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101 サリナと街遊び

俺が王宮でジョセフさんと再会してから1週間が経った。


今日はサリナと街遊び。


俺は王都広場の噴水の前にいる。

サリナに指定された場所だ。


「待った?」


広場に現れたサリナに声を掛けられる。

今日のサリナは、王女の姿でも特級魔導士の姿でもない。

白いブラウスに赤いフレアスカート。

街娘の格好だ。


「今、来たところだ」


定番のセリフを吐く。

実際は30分前に来てたんだけどね。


「嘘。30分前からここに居たくせに」


サリナは隠れて見ていたらしい。


「早く来てたんなら、声を掛けてくれればよかったのに」

「イツキをずっと見てたのよ」


そう言って悪戯っぽく笑った。

狡いですよ、サリナさん。

男ってのはそういうのにグッとくるものなんですよ。

狙ってたでしょ?


「さあ、行きましょう。今日は色々見て歩くんだから」


そう言ったサリナに左腕を取られる。


「しかし、あの小っちゃなサリナが今ではこんなに大きくなって…………」


と昔を思い出しつつ、俺は左腕に押し付けられたものをチラッと見る。

でけえ。

Gはあるんじゃないか?


おっと、いかんいかん。

今日はサリナに王都を案内して貰うんだった。


――――と、視線を感じてサリナを見ると、意味深に笑っている。


「チラ見なんかしなくても、見たければ見せてあげるわよ、ナマで。どうせイツキのものになるんだし。いっそ、街遊びは止めて、あそこでわたしを頂いちゃう?」


そう言って、指差した先は歓楽街のホテル。

いわゆるそういうことをする場所だ。


「ごめん! 健全な男子高校生には刺激が強すぎる!」


そう言って、サリナから左腕を抜こうとした。

が、ガッチリ掴まれているので抜けない。


「イツキはお子様ねえ」

「お子様で悪かったな。純情なんだよ。察しろよ」

「アハハハハハハハハハハハハッ!」


ひとしきり笑ったサリナが掴む力を緩めてくれた。


「じゃあ、行くわよ。まずはウィンドウショッピングね」


サリナとファッション関係の店に向かう。店に入ると、


「試着するから採点お願い」


そう言って様々な服を持ってきて試着室で着替えて俺に披露する。

サリナのファッションショーの始まりだ。


ビスクドールみたいな真っ赤なゴスロリ。

仕事ができそうな紺のタイトスカートスーツ。

サイドスリットが腿の付け根まで開いたチャイナドレスのようなワンピース。

へそ出しショートTシャツに黒革ミニスカートのアウトローファッション。

白亜が着るような桃色ショートワンピに黒のハイニーソックス。


他にもいろんなコーデをお披露目してくれた。

どれも似合っている。

全部100点じゃん。


「サリナはどの服が気に入った?」

「そうね……………………」


そう言いつつサリナが選んだのは意外にも地味な服だった。


黄なり綿の丸首シャツにデニム生地のロングスカート。


「なんか、大人しめな感じがする。懐かしいような、どっかで見たことがあるような・・・・」


俺の感想にサリナがはにかみながら、


「これ、あの時に着てたのと同じなんだ。いつもイツキに付いて回っていた頃に着ていたのと」


そう言われて思い出す。

前世の俺が接していた、幼いサリナが着ていた服を。

あの頃のサリナも同じ格好をしてたっけ。


「わたし、あの頃からイツキに恋してたのよ。わたしの初恋だったの」


サリナが呟く。

試着している黄なり綿の丸首シャツの生地の手触りを確かめるように触れながら、昔を思い出すように。


「初恋は叶った?」


優しく声を掛ける。

サリナは俺の胸に手を触れながら


「うん」


そう答えたサリナが俺に口づけしてきた。


「だから、今はとっても幸せよ」


俺から離れたサリナがそう言うと花開くように笑った。


「これ、記念に贈るよ」


サリナにそう告げた俺は会計を済ます。

せっかく着て来てくれた服には申し訳ないが、サリナには買った服をそのまま着て貰った。

店を出て開口一番にサリナが呟く。


「まるで昔に戻ったみたい」

「昔はいつも俺の服の裾を掴んでたっけ?」

「でも、今はこうしてイツキにいっぱい触れられる」


そうして、再び俺の左腕を取って、しな垂れかかってきた。


「服越しじゃなく、直接触れ合いたいわ」


とんでもないことを言い始めたぞ。


「それはもうちょっと待ってね? 俺、まだ未成年だから」


それを訊いたサリナがキョトンとする。


「『未成年』? 何それ?」

「『大人じゃない』ってこと」

「えっ? イツキ、15にもなってないの?」

「17だよ」

「なら、もう大人でしょ?」

「俺が元居た日本という国では、18以上が大人なんだよ。ということで17の俺はまだ大人じゃない」


サリナが下を向いて考え込む素振りを見せる。

顔を上げたサリナが笑顔で言い放った。


「てことは、来年大人になるのね? じゃあ、来年になったら毎日朝まで確かめ合いましょうね?」


おいおい、この人とんでもないこと、言いやがりましたよ。

サリナ、キミ、どんだけ性欲強いのよ?

毎日求められたら俺、干からびちゃうよ。

それに、白亜やリーファの教育上もよくない。


俺は来年までに自室の防音を鉄壁にすることを心密かに誓うのだった。




その後は、大きな店舗のフードコートで昼食を摂り、夕方までだべっていた。

サリナの冒険譚を訊いたり、俺の高校生活を話したりした。


やがて、日が暮れようとしていた。

広場に戻り、ベンチに腰掛ける。


今日はサリナに渡さなければならないものがある。


「サリナ」


俺はサリナの声を掛け、ポケットから小箱を取り出す。

そして、サリナに小箱の蓋を開けて見せる。


「えっ? これって?」


サリナが小箱の中身と俺の顔を交互に見る。


「受け取って欲しい」


サリナは黙って頷いて左手を出した。

俺は小箱の中身を取り出して、サリナの薬指に嵌めた。


前に白亜に渡したのと同じ指輪型アーティファクト。

俺がこの日の為に作った。


ただ、これは白亜のと違い、特注品だ。

リングトップに7色に輝く魔石を取り付けている。


「これって?」

「ベルゼビュートの魔核を削ったものだ。〖混沌の沼〗ダンジョンの最下層でキミが俺を見付けてくれた、その時の魔核だ」


サリナが指輪と俺の顔を何度も見る。


「ちなみに、この指輪は俺と魔力パスで繋がっている。俺からの魔力供給や魔法の術式が受けられるから、今のシルクより強くなれるよ。大魔法使いも夢じゃない。但し、キミが俺に愛想が尽きてその指輪を外したくなっても俺の同意が無ければ外せない。指も腕も切り落とせない。俺はキミを離すつもりはないからね。それだけは覚悟しておいてくれ」


それを訊いたサリナは顔を伏せてプルプルと震えている。

あ、やっぱ、嫌だよねえ。

いくら特典が多くても、重いよねえ。

こんなの喜ぶのは勘違い娘の白亜さんくらいだ。


「あ、もちろん、嫌なら今外してもらって構わないよ。今なら外せるはずだから」

「外すはずないじゃない!!」

「えっ?」

「絶対外さないんだから!!」


そう叫んだサリナがまた俺の唇を奪ってきた。

今度は長い。

息苦しい。

舌を潜り込ませないで!



あれ? 頭がグルグルしてきた。


5分以上は経っただろうか?

ようやく俺は解放された。

長いディープな唾液の交換の後、サリナが俺に言った。


「だから、責任取って幸せにしてね?」


サリナさん。その微笑みは卑怯なんじゃありませんか?


どうしてくれるんだ?

俺の選択肢から『愛妻を幸せにする』以外の選択肢が消えてしまったじゃないか。




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