第5夜 お前だけだと思ったか?
見事カトコースを果たしたツルハ。
そんな2人に新たな問題が!?
「お前だけだと思ったか??」
千影を見下ろす影。
「くっ」
膝をつく千影。
目に映る怪しげな影
恐怖が千影を侵食していく。
暗闇に落ちていく感覚が千影を襲う。
「うわぁぁああ」
「うわぁあああ」
汗まみれの体で千影は目を覚ました。
「千影、大丈夫なのー??」
大声で起きたことで、母親が1階から心配そうに呼びかける
嫌な夢を見たな‥‥‥
立て続けに起きた出来事で疲れが溜まったのだと思う、でもまさか悪夢を見るほどまでとは思いもしなかった。
こんなの毎日は耐えられないぞ。
汗を拭いながら千影は天邪鬼に話しかける。
「昨日のこと‥‥‥ああは言ったけどツルハを危険に巻き込みたくないよ。」
(なにを今さら言っているのじゃ。千影もしお主がそう思うなら強くなるしかなのじゃ。)
「わかってるよ。ただ今までツルハに助けられてばっかだったから‥‥‥」
老け込む顔の千影。先を見つめている目は不安と焦燥感に苛まれていた。
(それにお主はまだ力を使い果たしておらぬぞ)
「まあね。まだ力の使い方がわからなくて‥‥‥」
力とは体になじむまでに時間がかかるらしい。
「とりあえず、今日の学校でツルハと話すよ」
(これだけは言っておく。お主の力は世の理をもくつがえす力を秘めておるぞ)
世の理をくつがえす力と聞き唾をのみこむ千影であった。
学校へ向かう途中の道。昨日の雨が嘘かのように晴れていた。
普通の学生なら気分よく登校するだろう‥‥‥二人を除いて‥‥‥
角に差し掛かるところ、下を見ながら歩く二人の学生。
「うわっ」
「うお!!」
「お、おはよ!! 千影」
「ん、おはよツルハ」
なにかを考え込んでいるような顔のツルハ‥‥‥
何か話さないと‥‥‥二人の間に沈黙が続く。
「あ、そ、そうだ!! 今日いい天気だね~」
考えに考えぬいた言葉がこれであった。
(お主のう‥‥‥)
ため息をつく天邪鬼であった。
「ふふふ、千影はいつもと変わりなくて少し安心した」
ほほえむツルハの顔は、それまでの千影の悩みを吹き飛ばした。
「ツルハ専用の魔の反抗だね」
「ん??」
「ううんなんでもないよ!!」
千影に笑顔が戻った。
(お主今のはさすがに引くぞ)
「うっせえ!!」
もう見慣れた光景であった。
学校のチャイムが鳴る。
クラスはなにやら賑わっているみたいだ。どうやら転校生が来るらしい。
「こんな時期に転校生なんかくるんだな。」
普段であれば新学期に入るものだが、こういう事もあるのだと千影は気にしなかった。
「お〜し、それじゃぁ転校生を紹介するぞ〜!! 入ってきなさい」
ガラガラ
ドアがゆっくりと開く。
うわぁああああああ!!!
クラスの皆がどよめき始めた
それもそうだ、見るからに可愛らしく女優と言われても疑わないほどの美少女であった。
思わず千影も頬を赤く染める。
ふとツルハをみるとなにやら自分を見て、頬を膨らましている。
「え、なんで」
(お主と言うやつは。)
深々とため息を着く天邪鬼であった。
「そしたら、自己紹介頼むな〜」
「はい…」
その女の子は、見た目とは裏腹に小声で返事をした。
クラス中の皆が視線を送る。
「な、名前は天魔くるみです。えっと…親の事情で、引っ越してきました。………」
「どーした?? 天魔、ゆっくりでいいぞ」
「えっと…よ、よろしくお願いします。」
一瞬の沈黙がおきる。
うぉっしゃぁあ!!!!
歓声が天魔くるみを包み込んだ。
少し驚いていたが、ふぅ。と安堵の表情をしていた。
「そしたら、天魔。お前の席は、天野の横だ。」
(自分の隣だ。緊張するな。)けど少し嬉しいと内心思った千影。
「よ、よろしくお願いします。」
「うん、よろしくね!」
その会話にすらクラスの男子の視線は殺気に感じるのであった。
こ、こぇーよ。
授業が始まるチャイムがなった。
1限目はホームルームであった。
「今日は天魔が入ったこともあるが、みんなでレクリエーションでもするか!!」
再びクラスは歓声を上げる。
勉強をせずにみんなで遊ぶ。これほど、楽なことは無い。誰もが望んだ最高の授業。
「そしたら、みんなで好きなものを決めて遊んでくれ!」
何分かの討論の末、ドッジボールに決まった。
体育館への移動中、ツルハが千影に話しかけてきた。
「これはこれは、美少女が隣で鼻の下伸ばした千影君。良かったですね〜」
「なんで、怒ってるんだよー」
「べ、べつに怒ってなんかないよ!!」
「もしかして、嫉妬ってやつか……」
「バカっ!!」
パシンッ!!
見事なビンタが千影の頬を襲った。
体育館に集まったみんな。
「あれ、千影。お前その頬どーしたんだ??」
圭哉が異変に気づいた。
「い、いや、気にしないで。」
千影の頬は赤い手跡が付く。
中々に痛々しい。
「おっしゃー始めるぞ!」
クラスの1人の男子が始めの合図をかけた。
レクリエーションとは言え、ムキになって本気でやるのが男子だ。その中でキャーと叫びながらも楽しむ女子。まさに青春の1ページだ。
その一方千影はというと、運動不足が故にバシバシとボールを当てられるという醜態を晒すのであった。
(千影よ。殺気のない物にはナマケモノのような反射速度じゃな)
天邪鬼に煽られながらも、なあなあにこなす千影であった。
「天魔さんも投げてみなよ!」
そんな中クラスの1人が天魔くるみにボールを渡した。
「う、うん。頑張ってみる。」
狙いを定めている。
「天野なら当てられるんじゃねーか!」
相手チームの男子は千影を狙うように指示をした。
完全になめられているが、流石に女の子にボールを当てられるほど弱くはないぞ!! と心の中で怒る千影。
「い、いくよ。」
放たれたボールは、男子にも匹敵するほどの速さであった。皆が驚く中、千影とツルハはなにかに気がついた。
「あのボールやばい」
瞬時にボールを避ける千影。そう、避けれてしまった‥‥‥
ボールは場外へと飛んでいく。
「す、すげーな天魔さん!! あんな早いボール投げれるなんて運動神経凄いね!!」
恐る恐る近づく千影。
周りの皆はお互いで共感したり、ボールを取りに行ったりとその2人からは視線が逸れていた。
「ふ、ふふ。よけられんだね。」
「えっ。」
天魔くるみから出るオーラが変わった。後ろには邪悪なオーラが漂っている。
「お前だけだと思ったか」
そう言う天魔くるみは周りには見えない中、千影を見ながら薄気味悪くニヤリと笑うのだった。
完
謎の美少女、天魔くるみ
彼女の正体とは--