2話
コンビニから出てアカザワの後をついて行くように歩いた。アカザワの顔つきは高校生らしいといえばらしいが、妙な落ち着きと威圧感を纏っているように見えた。こいつ、学校にも来ないで一体普段何何やってんだ…?
「アカザワさ、お前なんか刑務所にいるみたいな噂流れてるよ。学校で。てか学校は来ない…の?お前普段何してんの?」
ネイは昔から気になること、言いたいことはあまり考えずにすぐ口に出してしまうタイプであった。出来るだけ関わりたくないと思っている心と、こいつが何をしてるのか知りたいと思う2つの感情があった。
「刑務所?あーそう。俺は今、ラッパー。普段は曲作ってる」
「ラッパー?まじかよ、お前」
「まァじ」
「ラッパーって笑、お前、高校生じゃん。何がだよ、…へっ、何言ってんの。アホじゃないの」
ネイにとってラッパーのイメージは既に確立されている。奇抜な見た目に、横暴な態度。暴力、暴言、犯罪。特に凄くないのに、偉そうに、振る舞う野蛮な人。
全ては過去に起きた1つの出来事に起因している。
「へえ、ネイお前結構ストレートに言ってくるんだ
。…確かに今の俺はラップで金稼げてねえし、ラッパーなんて名乗っちゃいけねえかもな。」
「…はっ、だったら、ラッパーなんて言うのやめろよ。趣味と変わらねえじゃん、そんなの。ラッパーなんて、マジでクズだからさ。」
「…かもな。…まあいいんだよ俺のことは。ていうかお前そんなラッパーのこと嫌いなんか?」
「嫌いも何も…あいつら…大嫌いだよ」
「別にいいけど。…ちょっとおれコンビニ行ってくるわ。こっちの店員は知り合いだからさ。」
「おう」
俺はいつも下校する時に駅の南口方面に行くのだが、アカザワと歩いて北口方面のコンビニまで来たらしい。この駅は南口と北口でかなり雰囲気が変わる。南は整備された綺麗な街並が広がっているのだが、南口はポイ捨てのゴミなどが多く、比較的どこか廃れている印象だ。それに…こっちにはいわゆる不良やヤンキー紛いな人間が多い。
「お待たせー。いやーまさかクラスの奴に会うなんてな。偶然だったけど。まぁまた会ったらよろしくな」
「お、おう。何を??」
「お前みたいにストレートバンバン言ってくるやつあんま居ないからよ。お前気に入ったって話。」
「はぁ…」
「まあそんな会うことないと思うけど。とりあえず、ありがとう。定期的に発破かけてくれる奴に会えた気がする。じゃあな!」
「じゃ、じゃあなー…。…発破??俺の事?俺お前にほぼ悪口しかいってねえけど…」
アカザワは北口の通りに消えていった。人殺し噂が流れるクラスメイト。真相はそんなことは無かったがそんなこともありそうな気がする奴だった。しかし奴には少し好感を抱いている。見た目とは裏腹に喋る様子から良い奴であると分かる。だが、…ラッパーだと言うのなら、俺は奴を嫌う。
俺の家族を、滅茶苦茶にしたアイツらみたいになるのなら。