいだ。だが、現実問題として要塞は健在だ。しかも、正統魔族軍が要塞に手を出せないと知ったベルゼビュート軍はガヤルド魔公爵領への進撃を決めたらしい。要塞に潜入させていたガヤルド殿直属の密偵が情報を持ち帰って来たそうだ」


寡兵のベルゼビュート軍が再侵攻?

それこそ無謀だろ?


「でも、手は出されないと言っても、それは要塞の防御が鉄壁だってだけでしょ? その要塞から出たら多勢に無勢。正統魔族軍に殲滅されちゃいますよ」

「そうであればいいがな。だが、それは希望的観測だ。このままではガヤルド魔公爵領はベルゼビュート軍の手に落ちる。それに自領に引き籠もって様子見しているアスタロトの存在も不気味だ。主戦派形勢有利と見たアスタロトが参戦してくることも考えられる。そうなれば魔族領全土が主戦派の手に落ち、我が国との同盟は破棄され、再び人魔戦争に突入するだろう。平和な時代が終わる」


それはシルクの中の魔王の【暴虐】が発動し、エーデルフェルトにおける人類社会は終わることを意味する。もし、シルクの中の【暴虐】が発動してしまったら、俺はシルクを殺さなくてはならなくなる。

俺にそれができるのか?


否。


であるなら、俺の取るべき手段は一つ。

シルクの中の【暴虐】が発動しないように、アスタロトが参戦して来る前にベルゼビュート軍を殲滅する事。


だが、まだ疑問はある。

寡兵のベルゼビュート軍がそこまで自信を持って再侵攻を決めた理由は何だ?

それをそのままアインズ支部長にぶつけてみる。

その疑問にアインズ支部長が答えてくれた。


「それはおまえが実際に目にすればわかることだよ」


要するに俺に『ベルゼビュート領に行って来い』と?

だが、前世でもベルゼビュート領には行ったことが無いはずだが?


[マッピング]を起動してベルゼビュート領の領都レーゲンスブルグの位置を確認する。

北大陸の南部中央に位置する領都レーゲンスブルグ。

やっぱり行ったことが無い場所だった。

ということは[転移]が使えないってことだ。

うわあ、ここから直線距離で14000kmも離れてるよ。

しかも間には広大な海、セパレイル海。

途中に島も無く航路も設定されていない。

水棲の魔物も居そうだから、ガヤルド魔公爵領方面を西から大きく迂回するしか無いようだ。

計算したら18000kmと出た。

約地球半周分。

気が遠くなった。



頑張って[フライ]で1日1000km飛行しても、少なくとも18日掛かる。

これじゃあ、戦には間に合わないなあ。


「遠すぎますよ」

「だから、『今から魔族領に行ってくれ』と言ったんだが」

「だとしても時間掛かり過ぎ。最低18日は掛かりますよ。着いた頃には戦終わってると思いますよ」


アインズ支部長の無茶振りは今に始まったことじゃないが、いくら何でも今回のこれは酷い。


「そう言うと思ったよ」


俺の後ろからいい香りがおぶさって来た。

首に腕が巻き付く。


「お師匠様!」

「シルキーネ!」

「ガヤルド殿!」


シャルトリューズさんとリーファ以外は突然のシルクの登場に驚いたようだ。


「2ヶ月ぶりだね。忙しい上にイツキ君欠乏症で倒れそうだったよ。でも、やっぱりこうやって触れ合えるのはいいね。疲れた心に活力が(みなぎ)ってくるようだよ」


俺の首に巻き付いたシルクが頬をすりすりする。

左右からの視線が痛い。


「それでシルクは何しに? まあ、(おおよ)その見当はついてるんだが、敢えて訊こうか?」

「ベルゼビュート領に行きたいんだろう? ボクが連れて行ってあげよう」


そして、俺の膝に乗っているリーファを見下ろして、


「リーファ嬢。イツキ君を借りて行ってもいいかい?」

リーファがシルクを見て、俺を見た。


「ちなみにイツキ君の貸し出しを了承してくれるなら、ここに取り出したマカロンをあげます」


シルクがポケットから取りい出したのはスカイブルーのマカロン。


それを目にしたリーファが黙って首を縦に振った。

そして、マカロンを受け取ったリーファが俺をちらっと見て…………目を逸らした。


マカロン1個で俺を売ったのか?



「という訳でイツキ君は借りて行く。キミらはここで大人しく待っていたまえ」


そう言うと、シルクが[転移]を発動した。

俺の身体中に転移陣の紋が現れる。

芳一(ほういち)さんかな?


そして、俺は自宅から[転移]させられたのだった。



◆ ◆ ◆


居間からイツキとシルクが消えた。


「あいつは行ったのか?」


アインズが誰に言うでなく呟く。


イツキの居た場所にはリーファが残っていた。

転移対象者の下に転移陣を顕現させるのではなく、転移対象者自身を転移陣に包むことで転移対象者以外を転移に巻き込まない高等技術。


「相変わらずお師匠様は凄いわね。これはちょっと真似できないわ。まだまだお師匠様の背中は遠いってことかな」

「何を悠長な事を言っておるのじゃ!? イツキがシルキーネに連れ去られたのじゃぞ!? 妾達は置いて行かれたのじゃ! 戦力外通告されたのじゃ!」


慌てる白亜に、


「大丈夫よ、白亜ちゃん。イツキの居所なら解るから」

「どうやって?」

「イツキにはマーカーが付けてあるのよ。ほら、御覧なさい?」


サリナが[マッピング]で居間の壁に地図を出す。

地図上に緑の印が明滅していた。


「この緑色の〇印がイツキよ」

「なるほどのお。それでこの印の場所はどこになるのじゃ?」

「そうね。ここは…………ガヤルド魔公爵領の領都エッセンツァの…………」


親指と人差指を拡げて地図を拡大する。


「魔公爵公邸ね。お師匠様の仕事場になるのかしら?」

「でも、場所が解ったとしてもじゃ。どうやって行く?」


それを訊いたサリナは左手の薬指に光るものを見ながら言う。


「もちろん、転移で。わたし、最近[転移]が使えるようになったのよ。だから、一緒に追うわよ。魔属領は初めてだけど、白亜ちゃん、覚悟はいい?」

「覚悟なぞとっくにできておる。今、準備して来るから待っておれ!」


白亜が出立の準備の為に自室に駆け戻っていく。

シャルトリューズが眠そうなリーファを寝かしつけに行った。

アインズも帰った。


「もう置いて行かれるのは懲り懲り。これからは死ぬも生きるも一緒。ここに来る時にそう決めた。イツキ?『わたしは待つだけの女なんかじゃない』って言ったよね? 忘れたとは言わせないわよ。でももし忘れたと言うのなら何度でも思い出させてあげるわ。わたし、自分でも退()くくらいしつこい女なのよ」


一人になったサリナが壁に掛かるカレンダーを眺めながら、そう呟くのだった。



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