画材屋のセリア
小さな街で、セリアという女性が画材屋を営んでいた。若く美しい女性。
セリアに初めて会った者は、男女問わずセリアに魅入られた。しばらく呼吸さえ忘れてしまうほどの美しさ。
当然その噂は国中に広まっており、様々な権力者たちがセリアを娶ろうとした。
しかし、セリアはどれほど贅沢な待遇を提示されても首を横に振った。
自尊心を傷付けられ、怒りだす者や更に贅沢な待遇を提示する者もいたがセリアはいつも同じ言葉を言っていた。
これ以上、強引に話を進めようとするなら私は自分の顔に酸をかけます。
それでもよろしければ――――。
皆、この言葉により去っていった。
この反応に慣れてしまったセリアは、いつもため息を吐いていた。
誰かの装飾品としての人生なんてありえないわ。
偶然、私にこの外見が被さっているだけなのに。
このまま……、私は一人でこの店と共に生きていくのだろう。
それは悲しいことじゃないわ。
そう信じていたセリアだったが、ある冬の日に盲目の絵描きの青年に出逢う。
青年と青年が描く世界に強烈に惹かれたセリアは、半ば押しかけるように青年と夫婦になってしまった。
その話はあっと言う間に拡がり、多くの人々に驚きと疑問を与えた。
画材屋の常連客たちなど、ほんの少しセリアを理解している者だけは「なんともセリアらしい」と納得している。
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