第4夜 魔の反抗
ツルハに憑くものの正体とは--
2人は、何かを決断する。
天邪鬼の真の力とは--
ツルハ‥‥‥
そ、そんな‥‥‥
しとしとと、頬を伝うのは雨なのか涙なのか‥‥‥
目の前の現実は千影の心を苦しめる。
(千影‥‥‥千影!!!!)
天邪鬼の呼びかけでハッと我に返る。
(落ち着くのじゃ、まだ助かるかもしれん!!)
「えっ‥‥‥ほんとに」
(ああ。 じゃがまずあいつ‥‥‥『鬼女』の記憶を覚まさぬとまずいことになる‥‥‥)
何か深刻そうな顔をしている。
「まずいことって‥‥‥??」
(今のあやつは、いわば暴走している状態。その中で憑依が完了してしまえば、あやつはずっとあのままになってしまう‥‥‥そうなれば我も困るのじゃ‥‥‥まずは、何としてでもあやつの記憶を復活させる)
‥‥‥一呼吸置いて、天邪鬼は続ける。
(でも覚悟しなきゃいけないことがある)
「それって、もしかしてだけど‥‥‥」
なにかを理解した千影は覚悟を決めた。
(お主が思っているとおり。憑依自体からは逃れられんが『カトコース』ならお互いの意識を取り返せば可能だ。既にもともとの”ツルハ„の意識は心にとど待っているようじゃが‥‥‥)
「それなら、あとは鬼女をどうにかして戻せば‥‥‥」
!!??
二人を待つことなく、鬼女はなにやら怪しげな呪文を唱えている。
(気をつけろ千影!! あやつは、妖力を身にまとうことで肉体強化をする!!)
(あやつは念能力に優れている!! 我に及ぶかもしれん)
「器用お化けじゃないかっ!!!!!」
あせる千影‥‥‥その目に映るツルハの姿は、瞬きと同時に消えていた。
え‥‥‥
(後ろだ千影!!!!)
後ろから、殺気をまとった冷たい空気が千影の首を駆け巡る‥‥‥
(よけろ千影!!!!)
高く振りかぶった金棒は音をも置き去りにして、千影の脳天を捉えた‥‥‥と思われた‥‥‥
ズドンッ!!!!!
激しい衝撃で煙が立つ。
「血は何色じゃ‥‥‥」
「!?」
脳天を捉えていた金棒は地面だけを砕いていた。
(千影‥‥‥お主どうやって‥‥‥)
「僕は鬼女が消えたと思った瞬間次に現れるところと攻撃することを予測して動いたんだ。観察と予測が得意でね!!」
(やるではないか!! 我には、苦手な芸当よ!!)
「だけど困ったことに予測できるのは殺意を感じた動きで避けられても、次の一手が無いんだ‥‥‥」
‥‥‥かといって、天邪鬼と変われるのも確信がない。
ここぞというときじゃないと‥‥‥
(ん!? 千影よ!! 鬼女の攻撃あとどれほどかわせる??)
何か作戦でもあるのか‥‥‥
天邪鬼は千影に作戦を伝えるのであった。
「わかった。僕は避けてればいいんだね」
作戦というには何とも単純なことではあるが、ただ避けることは千影には容易なことであった。
次々と繰り出される攻撃を予測で避ける千影。
避けるとはいえ、避けることで地形が変わっていく。
これって保険効くのかな‥‥‥
「はぁはぁ‥‥‥そろそろ体力が限界だよ天邪鬼」
息が荒くなってきた千影。
だが、鬼女の様子が先程とは変わってイライラしているように見えた――それもそうだ全力の攻撃をことごとくかわされるのだから――
「もう、血はいい‥‥‥消えてしまえ人間」
そういうと、念能力を手にためはじめた。
「天邪鬼!! 僕でもわかるよ!! あれはまずい!! 避けれないどころじゃないよ!! この町に被害が出るほどの力だよね!!? あれ」
「消えろ人間」
夥しいほどにたまった邪悪なエネルギーを鬼女は躊躇うことなく放つ
キュイイン!!!!!
耳がきしむような音が千影を襲う
「まずい!!」
終わった‥‥‥
僕の人生ここまでか。昔はよくツルハと遊んでたな。
あ‥‥‥これが走馬灯ってやつか‥‥‥
(今だ!! 変われ千影)
その瞬間、千影の姿は天邪鬼にかわった。
(全く、世話のやける者よ)
「うるせぇえ!! あとは頼んだよ」
「はよ思い出せ。忠誠を誓ったもの。逆らうとは、いい度胸よ。鬼女よ」
天邪鬼は右手をかざしその力を解放する‥‥‥
【魔の反抗】
放たれたエネルギーは天邪鬼の右手に見る見るうちに吸収されて行く。
「あの技は‥‥‥」
殺気に満ちていた鬼女の目は精気を取り戻していた。
「じゃく様‥‥‥」
涙を流しながら、記憶を取り戻した鬼女はかつての呼び方に変わっていた。
右手に吸収したエネルギーは、さらに念能力を増し天邪鬼の右手から放たれた。
「私はなんて事をしてしまったのだ。じゃく様どうかこの鬼女に罰を与えてください。」
罪に気づき、悔い改める鬼女はまるでか弱い女の子のようにも見えた。
「そうじゃな。重い罰を与えてやろう。悔いるのじゃ、鬼女よ」
放たれたエネルギーの塊は鬼女の髪をかすめて、空へ飛んで行った。
上空まで上がった増大なエネルギーは、まるで太陽の様に大きくそして明るく膨れ上がり爆発したのだった。
地上に当たれば一溜りもない程の威力をほこっていた。
「な、なぜ‥‥‥じゃく様‥‥‥」
ただただ涙を流しながらそう呟くのだった
「お主への罰は、その者にカトコースして我にまた従うことだ。 良いな」
何故か安心した表情の天邪鬼。
精神状態の千影は安堵の様子で、胸を撫で下ろすのであった。
「はい。なんなりと。」
少し時間をあけ、ツルハへと姿が戻る。
「千影ー!!!」
「うぉっ!!」
泣きながら千影に抱きつくツルハ
満更でもない千影--いやかなり喜んでいる
「おかえりツルハ!! これから大変だけど、頑張ろうね」
「うん。千影が一緒なら頑張れるよ」
(すまなかったツルハよ。それじゃぁ。始めるぞ)
「うん。」
『憑依人』
千影の時同様、光がツルハを包む。
「いたっ。」
ツルハの手に痛みが走り、紋様が刻まれた。
鬼の顔に金棒が描かれたマークが写し出された
(完了だ。ツルハ)
こうしてツルハは千影と一緒に憑依人になるのだった。
「そう言えば、天邪鬼。魔の反抗ってなんだったの?」
不思議に思った千影は、天邪鬼に問う。
(お主にも伝えておこう。我が能力を)
天邪鬼の能力が明らかになる時が来たのだ
・魔の反抗 全てのエネルギーを吸収し、念能力を上乗せして跳ね返す技
・心理察知 対象の考える事を読むことが出来る。 千影の予測とはまた違うもの。
「だいぶぶっ壊れてないか。それで何で安倍晴明に負けたんだ??」
(じじいは、そんなことすら通用しない程のバケモンだったのじゃ)
「ふーん。」
(なんじゃ!! なんか文句あるのか!!)
2人のやり取りは、子供のようであった。
「(ふふふ)」
それを見て、笑う2人であった
「(何が面白いんだ!! じゃ!!)」
場所は変わり、今にも崩れそうな廃墟。
1人の男がその中に入っていく。
暗く夏なのに冷えきったその廃墟は、負のオーラを放つ。
「先程のエネルギー。奴が目覚めたようです。」
その男は誰かに話しかけている様だった。
目線の先には、ガタイの大きいいかにも強そうな男が座っていた。
「懐かしい。会える日が待ち遠しいのうー。天邪鬼よ」
その男は、ニヤリと不気味な笑みを浮かべるのであった。
完
無事にカトコースを果たしたツルハ--
鬼女との壮絶なストーリーが始まるのであった。
そして--
廃墟に潜む謎の男--
第5夜 お前だけだと思ったか