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104 家族サービスデー

セリアと出掛けた翌日の10月12日。

アナトリア王国の建国記念日。

王都は建国記念祭で賑わっている。

あちこちに祭の屋台が並んでいる。


今日は白亜とリーファを楽しませる家族サービスデーだ。


俺は白亜とリーファを連れて祭の屋台巡りに出掛けた。

俺も白亜もリーファも浴衣を着ている。

シャルトリューズさんが用意したものだ。

この世界にも浴衣があったのね。


俺は地味に紺絣(こんかすり)の浴衣。

白亜は桃色ベースにニリンソウが散りばめられた浴衣。

リーファは薄緑色にリンドウが散りばめられた浴衣。

二人ともよく似合ってるよ。


今回、『屋台巡り』の言い出しっぺは、食い意地の張った白亜だ。

こいつ、どうやら、食い物の屋台を全店制覇するつもりらしい。


「あっ! あそこにタコ焼きを売っておる! 行くぞ! リーファ!」


白亜がリーファの手を引いてタコ焼き屋に突撃する。


この世界の屋台は、俺の元居た日本のお祭りの屋台とそっくりだった。


「美味いのお。イツキから訊いていたものと同じじゃ」


ハフハフしながらタコ焼きをパクついている。

その横でリーファが小さな口で(ついば)んでいる。

あ~あ~。口の周りに青海苔が。

後で拭ってやるか。


白亜はタコ焼きを2皿平らげると、次の得物を物色した。


次は焼きそば屋らしい。

そこでも白亜は大盛の焼きそばを3皿平らげた。

おいおい、そんなペースだとすぐに満腹になってしまうぞ。


その後、白亜は焼きトウモロコシ、イカ焼き、肉まん、ケバブを制覇していった。

リーファは綿菓子が気になるらしい。

グルグル回る機械から吐き出される砂糖の糸が串に絡みついて次第に大きくなっていくのをじっと見ていた。


「一つ貰える?」


俺は綿菓子屋に金を払って、出来上がったばかりの綿菓子の串を受け取ると、それをリーファに渡した。


「食べてごらん。甘いよ」


リーファは綿菓子をじっと見て、それから俺を見た。

俺が頷くと、綿菓子を受け取ってその端を齧った。


「ふわ~~っ」


リーファが綿菓子の食感と甘さに驚いて声を漏らす。


「おいしい?」


俺が声を掛けると、リーファが俺を見上げて言った。


「…………おいしい…………ありがとう、イツキお兄ちゃん」


よく見ないと解らないが、ほんのちょっとリーファの表情が緩んだように見えた。

可愛いなあ。

頬ずりしたくなってくる。

俺の表情も緩んでしまう。


「どういたしまして」


そう言いつつ、リーファの頭を撫でる。



おなかが一杯になった白亜の次の狙いは輪投げだった。

輪投げは俺も得意なのでやろうとしたら白亜に止められた。


「妾がリーファの欲しいものを取ってやるのじゃ」


リーファが指差したのは、特大の熊の縫いぐるみ。

それを取るためには20ケ所全ての棒に輪を通さねばならない。

しかもその一か所の棒の太さは輪の大きさとほぼ同じ。

あれ、真上からじゃないと通らないんじゃね?


白亜に渡された輪の本数も20本。

一度のミスも許されない。

無理ゲーだろ、これ。


一方の白亜は余裕だ。


「まあ、見ておるが良い」


そう言うと輪を投じた。

但し、20本全部。


20本の輪はまるで意志でもあるようにそれぞれの棒の真上に達するとそのまま自由落下していき、全て綺麗に棒を通って床に落ちた。

パーフェクトだった。

あまりの神業に我を失っていた店主が慌てて鐘を鳴らして言った。


カランカランカラン!


「大当たり~~!」


大当たりでいいの?

ともかく、白亜は見事、特大の熊の縫いぐるみをゲットした。

店主から受け取った縫いぐるみを白亜がリーファに渡す。


「どうじゃ? 頼りになるお姉ちゃんであろう?」


リーファは白亜から受け取った縫いぐるみに顔を埋めた。

やがて、顔を上げたリーファが白亜に言った。


「…………ありがと、白亜お姉ちゃん」


それを訊いた白亜が俺の袖を掴んで大喜びする。


「見たか!? イツキ。リーファが笑ったのじゃ! 妾には解るのじゃ!」

「解ってる。解ってるから」


俺は興奮する白亜を宥める。

確かにリーファは笑っていた。

本当に微かにだが表情筋が緩んだのが解る。

他の人間には無表情にしか見えないから、これが解るのは家族の俺達だけ。


気が付くとリーファが俺を見上げている。


「はいはい。家に持って帰ろうな」


リーファから受け取った縫いぐるみを[無限収納]に入れる。



白亜は次にリーファを金魚掬いに誘った。

子供は元気だなあ。


俺の顔に猛スピードで空瓶が飛んで来た。

俺がそれをキャッチして、飛んで来た方を見ると、白亜が俺を睨んでいた。


『子供』が気に入らなかったらしい。

はいはい。そんなことするところが子供なんだよ、白亜ちゃん。


お~っと、また空瓶が飛んで来た。

解ったよ。解ったから。白亜さんは大人。


白亜は俺の心を読むようになったから、白亜の傍で下手なことは考えられないんだよね。


でも、白亜さん。

乱暴な事は出来るだけ控えて欲しい。

リーファの教育上、とてもよろしくない。

リーファが暴力的になったらどうするんだよ。



「リーファは金魚掬いは初めてか?」


白亜の問いにリーファが黙って首肯する。

それを確認した白亜がポイを握って言う。


「では、見ておれ、リーファ。妾が見本を示してやる」


白亜が勢いよくポイを水に投入する。

俊足で大き目の金魚を掬い上げてそれをボールに入れる。

ここまで僅か1秒。


パチパチパチ。


リーファが無表情で拍手する。


「なあ、白亜。ポイ破けてるぞ」


白亜のポイは見事に破れていた。

当然だ。

あんな勢いで水に浸ければ破れるに決まっている。

白亜のポイは水に入れた瞬間に破れていた。

じゃあ、何で金魚が掬えた?

それは白亜が起こした圧縮空気が水を割り、金魚を浮かせ、ボールに落としたのだ。

だから、白亜はポイでは掬っていない。

もちろん、これはNGだ。

だが、あまりの速さに店主も他の客も気付いていない。

まあ、ここは黙っておくか。

でも指導はするよ。


俺は店主に金を払ってポイを受け取ると白亜に渡した。

渡された白亜が不思議そうに俺を見た。


「白亜。その掬い方じゃあ、1匹しか救えないだろ?」

「うむ。そうじゃな」


破れて店主に返したポイを眺めながら答える白亜。


「もっとたくさん掬いたいか?」

「もっと掬いたいのじゃ!」


俺の問いに食いつくように答える。


「じゃあ、俺が教えてやるよ」


白亜の後ろに廻り、ポイを握った右手に手を添える。


こいつ、手がぷにぷにしてるな。

こんな柔らかい手で五月雨を振り回してるんだよなあ。

そんなことを考えながら白亜の手をにぎにぎする。


白亜がピキッと固まったように感じた。


「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」


店主が白亜に声を掛けた。


大丈夫?

どういうことだ?


白亜を覗き込むと顔を真っ赤にして固まっていた。

耳まで真っ赤だ。


「おい。惚けてないでいくぞ」


俺は白亜の手を握ってポイを斜めにスライドさせるように素早く水に入れる。そのまま速度を落とさずお目当ての金魚の下まで持って行くと金魚の進行方向にポイを斜めに上げ、極力水の抵抗を受けないようにそのままポウルまで持って行った。

ポチャンとボウルに落ちた金魚。

一丁上がりだ。


我に返った白亜がほとんど濡れていないポイとボウルに入った金魚を交互に見ている。


「この調子でやってごらん」


黙って頷いた白亜が俺の指導通りに金魚を掬っていく。

20匹目を掬い上げた時、ポイが破れた。


「破れてしもうたのじゃ。残念なのじゃ」


がっかりする白亜。


「まあ、それでも頑張った方だろ」

「そうかの?」

「ああ。頑張った」


そう言いながら俺を見上げて来る白亜の頭を撫でる。

白亜の顔がゆるゆるになった。

白亜は普段は凛々しいが、俺の前でだけはこんな顔をする。

可愛過ぎるだろ、おまえ。


そんな俺達をリーファがじっと見ていた。


わかってる。

リーファのことをないがしろにした訳じゃないから。


「じゃあ、リーファ、次は一緒にやろうか」


俺は金を払ってポイを2本貰うと、その一方をリーファに渡した。


「見ててごらん。金魚はこうして掬うんだ。このポイの紙が破れないようにね」


俺はポイの輪が水圧を逃がしてくれるように斜めにポイを投入する。

そのまま金魚の下に達した瞬間、ちょっとだけ持ち上げ、金魚にポイの紙が触れたか触れないかのところでポイの輪が水圧を逃がしてくれる角度でポイを斜めに水から出す。

そのままボウルまで流れるように持って行き、ポイを裏返した。

ボウルの中に小さな金魚が1匹泳いでいた。


「こうすると、ポイが破れないからまた掬える。それにポイを投入する角度次第では、こんな風にポイの紙はほとんど濡れないんだ。だから、まだまだ金魚の荷重に耐えられる」


そうやって、俺は次々に金魚を掬っていった。

やがて、ボウルに金魚が30匹溜まる。

『これ以上は金魚が酸欠になるなあ』と思った頃にポイが破れた。

俺のターンは終わり。


「じゃあ、リーファもやってごらん」


リーファが水にポイを投入する。

俺と同じ方法。

だが、リーファの方が明らかにポイ捌きが滑らかだ。


俺の所作を見て覚えたのか?

しかも、俺より上手だ。

どうすれば、お手本を見ただけでお手本以上の実践ができるんだろう。


そうするうちにリーファはアッと言う間に30匹の金魚を掬い上げた。

でも、ポイはまだまだ健在。

苦笑する店主から新しいボールを受け取る。


リーファはまたまた30匹の金魚を掬い上げる。

やはり、ポイは健在だ。

泣きそうな店主からまた新しいボウルを受け取る。


それが更に3度繰り返され、やがて最後の1匹になった。

その1匹はポイの大きさよりでかい鯉だった。

朱色や紺や白の鱗の縁取りが金色の錦鯉。

それをリーファが華麗なポイ捌きで救い上げた。


掬い上げた鯉がボウルに落ちる時に撥ねた水がリーファのポイを破った。

終了らしい。


長かった。


「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」」」」」」


いつの間にか集まってきていたギャラリーが歓声を上げる。


ええ―っ?

こんなに集まってたの?


「すげえな、嬢ちゃん! こんな神業、見たことなかったぜ!」

「感動した!」

「金魚掬いの神髄を見たような気がする!」


ギャラリーが次々にリーファに声を掛ける。

最初、ポカンとしていたリーファが、視線をキョロキョロさせながら頬を緩めた。

まあ、おまえらには解らないだろうがな。


一方の店主は口から魂を吐いて呆然としていた。

全部掬われちゃったもんなあ。


リーファが掬ったのは、151匹。

これじゃあ、商売上がったりだ。

それにいくら持って帰るにしても、151匹は無理。

持って帰っても飼えない。


「リーファ。全部は持って帰れないから、欲しいのだけ選びなさい」


リーファは黙って鯉が入ったボウルを指差して俺を見た。


「これがいいんだね。他には?」


リーファが首を横に振る。

どうやら、最後に掬った鯉だけでいいらしい。


「じゃあ、俺も1匹だけにするか」


俺は自分のボウルの中から、朱色が鮮やかな少し大きめの和金を選んだ。


「白亜はどうする?」

「妾も1匹だけで良い」


白亜が選んだのは黒い琉金。


俺達が選んだやつ以外の198匹を店主に返す。


「ありがとうございます! 助かります!」


復活した店主に思いきり感謝された。


結局、俺達は3匹だけ持ち帰ることになった。


透明な防水膜の袋に注がれた水の中を泳ぐ鯉をじっと目で追うリーファを見ながら、


『自宅に戻ったら庭に池を造らないとな』


そう思った。



それからも色々屋台を廻った。


やがて、疲れた白亜がベンチに座り込んだ。


「妾、もう疲れたのじゃ~~~」


はしゃぎすぎなんだよ。

こういうのはペース配分ってものがあるんだよ。


でもまあ、祭は初めてだからしょうがないか。

これからもこういった催しには連れて行ってやるから。

ペース配分ができるくらいにはね。




白亜の休憩に付き合っていると、物陰に動きがあった。

俺はリーファを白亜に預けると、通りを大回りして、物陰にいるヤツの背後に廻ると、声を掛けてやった。


「なにしてるんだ? エルネスト」


声を掛けられたエルネストが驚いて飛び上がった。

言葉の比喩じゃなく本当に飛び上がりやがった。


「通り掛かりに君らを見つけてね」


前髪をかき上げながらカッコつけるエルネスト。


だが、俺は知っている。

迎賓館を出てからずっと俺達の後を付けて来ていたことを。

おまえは気付かれていないと思っているようだが、俺は最初からおまえの尾行に気付いてたんだよ。


まったく、どんだけ白亜にご執心なんだよ、こいつ。


ちらっちらっと白亜を見ているエルネスト。

このまま放っておくと、なんだかんだ理由をつけて混ざり込まれそうだ。

冗談じゃない。

せっかくの家族サービス。

他人に邪魔されてたまるもんか。

おまえにはここで退場してもらおう。


俺は周囲に良く聞こえるように大声で叫ぶ。


「うわああああああ!!! こんなところに第一王子殿下が!!!」

「貴様っ!」


エルネストが慌てて止めようとしたがもう遅い。


「えっ? どこ?」

「あっ! 居た! あそこよ!」

「エルネスト殿下よ」


この国には『エルネストファンクラブ』、『エルネスト親衛隊』等と言ったものがあるらしい。

いわゆるエルネスト推しの人達だ。

ともかく、エルネストに対する世間一般の女性からの評価は高いのだ。


エルネストは基本イケメンだ。

ジョセフさん譲りの甘いマスク。

女性ホイホイと言ってもいい。


そんなヤツが人混みに現れれば囲まれるに決まってる。


「「「「「「「「「「「きゃああああ!」」」」」」」」」」」


想定通りに黄色い声が響き渡る。


「「「「「「エルネスト殿下!」」」」」」

「「「「「「エルネスト様~~~!!!」」」」」」


あっという間にエルネストは女性達に取り囲まれた。


「あの…………皆さん…………ちょっと…………落ち着いて…………」


エルネストが引き攣った笑顔で女性達を制止しようとしたが、それは叶わず、結局、エルネストは詰め掛けた女性達に揉みくちゃにされた。


「エルネスト殿下をお助けするのだ!」


そこに陰からエルネストを護衛していた近衛騎士の人達がエルネストの救出に飛び込んで行った。だが、エルネスト推しの女性達は近衛騎士相手にも一歩も引かなかった。


辺りは大混乱に陥った。


「いやあ、エルネスト君。モテるねえ」


揉みくちゃにされているエルネストに声を掛ける。


「あっ! 貴様! こうなることが解っていて!」

「さあ、なんのことやら?」

「謀ったなっ!!!!!!!」


変装もせず、素で街に出て来るおまえが悪いんだよ。

白亜に付き纏いやがって。

おまえなんか、推し活女性の波に飲み込まれてしまえ。


「じゃあな。俺はおまえの分まで白亜とた~~っぷり楽しむこととしよう」

「なっ!?」

「白亜を上から下まで余すことなく愛でてやるんだ。羨ましかろう?」

「貴様あああああああああああああああああああっ!!」


エルネストが混乱の渦から抜け出そうとするが殺到する推しの女性達には敵わない。


いい気味だよ、エルネスト君。


エルネストに手を振ってやる。

エルネストが凄い形相で睨んでくる。


ああ、こんなシーン、見たことあるな。

時代劇に良く出て来るアレだ。


親を無残に殺されたが周囲に取り押さえられて睨むしかない哀れな町人と、それを不敵に見下ろす悪の廻船問屋。


ん?

ちょっと待て?

それって、俺が悪者ってことにならんか?


そんなことを考えていたら、エルネストが突然叫び始めた。


「勇者サイガイツキが現れたぞ!!!!」


そう来たか。


「「「「「えっ? どこ? 勇者様、どこ!?」」」」


周りがざわつき始める。

エルネストが状況を逆転できると思ったのか、俺を見てほくそ笑んでいる。

それで勝ったつもりかい? エルネスト君?

俺はエルネストに嘲るような笑顔を向けて言ってやった。


「甘いな、エルネスト君。元々、俺は白亜とリーファにしか認識できないような[認識阻害(限定)]を自分に掛けているんだよ。だから、それ以外の人からは俺はそこら辺にいる人にしか見えないのさ。まあ、お前が俺を認識できたのには驚いたがな。しかし、なんだな。[認識阻害]まで突破しちゃうなんて、おまえ、どんだけ俺に執着してるんだよ。まさか、俺に恋しちゃってるの? 困るよ。前にも言ったが、男は守備範囲外だ。諦めてくれ」


あっ。

凄げえな、エルネストの顔。

親の仇でも見るような顔だよ。


「ということで俺は去る。後は良しなに」


それだけ告げた俺は混乱の輪から抜け出していった。

後ろからエルネストの叫びが聞こえてきた。


「サイガイツキ~~っ!! この悪役勇者野郎~~~~!! てめえなんて豚に食われちまえ~~~~~~~~!!」



俺が戻って来ると白亜がカチンコチンに固まっていた。


「『た~~っぷり楽しむ』」


ねえ、白亜さん?


「『上から下まで余すことなく愛でてやる』」


ねえ、白亜さんたら?


「妾、今日、どうなってしまうのじゃ!?」


白亜がぶつぶつ独り言を言っている。


「おーい、白亜さん?」


白亜にそっと声を掛ける。


「ひゃい!!」


白亜がビクッと大きく身体を震わせて悲鳴みたいな返事をした。


「乱暴はダメじゃよ。妾の身が持たん。優しくして欲しいのじゃ」


白亜がモジモジしながら上目使いでそう言った。


あっ、そうか。

聞いちゃったか~~~~。


「あれはエルネストのヤツを悔しがらせる為に言ったことで――――」

「皆まで言わずとも良い。ようやく妾の想いが通じたのじゃな?」

「ねえ、聴いてる!?」

「妾恥ずかしいし、初めてじゃから――――」

「お願いだから俺の話を聴いて! ねえ! 聴いてよ! マジお願いだからっ!!!」


結局、白亜の誤解を解くのに夕方まで掛かってしまった。

その間、リーファは俺を冷ややかな目で見ていた。

そして今もリーファの視線は冷ややかだ。


後でこっちの誤解もしっかり解いておかないとな。

このままでは、家庭崩壊してしまう。


それにしても、エルネストめ。

よくも、家族サービスデーを滅茶苦茶にしてくれやがったな。

もう、おまえには絶対に白亜は渡さん。

例え、おまえが最優良物件だったとしてもな。

おまえに渡すくらいなら、俺が責任取って白亜を貰ってやるよ。


俺は、白亜が訊いたら卒倒するようなことを固く誓うのだった。





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